どんぐり、コロコロ
子供達と以前、週に3日以上は遊びに行ってた公園がある。私が住んでた地域の中では1番広い公園だが、住宅街からは少し離れた場所にあり、周りが山に囲まれていて余り人も来ていなかったので、ゆっくりのんびり散歩出来て思いっきり大きな声を出したりはしゃいだりできる、家族皆んなのお気にいりの公園だった。春はお花見、夏は街灯に集まるカブト虫探し、秋はどんぐり拾い、冬は少し肌寒い中を子供達と肩を寄せ合い歩くのが、今思えばとても幸せな時間だった。どんぐりが沢山拾える小高い山があるエリアがあり、様々な種類のどんぐりを拾う事ができた。「こんなに拾ったら、リス🐿さんのご飯がなくなっちゃうね~」と子供達と話しながら。1番上の子は特に自然が大好きだったから、毎回目を輝かせながら、小さな手でどんぐりを拾った。「どんぐりの赤ちゃん、ちっちゃくて可愛い!これはどんぐりのお母さん、太っちょどんぐり(←子供は本当に正直すぎて困る…)これはどんぐりのお父さん、お母さんより痩せっちょさん」から始まり、色んなどんぐりを園服のポケット一杯に詰め込んだ。将来、どんぐり専門の鑑定士も目指せるんじゃないかと思ったりもした。
雨の日が続き、暫くぶりに公園に遊びに行くと、何だかいつもと感じが違う。子供達は真っ先にどんぐり目指し走り出したが、どんぐりの落ちていた場所に着き、はっと息を飲んだ。そこは以前子供達が可愛い声をあげ走り回った場所とはうってかわり、地面が無数に掘り起こされ、獣の足跡が沢山ついていた。あまりに変わりすぎた風景に呆然としながら立ち尽くしていると、公園の管理をしてくれている職員さんが通りかかった。「つい2日前まではなかったんやけどねえ。多分、イノシシやと思うよ。こんなに荒らしてしまって。何年か前までは、山から降りてくる事もなかったのに。山に食べられる物がなくなったからかな。」と教えてくれた。「そのうち、猪を追いかけて熊でも出てきたら大変やで、はよ帰らんしよ」と言って帰っていった。言われてみれば、周りを見渡すと誰一人いない事に気がついた。急に怖くなり、まだどんぐりに未練たっぷりの子供達を強引に引っ張り、慌てて帰ってきた。
昼間は子供達にとって大切なその公園は、夜になれば動物達の大切な場所にもなる。私達にとっては色んな色や形を楽しみコレクションにする感覚のどんぐりも、その1個1個が動物達にとっては、大切な大切な食料となる。私には、残念ながら動物の言葉を理解する力がないので、動物達がどんな風に山で暮らしているのか、食料をとる事がどんなに大変な事になってきているかが、全くわからない。紅葉が見られるようになり、美しい姿を見せてくれるのも「自然」だが、一方でその「自然」の厳しさと常に向き合いながら、暮らしている動物達もいるのかもしれない。
いつの日か、そう遠くない未来に、子供達が「どんぐり」を拾える場所は残っているのかな?子供達が大好きなあの公園は、いつか子供達が懐かしい場所として、遊びに行く事はできるのかな?綺麗な夕焼けが迫る中、何故かいつもと違う複雑な感情を持ちながら家路へと急いだ。
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