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ショートショート 信仰

あなたは神を信じますか?
もちろん信じる必要はないのです。
無条件であなたを神は、愛して下さるノデスカラ!
被害者1
僕は宗教に対して偏見はありません。
しかし僕の家族は、全てを失いました。
元々父は、平凡な会社員でした。そこそこ贅沢も出来る家庭であり、愛もあり、平和もありました。
そのような善良な家庭にも欠点はあります。
それは、善良であるがゆえの人の良さなのです。
ぼくたちは5人家族です。父、母、僕、妹、そしてお婆ちゃんがひとり。
中年の危機と言いますが、父は今まで平凡過ぎるほど平凡な生活をしていました。そしてそれを恥じてもいました。幸せであることに罪悪感をもってもいました。テレビの陰惨な事件に涙を流すほど優しく一面もあるのです。
父にも中年の危機がやってきました。 うつ病になったのです。病院の通院を嫌い自力でうつ病を治そうとしたのです。
その答えが、隣人愛の会という信仰宗教でした。
彼らの活動は、あらゆる信仰宗教のなかでも素晴らしいという評価で、方針はシンプルでした。
方針は、ひたすらに隣人に奉仕をすること。そして、大いなるなる者と繋がり神に近付くことを目指すことでした。
父は、その実践として仕事を辞めたのです。
それは自分が辞めることで、誰(どこかの隣人)かが職にありつける可能性があるからだといいます。
そして家屋敷をホームレス支援センターに寄付しました。
こうして僕たち家族は路頭に迷ったのです。
父は、全てを隣人に与え次の課題を探しました。そして次は家族を与えることにしたのです。先ず犠牲になったのは、美しい妹でした。
妹はまだ高校生でしたが、中退してアルバイトをしていました。父は言いました。お前が隣人から一番感謝され愛されることをしなさい。そして全てを隣人に与えなさい。
なんのスキルもない、純真な妹は風俗で働き恵まれないひとに全額寄付をする選択をしました。
お婆ちゃんは、少ない年金を隣人に渡すことにしました。しかしお金がなくなります。残念ながらお婆ちゃんは目を潰し、もの乞いになることを選びました。
父に従順である母は、もっと悲惨でした。
父の言われるがままに隣人に与えることをしたのです。隣人が金が欲しいといえば、ヤミ金から金を借り渡しました。身体が、欲しといえば抱かれ、与えるもの全てを与えたのです。そして挙げ句の果てに臓器提供をして消滅しました。
それでも父は与え続けたのです。
そして自殺しました。
理由ですか?知ったこっちゃありませんよ。
ぼくはどうなったかって?
僕は、早々と親子の縁を切ってビジネスをしていましたよ。それで成功して妹と婆さんを引き取りましたよ。えっなんの仕事ですかって?それは言えませんよ。クソ隣人に復讐する仕事ですよ。あっ仕事の電話なので失礼します。
あっ俺、俺。おじいちゃん?今事故にあってね、裁判になる前に示談にしたいって相手側が言うんだよ。だから金貸してくれない?500万ぐらい……。
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