26①

受験校は決まった。
我が家は、私立を受験させてもらえなかった。

どこか滑り止めを受けれないかと探していたとき、東京の短大が思い浮かんだ。
4年制大学との合併が決まり、この年が最後の募集だった。

実は、この合併先の4年制大学こそが、先生の母校だった。
もちろんこれを把握した上で、この学校への受験を決めた。

2月のバレンタインの頃。
私は、受験のため東京に向かった。
電車に乗るため、父親に地元の駅に送ってもらった。
駅に入ると、券売機の近くに先生の姿があった。

びっくりした。

私の見送りに、なんて夢みたいな事はなく、部活の大会の引率で来ていた。
同じ電車に乗り、先生は部活の子達と一緒に、私は一人で座っていた。

先生の方が、一駅先で降りる。
降りる前に、先生が「がんばって」と言ってくれた。
ただの偶然が、私にとってどれだけうれしかったことか。

受験の先だったか、前だったか。
今年も先生に、バレンタインのチョコをあげた。
何をあげたかすら忘れてしまったが!本命感はさらさらないものだった。

2月に入ってからは、ほぼ自由登校になっていた。
午前中は希望者は授業を受け、午後からは自由。
私はもちろん、学校へ行き、午後からも図書館で勉強をした。
相変わらず足繁く先生のもとへ通った。

早く受験は終わってほしかったが、受験の終わりは、高校生活の終わり。
先生との繋がりが皆無になってしまい、正当な理由で毎日会って話せなくなってしまう。
とにかく、それが嫌で嫌で、さみしくて。
残りわずかな時間を、少しでも大切にしたい、と強く思っていた。

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