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エネルギーをめぐる歴史

目次
(1)石油の発見
(2)石油と世界大戦の関係
(3)中東油田と石油ショック
(4)ロシアのエネルギー大国化
(5)エネルギー地政学の大転換期


人類はこれまでエネルギーを求めて争いを繰り返してきた。16〜18世紀は主にコークス(石炭を乾留して炭素部分だけ残した燃料)や植物油、鯨油、石炭などとても非効率な生産方法でエネルギーを取り出してきた。生産に必要な石炭、木材などの資源を求めて植民地化を行い、激しく争った。その後は生産効率の良い石油が用いられてそれを求めて第一次、二次大戦が繰り広げられた。
軍事活動を行う上で欠かせないのが石油・石炭などの資源であり日本は地理的に資源が少なくとても苦労してきた歴史がある。
今回はエネルギー地政学を紐解いていく。


(1)石油の発見

1859年にペンシルバニア州で約20mの井戸から黒い液体が滲み出ているのが発見された。それがまさに石油の発見であり人類の生活を大きく変えるものであった。
石油とは炭化水素を主成分としており、大昔の海中にいたプランクトンの死骸が石油の元となっている。
また、1870年にはカスピ海沿岸で巨大な油田の生産が開始されて多くの石油王が誕生した。その象徴とも言える人物がジョン・ロックフェラーである。

(2)石油と世界大戦の関係

第一次世界大戦では、石炭から石油にエネルギー転換が起こり、飛行機や戦車が主流の時代であったため石油の重要性が増す時期でもあった。
帝国主義の真っ只中ドイツは各国に侵攻を続けていくがエネルギー不足問題もあり敗戦に終わった。
第二次世界大戦ではドイツや日本はエネルギーの重要性を学んで合成石油を開発してエネルギー不足を改善しようと試みた。しかし、連合国側には石油メジャーが援助に入って圧倒的なエネルギーの差を誇り、日本やドイツを対象に石油輸出を停止して二次大戦でも連合国側は勝利を納めた。
この2度の対戦を経て石油は国家のパワーとも認識されるようになった。


(3)中東油田とオイルショック

1909年から徐々に中東由来の油田が開発されて油田がメキシコ湾、カリブ海中心だったのが、中東のペルシャ湾へとシフトが進んだ。
その当初は英仏系企業が石油利権を持っていたが1944年あたりからアメリカがサウジアラビアの石油利権を獲得して世界のエネルギー利権を支配した。
しかし、その後は中東各国が自国の石油を他国に支配されていることに対する反発から各地で独立機運が高まった。そして1960年には石油輸出国機構(OPEC)が設立されて徐々に石油の利権を中東の国々が取り戻す流れになっていった。
また、何度も繰り返すイスラエルを巡る中東戦争によって石油価格が上昇してオイルショックが世界中に波及した。その後も中東各国が石油国有化企業を設立して欧米系の石油メジャーの利権は薄れていった

(4)ロシアのエネルギー大国化

1991年のソ連崩壊以降長らく国際社会から存在感を失っていたロシアにプーチン大統領が就任してからは天然ガスのパイプラインなどを設立してロシアは一気にエネルギー大国になる。その後はイギリスと共同でエネルギー会社を設立してサハリン計画など他国へのエネルギー輸出を増やしていった。その中でも大きな取引になったのがドイツとのノルドストリーム開通であった。また、2013年には国営企業のロスネフチがTNKーBPを買収して巨大石油会社になった。
そこからロシアはエネルギーを外交手段として使うようになった
一方アメリカではシェール革命が起こり従来の原油生産よりも効率的に原油を取り出せるシェールオイル(シェールと言われる頁岩に水圧と薬剤でひびを入れて石油を採取する手法で従来の採取法よりも浅い層から取り出せて効率的になった)が開発されたことでアメリカが石油、LNG(液化天然ガス)の輸出国になった。この変化をロシアは恐れていてエネルギー地政学を大きく揺るがす革命となった。

(5)エネルギー地政学の大転換期

最近はSDGs推進の高まりも受けて脱炭素の考えが世界中で広まっている。そこでヨーロッパを中心に再エネが普及しており新たな市場が今まさに生まれている。そんな真っ只中にロシアはウクライナに全面侵攻を開始した。これは単なる領土問題のみならず世界のエネルギー問題に直結した。EU諸国はロシアに約38%エネルギーを依存しており今回のウクライナ情勢によってロシアからのエネルギー輸入をストップすれば確実に経済不況に陥る。しかし、ロシアに対して甘い制裁しか課すことができなければ国際秩序が乱れロシアの侵攻を受けて他国も同じような動きをする可能性もある。実際に中国の台湾問題も大きく懸念されている。短期的には世界経済に大打撃を与えるが長期的に見れば世界のエネルギー地政学を組み替える必要性がある。


参考資料
https://newspicks.com/news/6780552/body?invoker=np_urlshare_uid7505780&utm_source=newspicks&utm_medium=urlshare&utm_campaign=np_urlshare

https://reki.hatenablog.com/entry/2015/05/21/謎の物質・石油の歴史

https://ja.wikipedia.org/wiki/石油コークス

エネルギー400年史: 薪から石炭、石油、原子力、再生可能エネルギーまで

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