やなぎ丸

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子どもの映画と大人の観客

 10何年かぶりに映画館に行った。子どもとである。  観たのは『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』  泣いた。元々感情の沸点が低い方であるが、そういう自分の感性とは別にいい映画だったと思う。マルクス的な労働観と人間疎外が分かりやすく描かれていた。  子どもの頃に観た映画って何だったっけ…と思い返す。  そういえば『グーニーズ』が大好きだった(先日、アカデミー賞の授賞式でキー・ホイ・クァンがアジア人差別を受けたとか受けないとかで騒がれていたのを観た時、真っ

    • お節とお雑煮。地域と文化と世代。

       皆さん、お正月にお節とお雑煮は食べましたか?  別に元日にコーンフレーク食べてもいいんだけど、今日の授業はお正月に絡んでお節、お雑煮を題材にして文化、地域、世代について考えていただきたいと思います。  まずお節を食べたという人、手を挙げていただけますか。  …おお、多いね! ではお雑煮を食べた人は?  うん、お節より多いですね  ではお節をご家庭で作ってるよ、という人は?    お、4分の1程度ですか。  ではお節は買ってるよ、という人…聞き方が悪かったかな。

      • 読書について

         もう何年も前の話だが、我が家の台所下の排水管が漏水した。  我が家は築30年以上の中古木造物件。中古だから当然購入価格は安かった(と言えば安かったのだが、不動産価格はそもそもよく分からない値付けをしているので、実感としてはぜんぜん安かったなんて思えないものである)のだが、5年住んだだけでもシロアリだの雨漏りだのといろいろトラブルが起きる。  トラブルが起きる度にハウスメンテの方法を学ぶことになる。壁の補修、継ぎ目のコーキング、ウッドフェンスの塗装、植栽の手入れ、そして今

        • 不登校とバイト

          卒業生が内定報告をくれた。  お祝いということで鮨なんぞに連れて行った。白木のカウンターのちょっといいところ。そこで聞いた話を本人から許可を得て記す。  彼は高校1年生の一時期、不登校だった。  私は彼が高校2年生のときに出会っている。だから私は彼が不登校だった時期を直接知らない。  彼は私の受け持ちクラスの生徒だった。正確に言うと選択クラスの生徒で、受講生が少なかったから、必然、一人一人の生徒と密なやりとりが増えた。  控えめな生徒だった。話しかければ応じてくれる

        子どもの映画と大人の観客

          8月6日の古地図

           これは、90歳を超える義理の祖母から伺った話。 「昔はこの夏の時期、何をやってたかといろいろ考えるとねえ、山に下草を刈りに行ってたのよ。  ただ山って言っても広いからね。去年はこの山、今年はこの山って、村の人が手分けして刈るのね。  その山の境界はツツジを植えて目印にしておくの。でも中にはそのツツジを毎年毎年すこーしずつ押して動かしちゃう人がいるのよ。  田んぼなんかには茶の木を植えるんだけど、これも動かしちゃう人がいて、何年もするうちにウチの田んぼの真ん中くらいに

          8月6日の古地図

          授業開き

           非常勤講師であること。  だから月木金しか学校にいないこと。  1年契約であちこちの学校に勤務してきたこと。  そういう自分が「公共」「政治経済」という授業を受け持つに当たって。 「ハイ、という訳で私は非常勤講師なので、来年の4月もこの学校にいるかどうか分かりません。そういう働き方をずっとしています。  いままで行ったことのある学校は公立、私立、男子校、女子校、中学、ミッション系の学校…まぁ、いろいろです。  定時制高校...って知ってますか? 公立中学にいた方

          ディスカッションを仕込む。

           少し前、授業で生徒にディスカッションをさせたことがある。  お題は「●●国際空港建設反対運動」。  もちろん念頭に置いてたのは成田空港。  自由にディスカッションさせたらお通夜になるか議論が明後日の方向に行くのは容易に予想できたので、生徒にはあらかじめ役を振った。空港建設反対派の住人、反対を応援する外部の人、役所の人間…あとは実力行使部隊とか。  そして配役が決まったら、それぞれの役の生徒に「他の人には絶対見せるな」と言って、その配役の本心を書いたメモも渡した。

          ディスカッションを仕込む。

          「倫理」か「政経」か迷っている人へ

          (注:これは「センター試験」時代に書かれたものです)   「倫理」が専門、ということにしている。  大学で哲学専攻だったから、というのがその理由だけれども、実はキャリアとしては既に「政治経済」や「現代社会」の方が長かったりする。  大学では趣味の延長みたいな感じで哲学に近いところにいただけだから、あまり哲学専攻だったとは言いたくない。ゼミの教授の影がちらついて怖いのだ。「きみ、あれで哲学をやってたなんて言えるのかね」とか言われそうで。講師や臨任になって給料を稼ぎつつ教科研

          「倫理」か「政経」か迷っている人へ

          全身麻酔の経験はありますか

           全身麻酔で手術を受けたことがありますか。    ボクはある。大学生のとき「気胸」(ききょう)という病気になり、その手術で全身麻酔を経験した。    「気胸」はカンタンに言うと肺に穴が空く病気で、原因不明。傾向として、若くて、痩せ型の、背の高い男性がなりやすいらしい。その4つの条件から別名「イケメン病」とも言われているとかいないとか。そういえばボクと同じ病室に入った気胸の高校生は確かにイケメンだったが、何事にも例外はあるものだ。  肺の手術は部分麻酔では対応できない(らしい

          全身麻酔の経験はありますか

          「同和」の勉強

          「私は関東で高校生に政経の授業をしている者です。同和問題について伺いたいのですが…」  最近、思うトコロがあって同和問題についていろいろ調べている。  「同和」とは「同胞融和」の略。かつては「部落差別」と言われていた。特定の地域、いわゆる「部落」に住む人たちへの差別、ということだ。  だから「同和」とは、みんな同胞なんだからそんな差別はいけない、融和せよ、くらいの意味になる…。  おそらくこういう説明から始めないと同和問題についての授業は成り立たないだろう。  この

          「同和」の勉強

          ナショナリズムとクールな中指

           2002年、FIFAワールドカップの熱気はカナダの小さな町まで届いていた。    当時、ボクはその小さな町に留学生として滞在していた。英語は最後まで上達しなかったけれど、日本では得難い経験をいくつかすることが出来た。    カナダで一番盛んなスポーツは(たぶん)アイスホッケーで、サッカーではない。ナショナルチームも強い訳ではない…というか弱い。そもそも2002年のFIFAワールドカップにカナダは出場していない。なのになぜ片田舎の小さな町まで盛り上がったのか。  カナダが

          ナショナリズムとクールな中指