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学校教育とは何か?


✅はじめに

 皆さん、こんにちわ。合格サポーターの佐々英流(ササエル)です。今回は、noterである『女王まりか』さんの記事に取り上げられていた疑問について、考えてみたいと思います。

 noter『女王まりか』さんは、自ら女王を名乗っておられます。といっても、本当の女王ではありません。アラビア語で女王のことを、『まりか』というのです。ん、そもそも、名前が『女王』なんですね。

 ササエルは、受験生に試験問題の解き方をお伝えするサポートをしています。ですが、試験問題を作問する側に回ったことはありません。その点、『女王まりか』さんは、理科の学校教材を校正されており、私とは異なる立場から、非常に有益な気づきを与えてくれる有難いnoterさんなんです。

✅フェノールフタレイン溶液の色

 その『女王まりか』さんが、記事の中で疑問として取り上げられてるのが、フェノーフタレイン溶液の色です。フェノーフタレイン溶液は、pH指示薬で、酸性、中性では無色ですが、アルカリ性で赤色に変色します。ですが、赤にも色々ありますね。リアルな色は、赤紫に近い色なんです。

 そして、事件は、彼女が中学生の時におきました。『この指示薬が、変色した時の色が何色か』という問題に、『女王まりか』さんは、見た目の通りに『赤紫色』と書き、不正解扱いとなってしまったのです。

 これに対し、彼女が先生に猛抗議したところ、帰ってきた言葉はこうでした。  

「教科書色と実際の色は違う! 赤紫の方が現物に近くても、教科書に赤と書いてあったら赤なんだ!」

『女王まりか』さんの記事より

 これは、実に興味深い言葉です。この言葉の意味を探ってみましょう。

✅教科書が正しいとは、どういう事か?

 先生の言葉は、簡単に言えば、『リアルな色ではなく、教科書に書かれた色が正しい』ということです。生徒の真摯な観察眼を一蹴したのです。もっと簡単に言えば、『教科書が正しい』と先生は宣言されたわけです。

 先生はなぜこのような事をしたのでしょうか?それはたぶん、入試があるからだと思います。どういうことでしょうか?例題で確認しましょう。

 フェノールフタレイン液がアルカリ性で呈する色として、最も適切なものを以下の選択肢から選びなさい。
  ① 赤   ② 赤紫

ササエル作、例題1

 大胆な2択ですね。リアルな色は、赤紫でしたね。でも、教科書には赤と書かれているんです。であれば、正解は、①赤ですね。先生は、入試本番で、不正解とならいよう、心を鬼にして、あの言葉を言い放ったのでしょう。

 そうなんです。教科書が、入試のバイブルになっているわけですね。実際に見た感じの色が、教科書と異なっていても、教科書に書かれてあるほうが正解なんです。であるから、教科書検定を行い、正しいとされる情報が、記載されていることを、チェックするわけですね。正解でない情報が書かれた教科書を排除し、全国の学生が、基本的に同じ知識を学べるようにしているわけです。

 そして、学生は心を無にして、教科書に書かれた正解を覚え、〇を貰い、偏差値を高めていくのです。

 こうした教科書絶対の教育は、高校卒業まで続き、大学入試でフィナーレを迎えます。ご承知の通り、教科書に書かれた正解を沢山覚えた学生が合格を掴みます。まさに、受験は暗記なのです。もちろん、丸暗記は通用せず、理解や手順を必要とする分野もあります。そうしたものを含め、答えがあるということは、答えの出し方が確定しているんです。その答えの出し方を掴めば、正解できるという、広い意味での暗記で、得点が取れるのです。

(もちろん、一部の大学は、教科書には載っていない、ハイレベルの問題を出題します。例えば、慶應文学部では、辞書2冊を持ち込ませた上で、英文和訳、和文英訳などの問題を出題します。逆に言えば、辞書を引いたところで、合格点は取れない問題だということです。つまり、学生の論理的思考力を試していると言えます。)

✅学生達のその後

 では、教科書通りの内容を暗記して、大学へ進んだ学生達は、その後、どうなるのでしょうか?大学入学後も、暗記を中心とした学習を続けるのでしょうか?そんな事はありませんね。もちろん、大学入学後に暗記する知識もあるでしょう。ですが、レポート作成が、毎週のように、入ってくるのではないでしょうか?そして、他人のレポートを丸写ししたようなレポートには、容赦なく、不可の評価が与えられます。大学では、正解の暗記ではなく、自分自身で考えることが、求められるのです。

