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有機化学演習-基本から大学院入試まで-1 章解説

例題

例題1・1

Hund の規則:縮絨した軌道には平衡スピンの数が最大になるように入る
軌道のエネルギー準位は 1s, 2s, 2p, 3s, 3p, 4s の順に大きくなっていきます。s, p, d 軌道にはそれぞれ電子が 2, 6, 10 個入ります。

例題1・2

オクテット則に従ってルイス構造を書きましょう。CO₂を例に挙げると O は非共有電子対 2 つで 4 個、炭素酸素間の二重結合の部分に 4 つで計 8 個の電子が O の周りに存在しておりオクテットを満たしていることが分かります。炭素原子も同様です。

例題1・3

解説参照。混成軌道を理解していることが重要です。

sp³ 混成:メタンの中心炭素は 2s 軌道に 2 つ、2p 軌道に 2 つの電子を持ちます。よって 2 種類の C-H 結合をすると考えるかもしれませんが実際にはすべての C-H 結合は等価です。これは 1 つの S 軌道と 3 つの P 軌道が混成して一つの原子軌道、SP³ 混成軌道を作っているからでした。図で理解し他方が分かりやすいと思いますので各自図を検索してください。著作権の関係で乗せられません。

sp² 混成:次はエチレンの構造を考えます。2s 軌道と 3 つある 2p 軌道のうち 2 つだけを組み合わせます。この組み合わせからは sp² 混成軌道と呼ばれる 3 つの混成軌道が生じ、2p 軌道の 1つは使われずに残ります。 2 つの sp² 混成軌道を持つ炭素が近づいたとき σ結合とそれだけでなく先ほど使われずに残った p 軌道同士が重なった π結合ができます。全体的に分子を見ると二重結合を持つ化合物となります。

sp 混成:次は炭素の p 軌道の 1 つだけを 2s 軌道と混成させます。その結果この場合には 3 つある 2p 軌道のうち 2 つが使われずに残ります。そして sp 混成同士の炭素を近づけると σ 結合が形成され、残った 2 つの p 軌道が 2 つのπ結合を形成します。すると分子全体は三重結合を持つことになります。

実際にアレンの構造を chem 3D で見てみましょう。 1 枚目と 2 枚目で見ている角度が違います。解説の説明の通りアレンが直線構造をとっていることが分かります。




例題1・4

解説参照。オクテット則を満たすようにケクレ構造式を書けばおのずと形式電荷もつじつまが合っていると思います。

例題1・5

有機化学で酸性度の問題を考えるときは HA ⇆ H⁺ + A⁻の平衡を考えるのが大事です。たいていの場合はアニオン A⁻ の安定を考慮して問題を解きましょう。この問題もその解き方です。

p 軌道よりも s 軌道のほうが軌道の張り出しが小さくより原子核にひきつけられています。軌道には負の電荷をもつ電子が入っていますから原子核から近い軌道ほど核の正電荷にひきつけられることによってそのエネルギー準位が低下して安定化するのです。電子のエネルギー状態が安定であるということはその化合物、アニオン A⁻ は安定ですから平衡の式が右に偏ることになります。アニオンの安定性についても考慮すべきポイントが以下の動画でわかりやすく説明されているので参照してください。


例題1・6

この問題でもアニオンの安定性を考量して問題を解いています。プロトンを放出して生成するそれぞれのアニオンを考えるとアルコールのほうは共鳴構造がないのに対してカルボン酸のアニオンは共鳴構造が存在します。共鳴構造は電荷の偏りは非局在化して分子全体を安定化します。共鳴構造が多ければ多いほどその分子は安定になります。

例題1・7

解説参照。pKa の表を見ないと絶対に解けない問題です。逆に表さえ見れば大学受験をした人ならわかることだと思います。高校化学の知識です。

例題1・8

解説にあるように結合の開裂は結合エネルギー分の吸熱であり結合の生成は結合エネルギー分の発熱であることをまずおさえましょう。
右辺のエネルギーから左辺のエネルギーを引いて、と考えてしまいがちですが解説では左辺から右辺を引いています。またその計算結果から発熱反応か吸熱反応かを判断するときに頭がこんがらがりそうですが表1・2 が結合解離エネルギーの表だということが分かれば大丈夫です。結合解離エネルギーの定義は表の上に書いてあるように結合を均一開裂させるのに必要なエネルギーです。 (1) の計算結果が -97 kJ/mol ということは結合を均一開裂させるのに -97 kJ/mol 必要だったということになります。よって発熱反応であるとわかります。

演習問題

1・1

解説参照。例題 1・1 と同じです

1・2

例題1・2 を参照。

1・3

省略

1・4

炭素のみの有機化合物は単結合なら sp³、二重結合は sp²、三重結合は sp 混成と考えて問題ありません。

また例題 1・3 の解説より炭素原子から何本手が生えているのかと考えたとき 4 本なら sp³、3 本なら sp²、2 本なら sp 混成とも考えられます。この時二重結合は 1 本の手と考えています。

例えば (c) のCO₂は O=C=O で表され二重結合を 1 本の手と考えると 手が全部で2 本です。よって sp 混成とわかります。

(e) を例にとると CH₃CN は CH₃-C三N で表されます。左の炭素は手が 4 本でsp³、 右の炭素は三重結合を手が 1本と考えると sp 混成です。

1・5

解説参照。

1・6

例題1・4 を参照

1・7

酸性度の問題です。この問題も生じるアニオンの安定性で考えます。
(a)電気陰性度とは非共有電子対を引き付ける強さの尺度のことです。電気陰性度が大きければ負電荷を引き付けて安定化します。

(b)解説参照。

1・8

解説参照

1・9

プロトンと結合しやすいほど塩基性は強いです。プロトンと結合しやすいということはよりアニオンとして不安定でプロトンと結合して安定化します。プラスとマイナスがくっつくというのは有機化学の大原則です。

1・10

先ほどの問題が塩基性についての問題だった一方でこちらは求核性についての問題です。塩基性と求核性の定義はこの後の章で出てくる SN₁、SN₂ などの問題を解くときにも覚えていなければいけないので今ここで覚えてください。塩基性とはプロトンとの反応のしやすさ、求核性とは炭素原子との反応のしやすさのことです。

1・11

ルイス酸とは非共有電子対を受け入れるもの、ルイス塩基はその逆です。定義をしっかりと覚えてください。

1・12

例題1・8 参照


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