25①
この年は、うるう年だった。
1日でも多く先生と一緒にいれる、と思ったが、2月29日は休日だった。
3月1日。
休み明け、先生と話した。
休みに東京に行っていた、六本木ヒルズに行った、狭いところに落語を聞きに行った、と言っていた。
短大には受かっていたが、まだ受験は続いていた。
次は小論文の練習を、とのことで、添削をしてもらう担当が先生にならないかと期待したが、違った。
違ったのに、相変わらず先生に聞いていた。
卒業式前日。
いつものように先生のところへ行って話をした。
休み時間が終わる頃、先生がプリンをくれた。
私がねだったのか、先生からくれたのだったか。
スーパーでこのプリンを見るたび、今もこの高校最後の日を思い出す。
この日の夜、私は先生に手紙を書いた。
覚えているのは、「話していて楽しい人が好き」と書いたこと。
別に告白とか、そんな重いつもりはなく、「もうご存知でしょうが、改めて伝えておきますね」位の気持ちだったはず。
もうこの手紙はこの世にはないだろうけど、私ははっきりと「好き」と書いた。先生に伝えた。
もっと好きって伝えればよかったと後悔するとき、いつもこの手紙を思い出している。
確か前日に、先生は答辞の添削もしていた。
「当日になって雪が降ったりすることもある」と言っていたが、その通りの寒い日の卒業式になった。
受験のため欠席者も多い中、卒業式は終わった。
吹奏楽部が演奏する「さくら」に合わせて退場していた。
先生方が体育館出入口に並んでいて、先生の姿もそこにあった。
私は、しっかりとその姿を脳裏に焼きつけた。
卒業式が終わってからは、教室でクラスメイトと過ごしたり、部活仲間と過ごしたり、幼なじみとご飯を食べたりした。
昼食後、学校へ戻り、先生を訪ねたが不在だった。
私の高校生活は、ひとまず終わりとなった。
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