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40代、ちょっと早めの定年退職
普通の会社勤めの人より20年以上早く、定年退職のような状態に入った。
働いているときは、定年退職する人がうらやましかったが、いざなってみると、たしかにいいこともあるし、そうでもないこともある。無いものねだりだったのだと気づいた。
生活も変わったが、それ以上に心境の変化が大きかった。
変化1 人を信用するようになった
初対面の人と話すとき、働いていたころは基本的に身構えていたというか、壁をつくって対応していたように思う。しかし今ではほぼノーガードで受け入れる。人を疑う気持ちが薄れてきたのを感じる。おかげで最近ネズミ講にひっかかりそうになった。
高齢者になると騙されやすくなる。しかし社会とのかかわりがなくなって、判断力が落ちたからだと簡単に結論付けてはいけないのではないか。社会から一歩引いて、人を信じようという気持ちが強くなった結果、オレオレ詐欺に引っかかりやすくなる側面もあるのではないか。
この変化を、衰えたと言ってしまうのではなく、進化したと考えたい。ビジネス優先だった脳みそが、周囲の人を大切にしたり、自分の人生を生きるということの優先順位を繰り上げて、人生の本質に向き合えるような形へと進化したのだと思いたい。
変化2 苦しんでいる人を放っておけなくなった
詐欺にひっかかりやすくなったことと共通点があるが、悩んだり苦しんだりしている人を見ると放っておけなくなってきた。働いていたころは、自己責任の考え方になりがちだったが、社会のなかでこぼれ落ちた人、誰からも目を向けられなくなった人のことが気になるようになってきた。
人生を振り返ってみて、人は批判ばかりされると能力を発揮できないが、自己肯定感を高められれば、能力を発揮できて、苦しいことも乗り越えていけることに気づいた。誰かの力になりたいと思うようになり、何かボランティアでもやってみようかという気になってきた。
変化3 日常生活に満足するようになった
ご飯をつくって食べるということが、生活の中の重要な部分を占めるようになった。食材を無駄にしないように、少しは栄養のバランスを考えるようになって、よくかんで食べるようになった。昔は米を研ぐのが面倒で無洗米を買っていたが、今は米を研ぐ作業が好きになった。
歯を磨くときは磨き残しがないか意識するようになり、フロスでじっくり掃除するようになった。
掃除も適当だがそれなりにするようになり、布団やまくらを天日干しするようになった。洗濯も部屋干しではなく、晴れているタイミングで外に干せるようになった。なんとなく衣服が長持ちするようになった気がする。
変化4 嫌な気持ちにならなくなった
昔は花を育てていて枯れると嫌な気持ちになったが、枯れてもそれはそれでいいと思えるようになった。人間に対しても同じような目線で見るようになりつつある。
時間がありあまって確かに暇を持て余すが、急がなくてもよくなるので、日常の行動がゆっくりになる。その結果、生活の質(QOL)が向上した気がする。高齢者がゆっくりしがちに見えるのは、筋肉が衰えただけではなく、急がないほうが心地よいことに気づいただけかもしれない。
このままでは批判するという気持ちをどこかに忘れそうな気がする。そういえば会社にいたときは、皆が何かの文句を言っていたなと、懐かしく思い出す。
変化5 人や物に感謝の気持ちをもつようになった
靴下にちょっと穴があいても、目立たなければそのまま履くようになった。身だしなみに無頓着になったともいえるが、靴下に愛着がわくようになったからだと思う。靴下にも感謝する気持ちが生まれて、ちょっと見た目がわるくなったくらいでは捨てないようになった。
子供の頃は、かけらのような消しゴムを捨てられなかったり、持つところがないくらい短くなった鉛筆を大事に削って使っていた。あのときの気持ちがまたよみがえってきているのを感じる。
変化6 協力して何かを成し遂げる機会がなくなった
これは意外と大きなデメリットだと思う。仕事は常に人と力を合わせて何かを行うことだった。おかげで自分と人とのつながりが出来ていた。定年退職する人をうらやんでいたころは、これに気づけなかった。
仕事を失うと急に孤独がやってくる。社会の誰からも必要とされない人間になった気がする。人生の中で、仕事にちょっとでもポジティブなイメージを持てているうちは、働けるのであれば働き続けたほうがいいと思う。
ちょっと早い定年退職だが、社会に馴染めなかったこと、仕事で結果を出せなくなったことが原因であり、前向きな理由は一切ない。
しかし脱落してはじめて、人生はそんなに悪くはないということに気づいた。死亡フラグみたいな感じがするが、いつ終わってももう大丈夫。今を精一杯生きるだけだから。そんな心境になりつつある。
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