 つまり、大学は、正解のない学問の入り口です。毎週のレポート課題は、学生達に論理的思考を伸ばす訓練なのです。こうして、自分で論理的に考える力を身に着けた大学生達は、その集大成として、それぞれの研究テーマを与えられ、卒業論文を書き上げて、社会へと巣立っていきます。

 そして、社会人として、正解などというものはどこにもなく、自分で課題を見つけ、なんとか解決策を探す、永遠の旅路を歩むことになるわけです。

 このように、社会に出れば、正解がないことが、当たり前です。正解が決まっており、それが教科書に書いてあるような学校教育は、一種、異常な世界なのです。

✅学校教育とは何か?

 では、一種 異様な世界である学校教育とは、一体、何なのでしょうか?これを考えるため、唯一の正解がある世界の学校教育以外の例を挙げてみましょう。

 まず、クイズがありますね。多くのクイズ王は、学校教育で学ぶ知識を、正確に暗記し、瞬時に解答してきます。一般人は、それをバラエティとして、楽しむわけです。つまり、正解がある世界が、娯楽になっているわけです。

 もうひとつ、身近な例があります。資格試験です。多くの資格試験は、大学入試と同じく、正解が決まっている問題が出題されます。そして、合格点を取った人に、資格が与えられるわけです。

 この資格試験を突破しなければ、付けない専門職も多くあります。例えば、弁護士です。弁護士になるには、難関の司法試験を突破する必要があります。法律に関する詳細で、確かな知識が試されます。

 なぜ、でしょうか?これは当たり前ですね。基本となる法律の知識がない人に、弁護士のような法律の専門家を任せられませんからね。ですが、弁護士になると、機械的の法律を適用すれば済むという世界ではないですね。各事案の状況において、高度な判断を行いながら、法律を道具として使っていくわけです。つまり、司法試験で確認される法律の知識は、弁護士の仕事をしていく上での基礎になるのです。

 という事は、学校教育とは、社会に出るための、基礎教育と言えるのかも知れません。

✅学校教育は未来への懸け橋

 ここまで、学校教育とは、社会に出るための、基礎教育だと探ってきました。最後に、学校教育で、一体、何を学んでいるのかを、再度、考えてみたいと思います。

  まず、学校教育の特徴は何でしたか?そうですね。正解があることでしたね。正解が、教科書に書かれているわけですよ。では、なぜ、正解が書かれているのでしょうか?それは、過去に、それが正解だと証明されているからです。どのようにして、正解だと証明されるのでしょうか。具体的に考えてみましょう。

 例えば、かつて、鎌倉幕府の成立は、1192年で、『いい国 作ろう 鎌倉幕府』と覚えていました。しかし、現在では、1185年で、『いい箱 作ろう 鎌倉幕府』に書き換えられています。源頼朝が征夷大将軍になった1192年よりも、以前に、鎌倉幕府と呼ばれる政治体系が、確立していたことが、研究で明らかになったわけです。この例でも分かる通り、教科書は、これまでの研究の成果をもとに、知識を集約したもので、研究が進んで新たな事実が学会で認められれば、書き換えられるのです。だからこそ、教科書が絶対的に正しいという考え方につながるのですね。

 つまり、過去の研究の成果のうち、学生でも知っておくべきだという知識をチョイスしたものが、教科書なのです。その意味で、教科書とは、人類の過去の英知を塊と言ってもよいでしょう。

 そう考えると、学校教育とは、様々な分野の過去の歴史を学ぶ場だと言えるでしょう。数学なら、ピタゴラスやガウスなどが、明らかにしてきた数学の中身を、後追いで学んでいるわけです。既に、誰かが、解法を確立した問題を、学んでいるといってもよいですね。

 なぜ、過去の歴史を学ぶのでしょうか?それは、弁護士の仕事を見ればわかりますね。その知識を道具として、使っていくためです。

 そうなんです。私達は、各分野の過去の英知を、学校教育で学び、それを土台に、新たな未来を創っていくことを、託されているのです。つまり、学校教育とは、英知のバトン、未来への懸け橋なのです。

 

 
 


 

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