有機化学演習-基本から大学院入試まで-2章解説
例題2・1
いずれも直鎖アルカンが枝分かれした分岐アルカンの命名です。 p13 にある解説を見ながらやっていきましょう。
①分岐アルカンの命名は最も長い炭素鎖を母体としそれから枝分かれした部分を置換基として命名します。
②置換基の位置番号がより小さくなる末端から母体炭素鎖に番号を振り置換基の位置番号を決める。
③置換基名をアルファベット順に並べて母体アルカンの前におき、各置換基の前に位置番号を付ける。同一置換基が複数ある場合は倍数接頭辞 di-, tri-, tetra- などで一括する。
(a)
①分岐アルカンの最も長い炭素鎖は炭素数 5 のペンタンです。この分岐アルカンはペンタンを母体としてそこに枝分かれしたメチル基のついたものだとわかります。
②置換基であるメチル基の番号付けは教科書の図を見てください。左から数えるとメチル基はペンタンの 4 つ目の炭素に位置していますが右から数えると 2 つ目の炭素に位置しています。ルールに従って置換基の位置番号がより小さくなるようにするとメチル基の位置番号は 2 となります。
③置換基名はアルファベット順に並べて母体アルカンの前におくので解説の通り 2-methylpentane となります。
(b)
①まず母体のアルカンがどれかを決めなければいけません。一見ヘキサンにイソプロピル基がついた分岐アルカンだと考えると思いますがそうではありません。解説の通り最も長い炭素鎖の選び方が二通りある場合には枝分かれの多いほうを選びます。すると母体がヘキサン、置換基にメチル基とエチル基がついたものとわかります。
②置換基の番号付けです。教科書の図の左から数えると 4,5 の位置番号になりますが右から数えると 2,3 と番号が右から数えたほうが小さくなります。よってメチル基の位置番号が 2, エチル基の位置番号が 3 です。
③置換基名はアルファベット順に並べて母体アルカンの前におきます。メチル基とエチル基をそれぞれ英語に直すと methyl と ethyl です。アルファベット順に並べると e のほうが m よりも先なので置換基番号はメチルのほうが先ですがあくまでもアルファベット順に並べるので 3-ethyl-2-methylhexane が答えです。
(c)
同様に行ってください。この問題では③の同一置換基が複数ある場合は倍数接頭辞 di-, tri-, tetra- などで一括する。の知識を問われています。
(d)
こちらも同様です解説に書いてある、置換基はアルファベット順に並べるとき倍数接頭辞を含めない。というのは非常に重要なので覚えてください。
dimethyl と ethyl では確かに d と e で dimethyl のほうが先に来そうですが
di は m から始まる methyl 基が 2 つあるというのを表しす倍数接頭辞です。
置換基はアルファベット順に並べるとき倍数接頭辞を含めないので e と m を比較して答えの通り 4-ethyl-3,6-dimethyloctane が答えとなります。
例題2・2
命名のルールの基本は例題2・1 と変わりありません。母体のアルカンが環状のシクロアルカンへと変わっただけです。母体のシクロアルカンを決定して置換基の位置番号を決める。そして位置番号関係なくアルファベット順に置換基を並べる。それだけです。
(a)解説参照。
(b)解説参照。
(c)解説参照。倍数接頭辞は置換基をアルファベット順に並べるときには考量しません。
(d)いままでは置換基をアルファベット順に並べるときは置換基の位置番号は無視していました。しかしこの問題ではどの置換基から数えても位置番号の組み合わせは 1,3,5 です。このようなときには解説にあるように 1,3,5 の番号を置換基の順番通りに振ってあげましょう。よってこの化合物の名前は解説の通りになります。
例題2・3
構造異性体をすべて書く。この時点で初学者には難易度が高いです。大学受験の有機化学でも書きもれがなかったか不安になるでしょう。しかし先ほどの命名の知識を使えばもれなく構造異性体をすべて書きだすことができます。
まずは母体のアルカンの炭素数を最も多いものから書き出しましょう。もちろん初めにペンタンが書けると思います。次に母体炭素鎖の炭素数を 1 つ少なくしてみるとブタンが書けます。このブタンの位置番号を考えると 1,4 にメチル基をつけるとこれはペンタンと同じです。2, 3 につけてみるとどうでしょうか。ペンタンとは違いますが 2,3 のどちらにメチル基をつけても同じ化合物であることが分かります。できたのは 2-メチルブタンですね。次に母体炭素鎖が 3 のアルカンを考えます。これも位置番号を考慮してエチル基をどこにつけても先ほどの 2-メチルブタンができます。よって 2 つのメチル基を位置番号を考慮してもれのないようにプロパンにつけていくと 2,2-ジメチルプロパンができます。これですべての構造異性体を書きだすことができました。
これらの構造異性体の沸点については解説を参照してください。
例題2・4
反応機構については解説参照。ラジカル置換反応は開始、成長、停止の三段階から構成されまる。教科書で言うと (1) が開始段階、 (2) が成長段階、 (3) が停止段階です。
この反応には常に純粋な生成物を得られないという欠点があります。クロロメタンでは止まらずジクロロメタン、トリクロロメタンと反応が起こるのです。ですから実際には純粋なハロゲン化アルキルを得たいと思ったらこの反応ではなく今後の章で出てくる反応を用いることになるわけですがこの反応は院試でよく出てきます。忘れがちなところなので狙われるのでしょうか。hν, Cl₂の組み合わせをみたら間違いなくこの反応だと考えていいでしょう。
例題2・5
