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【詩】 さざなみ

窓にカーテンはかかっていなかった
窓は閉まっていて
部屋の中が見えた

隣家が建て替えのため
壊され、あらわになった窓だ

私は詩人として立っていた

ある日、路上に
液体がぶちまけられ
アスファルトが黒く光った

曲がり角のカーブミラーは60度ほどに傾いているが
道路管理人の姿は見えない

壊された隣家の土地は
更地になり黒く湿っている
窓が見下ろしている

私は物理的な何かをぶちまけるという行動を
したことがないが
そう思っているだけなのだろうか

姿が見えない隣家の家族や
道路管理人に向かって
私は自分を紹介する

私は
時間を思う人です
そのために
いくつかの努力をしています

今まで見えなかった窓が見えれば
窓を見ます
土地が更地になれば
心を平坦に保ちます
信じてもらえるかどうかわかりませんが
道路管理人に連絡を取ろうとも
思っていました

私は、破壊とは程遠い生活をしているが
それはさざなみのようだ

すこしふらついて
荒いコンクリートの外壁で
左手の甲を擦りむいた
さざなみのように皮膚が傷ついている

涙が何のためにあるのか考えた
理由は見当たらなかったが
さざなみのように泣いてみた

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