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アングラの王子様 24

「投げ銭して爆破予告犯である証拠を掴む質問をするってことですか?」

私の質問に、谷垣さんはわざとらしく指を振った。

「違いますよ。そんなことをすれば真っ先に疑われます。そして、気がつくはず。我々が不穏な動きをしていることに。そうすれば、次の手を打ってくるかもしれません。そんな凡ミスは避けたいですね」
「じゃあ、なんでーーーーー」
「信頼を得るには、相手が欲しがっているものを与えることです。お金と承認欲求、この2つを満たして、信頼を獲得します。話はそこからです」

『初見です!応援してます!! ¥1,000』

「まずはこれぐらいから行ってみましょうか」

私たちは配信を見つめる。
唐沢マリンがコメントに気がついたようだ。
一瞬、眉が動いて、その後すっと口角が上がった。

「初見さん、応援ありがとう。人が集まってきたからもうちょっと続けようかしら」

谷垣さんの投げ銭に機嫌を良くしたようだ。
口数が増えてきた。
主に自分が大学でどれだけモテているかの自慢だ。

「テニスサークルに入ったんだけど、私のコートに人が集まって、もう、困っちゃうわ」

実際は全く困っていないはずだ。
見ていて嫌な気分になってきた。
しかし、谷垣さんは目を光らせる。

「ここです」

『マリンさんが綺麗過ぎて集まるのはわかるけど、マリンさんを困らせるのは許せない!¥1,000』

谷垣さんのコメントを見て、私は薄寒くなった。

「正気ですか?」
「相手が欲する言葉をかけてやることが大事です。唐沢マリンは承認欲求の塊ですから、このようなコメント、大好物のはずです」
「いや、これはさすがにやり過ぎのような・・・」

私の心配を余所に、唐沢マリンは機嫌良くコメントを読み上げた。

「私を困らせるのは許せないかぁ。ありがとうね。こういう方は頼り甲斐がありそう」

谷垣さんはすかさずコメントを打ち込んだ。

『なんでも頼ってください!僕はマリンさんの味方ですから¥1,000』

これで三千円だ。
バイト暮らしの大学生にとっては結構な金額だ。
こんなことして、何も得られなかったら、三千円溝に捨てるどころか、爆破予告してる張本人にお金が渡ることになるかもしれない。

「そろそろ・・・」

と、私が谷垣を止めようとしたときだった。
配信とは別の通知音が鳴った。

「来ました」

唐沢マリンからダイレクトメッセージが届いた。

『この後、鍵付きで配信をするのでよかったら』

そのメッセージにURL、パスワードが添えられていた。
谷垣さんの笑みが深くなる。

「ここからが本番です」

どっちが悪いことしてるのか、わからなくなって私はゾッとした。

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