似たような問題を大学受験の有機化学でもやった気がします。まずは完全燃焼の反応式を係数含めて書けたでしょうか。有機物を燃やすと水と二酸化炭素が発生します。二酸化炭素と燃焼させた有機化合物の炭素の数をあわせましょう。その後二酸化炭素の酸素原子、水の酸素原子と燃焼に使われる酸素の係数をあわせます。水素も同様です。
次の式についてですが分子と分母のどちらが水でどちらが二酸化炭素なのかよくわからない方もいるかもしれませんが質量比が 2.1 ということで分子量を考えましょう。二酸化炭素が 44 g/mol, 水が 18 g/mol なので質量比が 1 より大きくなるには二酸化炭素のほうが分子ですね。できた式を解けば答えの有機化合物が炭素数が 6 のアルカンであると分かります。
問題文にアルカンを塩素化したところ 2 種類のモノクロ体が生成した。とあります。まずは炭素数 6 のアルカンをすべて書きだして例題 2・4 の光塩素化で 2 種類のモノクロ体が生成するものを探します。書き出したものを以下に示します。
例題2・6
Newman投影式は C-C 結合の延長線上から見て、二つの炭素原子を一つの円として表現したものです。手前の炭素についている結合はこの円の中心にと独占で表し、後ろの炭素の結合は円の周囲から出ている線で表現します。
詳しくはマクマリー有機化学やブルース有機化学、ウォーレン有機化学など分厚い教科書を大学図書館で参照してください。
例題2・7
解説参照。アキシアルとは環に垂直な方向に平行(縦)、エクアトリアルとは環の平面内(横)にあるものです。環反転するとアキシアルはエクアトリアルに、エクアトリアルはアキシアルになります。
詳しくはマクマリー有機化学やブルース有機化学、ウォーレン有機化学など分厚い教科書を大学図書館で参照してください。
2・1
例題1・2を参照してください。母体アルカンを決める。(複数通りある時は枝分かれの多いほうが母体)、置換基番号を付ける、番号に関わらずアルファベット順に並べる。そのとき倍数接頭辞は無視する。このルールを守ってください。ここではポイントだけ解説します。
(a)省略
(b)左から数えると置換基番号が2,6,7、右から数えると3,4,8 です。置換基番号は初めの番号が小さくなるように付けます。
(c)母体は以下の通り。母体アルカンを決める。(複数通りある時は枝分かれの多いほうが母体)
(d)アルファベットは e,i,m の順です。
(e)省略
(f)右から数えたほうが番号が若くなります。置換基のアルファベット順はChloro,methyl です。
(g)アルファベット順は chloro, fluoro の順です。
(h)アルファベット順は bromo, chloro です。
2・2
命名法の基本は変わりません。例題2・1, 例題2・2, 2・1を参照してください。
2・3
命名法の問題でもいえることですが置換基の名前と直鎖アルカンの名前を覚えましょう。p12, 13 表をしっかりと覚えておきましょう。
2・4
解説にあるようにまずは与えられた名前から構造を書きましょう。問題となっている間違った命名法のものは直感的に書けるはずです。その後は正しく命名しましょう。やり方は前問を参考にしてください。
2・5
例題2・3でもやった構造異性体の書き出しです。できる人はできると思いますが難しい人にとっては難しいでしょうか。まずは不飽和度を計算します。計算すると 0 ですね。わからない人はググって思い出してください。基本です。不飽和度=1+Cの数-(Hの数やハロゲン原子の数の合計÷2) + (N の数÷2)
不飽和度が 0 なのでアルカンです。不飽和度が 1 だと二重結合か環構造があります。
まずは母体の炭素数が 7 のものを書きだします。
次に母体の炭素数が 6 のものを書きだします。母体の炭素数が 1 つ少なくなっているのでメチル基がどこかにつきますね。ヘキサンの置換基の位置番号は 1~6 まであります。全部チェックして 1,2,3 と 4,5,6, がそれぞれ同じなので母体の炭素数が 6 のものは 3 つです。
次に母体の炭素数が 5 のものを書きだします。母体の炭素数が 2 つ少なくなっているのでメチル基が 2 つもしくはエチル基が 1 つ母体につきます。エチル基の場合はすぐできます。メチル基の場合は (1,1),(1.2),(1.3) と位置番号ごともれなく書き出しましょう。適当に書いて他にないかなと探すより位置番号を書きだすほうがもれがないでしょう。
注:位置番号 1 のところにメチル基を付けたら母体がヘキサンになるのでそういった重複には注意してください。しっかりと書き出していればかぶっていることが分かるはずです。有機化学は手を動かしましょう。天才以外頭の中では解けません。これを読んでいる人は院試しようとしているのだから上位大の内部生以外天才ではありません。手を動かしてください。
2・6
先ほどと同様です。書き出してください。
2・7
解説参照。例題にも類題が載っています。
2・8
2・9
解説参照。実際に第三級 C-H 結合、第二級 C-H 結合、第一級 C-H 結合の順に結合エネルギーは大きくなっていきます。それぞれ400, 410, 421 kJ/mol
2・10
ゴーシュ型配座では 2 つのメチル基が重なっているわけではありませんが互いに 60 度離れた位置にあることでメチル基の水素原子が互いに近づくために立体ひずみが生じます。
1,3-ジアキシアル相互作用についてですが C1 のアキシアル位についたメチル基の水素はそこから 3 番目の C3 と C5 についたアキシアルの水素と接近するために立体ひずみが生じます。
2・11
解説参照。すべて書いてあります。
2・12
解説参照。すべて書いてあります。
2・13
解説参照。すべて書いてあります。