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【読書記録】母脳-母と子のための脳科学

よく「子育てに正解はない」と言う。確かにそう思う。子どもはそれぞれ違った個性を持って生まれてくる。
だけど、なんだかうまくいかないなと思った時、とりあえず日常は回っているけれども「これでいいんだろうか…」というモヤモヤが心の端っこに燻っている時、やっぱり「正解」につながる手がかりを求めてしまう。


「母脳-母と子のための脳科学」(黒川伊保子著 ポプラ社 2017年)
は、育児について、脳科学の視点から客観的に書かれている。脳科学というと少し難しそうに聞こえるが、とても分かりやすい内容。大きく分けた2つの章の中に、つい読みたくなるような小タイトルがたくさんあって、ひとつひとつが長すぎない分、どんどん読める感じがする。字が小さすぎないのもありがたい。


客観的な視点から書かれているものを読むと、「ああ、だからか!」と、正体不明の心のモヤモヤがちょっとだけ晴れるような、「正解」にちょっとだけ近づけたような気持ちよさがある。もちろん、読んだだけですぐに何かが変わる訳ではないけれど、私が悪いんじゃない、脳のせいだ、と思うことはできる。そしてこの本のいいところは、客観的な視点に留まっていないことだ。



著者自身も子育て経験者。本の帯に"脳科学で育児の戦略を立てよう!"とあるとおり、脳科学の知識を活かした子育てを実践しており、その経験もたくさん盛り込まれている。子育て中のままならなさやイライラや自己嫌悪にも寛容で、決して「戦略どおりできていない私」を責めるものではない。励まされ、前向きになれる内容である。

 息子の存在を否定するひどいことばくらい、私だって吐いた。どんなに愛していても、育児には疲れ果てる。光は必ず影と共にあるように、愛も必ず憎しみと共にある。ときに放射してしまう、愛するがゆえの憎しみも、自分で自分に許してあげよう。
 子どもが悪いわけじゃないのに、イラついて理不尽につらく当たってしまった。後から無垢な寝顔を見て、「ごめんなさい」と涙をこぼす母親が、今この瞬間にも、この星に何万人もいるに違いない。常時暴力あるいはネグレクトするという深刻な場合を除いて、たまのそれは、育児のアクセント。たまに現れる影は、光の存在を知らせてくれる。母は反省して愛を確認し、子どもは文脈的意味の遺恨は残さず、すくすくと育つ。

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私はこの文章にとても励まされた。
ちなみに、最後の「子どもは文脈的意味の遺恨は残さず」というのは、赤ちゃんにかけられた文脈上の意味は、2歳後半でいったん壊れるということらしい。だからと言って言葉をかけなくてもよいということではなく、脳の奥深くにことばの感性だけは残るので、おなかにいる時から、やはり声をかけることはとても大切なのである。


他にも、男性脳の理論に基づく男の子への(ついでに夫への)接し方や、女の子の脳について、さらに”イヤイヤ期”や思春期の脳の状態についても分かりやすく説明されていて、とてもおもしろかった。うちの子どもたちは思春期までまだしばらくあるが、中学生の娘を持つ友だちに勧めたいと思う。そして私自身の育児指南書として、これからも何度も読み返すであろう一冊である。

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