25③
合格する前だったか、後だったか。
私は先生に冗談混じりで
「合格したら、何かちょうだい」
と言っていた。
もちろん、たかるつもりではなく、ただただ大好きな人からのプレゼントが欲しかった。
そして、私は見事に合格した。
合格してから、私は念のため
「本当に何かくれるが?」
と確認した。
そしたら、いいと。
何が欲しいか言って、と。
もちろん、私の強引なお願いを仕方なく聞いているのは、その時もわかっていた。
それでも、うれしくて、うれしくて。
そして、私はいろいろと考えた。
「先生からプレゼントされたいもの」を考えた。
何がいい、と聞かれて、私は「手帳が欲しい」と答えた。
先生に迷惑にならないようなもので、金額も手頃で、でも、私に何をあげればいいか多少なりとも悩んでもらえるもの、を選んだ。
私の希望に対して、先生はダメとは言わなかった。
そんな困らすことを言うつもりはなかったけれど、もし「アクセサリーが欲しい」などと言ったら、先生はどう答えていたのだろうか。
私が、いつ手帳を欲しいと伝えたのかも、実際手帳を手渡されたのもいつだったか、思い出せない。
私が合格して、高校生だった3月末まで20日余り。
忙しい合間を縫って、先生は私のためにプレゼントを用意してくれた。
私は、先生の事が大好きだった。
大好きで、大好きで、自分も先生に好きになってもらいたい、という願望を持っていた。
実際は、私が一方的に思い続けていただけで、先生は全く私になんか振り向いてくれてない、と思っていた。
私のことを好きって思って、好きならもっと先生から気にかけて欲しいと思っていた。
今になって気づいたが、私から言い出したにしても、本当にほぼ無関係のただの生徒に、こんなにも良くしてくれていたんだと思う。
本当にしょっちゅう職員室や休養室に行って、先生も、周りの先生方も、迷惑に思っていただろう。
私も、迷惑なのは承知だったが、先生と過ごせる残りの時間を考えると、止められなかった。
周りの先生からあからさまに怒られたりはしていないが、今思うと遠回しに注意をされたり、小言を言われていた。
先生も、おそらく苦情を言われていたはずだ。
それでも、ダメとはいわずにあしらってくれていた。
あの頃の私が思ってた以上に、先生は私の思いに応えてくれていた。
なのに、18歳の私は、欲張りで、自分の事だけしか考えていなくて、その優しさに気づけていなかった。
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