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私が所属していた部活では、卒業生が夏の大会の応援に行く習慣があった。

私は隣の県から、部活仲間はもっと遠方に住んでいたけど、後輩たちのために集まった。

地元に帰ることは、先生に近づくこと。

ダメ元で連絡をしてみたら、先生が引率する部活の大会から帰る電車に、もしかしたら私も乗れるかも、ということになった。

大会の進行が遅れ、後輩や遠方から来ている友達たちとの挨拶もそこそこに、私は先生も乗る予定の電車に飛び乗った。

私が乗った次の駅。

2月に受験へ向かう電車で一緒になって、先生が先に降りた駅から、先生は乗ってきた。

1時間ほどの道中、他の生徒や乗客もいたので、特に話したりはしなかった。

そうとう強引に一緒な電車に乗って、引率する生徒もいるし、これ以上迷惑にならないように、電車を降りてから挨拶だけして去ろうと思った。

駅から、先生は歩いて10分弱の学校へ。

私は、実家へ戻るために更にバスに乗ろうとしていた。

バスは駅が始発だったが、買い物に寄ってから帰ろうと思い、私も高校方面へ向かった。

高校生たちは、その場で解散したのだっただろうか。

駅から学校までの道中、先生と二人きりで歩くことになった。


歩いて何を話したか、すっかり忘れてしまっていたが、手帳にそれを書いていた。

進学して、2ヶ月余り。

先生は、

「大学は思ったより楽しくないやろ」

と言っていたらしい。

自分の経験からなのか、高校生の新生活も含めての一般論なのか。

その頃の私の思いを見透かされていた。

私は、そんなにつまらなそうな顔をしていたり、嫌そうな話ばかりしていたのだろうか。


今の半分以下しか生きてなかったあの頃、先生のその言葉に対して、私はその時、何て返事をしたのだろうか。

確かに、大学生活に満ち足りなさを感じていたが、その時の素直な気持ちは忘れてしまった。

でもね、先生。

これだけは、はっきり言える。

あの頃の私の一番の悩みは、先生と一緒にいれないこと、そんなことばかり考えて純粋に新生活を楽しめていなかったこと。

先生と一緒にいたくて仕方がなかった、もうすぐ19歳の、夏のはじまり。

二人きりで歩いたのは、私にとってそれは特別な時間で、一生忘れられない出来事。

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