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「僕のせいいっぱいなんで」

「僕のせいいっぱいなんで」

4月11日の巨人vsヤクルト戦で決勝点を上げた、巨人の捕手・小林誠司がヒーローインタビューで絞り出した言葉だ。決してクリーンヒットではなかった。詰まりながら3塁手の頭上を越え、レフト前にポトリと落ちたような無骨なヒット。技術うんぬんよりも「勝ちたい。先発投手の菅野に勝ちをつけたい」強い気持ちが打たせてくれたようなヒットだった。
―――――何かを変えたい。ずっと「打てない」と言われ続けた小林が、変わるためにしてきた努力の結実の瞬間を見た気がした。

嬉しい悲鳴

小林がタイムリーヒットを打ったことを知ったのは、文春野球学校のホームランコース講座に参加している最中だった。
「たかぞうさんに朗報です。小林がタイムリーヒットを打ちました」とコミッショナーの竹田さん。
「えええええええーーーーーーーーー!!!」
正直、喜びよりも驚きのほうが大きかった。バッテリーを組んだ投手・菅野智之も、試合後に小林がタイムリーヒットを打った場面を振り返り、「こんな言い方をしちゃいけないですが、誰も点が入ると思っていなかった(笑い)」愛のあるイジリ方でコメントしていた。
昨季の小林は143試合のうちわずか21試合の出場、立ったのは9打席のみで打率は.125。打てないというより、そもそも試合に出られていないのも事実だった。けれど今季、巨人は原辰徳監督から阿部慎之助監督に替わり、2017年のWBCを沸かせた“スガコバ”バッテリーが再結成されることになった。前回もあうんの呼吸で快勝し、菅野の2勝目がかかるこの日。リアタイしたかったけれど、どうせ推しが出ているとドキドキし過ぎてまともに見られない。家に帰ってゆっくり録画を見ようと、心を落ち着かせた。

桑田2軍監督が気づかせてくれたこと

2月のキャンプではプロ11年目にして初の2軍スタートだった小林。
2軍の桑田監督は開幕前のインタビューで言っていた。
「小林誠司にホームランを期待しますか? しませんよね。それよりも、進塁打を打てる、四球を選べる、簡単に三振しない。そういったことができれば絶対に使いたくなる。誠司じゃないとダメな場面が必ずやってきますよ」桑田監督の考え方に触れたことで、小林は自分の存在価値を見直したのではないか? 今までは簡単に三振してしまうことが多かった打席でも、相手投手に球数を投げさせる粘りが出てきた。バントはきっちり決めるし、引っ張り専門だった打撃も、逆方向へ流し、ランナーを次に進める打ち方を意識しているのがわかる。


とにかく試合に出てくれることが喜び

原辰徳前監督はホームラン打者を重用する傾向にあった。
小林もホームランバッターになるためのスイングばかり練習していたように思う。ホームランは野球における“華”だし、ヒーローになれることは間違いないけれど、現役選手として試合に出られなければ意味がない。ファンにとっても好きな選手が試合に出ることが何よりの楽しみだ。だから、今季目指しているコンパクトな振り方、状況に応じた打ち方をこのまま続けて「使いたくなる選手」を目指してほしい。守備、リードはすでに武器なのだから。

ひとりでは叶わない。チームだから叶うんだ

阿部監督が途中、小林に代打を出さずに9回裏まで使い続けてくれたこと。
決勝打を打つその前にルーキーの佐々木俊輔が2塁への盗塁を決めていてくれたこと。そしてポテンヒットで2塁からホームベースまで帰って来られる、50m6秒フラットの俊足だったことにも感謝せずにはいられない。
小林の「僕のせいいっぱい」をチームメイトが形にしてくれた。

今季の阿部ジャイアンツのスローガンは「新風」。
新しいいい風が吹き始めている。
選手ひとりひとりがやれることをやり、みんなで束になって同じ方向を目指していく。

楽しみなシーズンが始まった。

(久々にスポーツ報知買ってしまった)


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