【詩】メタモルフォーゼ
柔らかな革の湿りを張り付けた空が
心を騒つかせる午後に
ドット一つ一つが色を失い 無色の中に溶けだす
冷蔵庫から取り出して
器に注ぎ少し時間をおいたミルクの香に
気づいた頃 無彩の平面世界にも時間が流れはじめる
中指の倍ほどに成長した
新たに生え出した爪が
内部から青白い光を放ち
輝き そこには
長い休日のように静寂が息をする
猜疑心と呼ぶには鋭すぎる
過日、マスクの下に隠した
腐った牙よりもそれは鋭く
微笑みながら恐怖心の先を行く
つきっぱなしのディスプレイに向かって
叫ぶ「ワタシハもんすたーデアロウカ」
今日来なくても
明日には去るだろう失意の先で
過去が渦を巻き
未来を閉ざしている
この先 この爪を残して
生まれ変わることがあるならば
異形の有機体として
コントローラーがわたしに
指図するのだろうか
聞き慣れないクリック音は
仮想の彼方から聞こえて来る