名はない

置き去りは見殺しか 見てもいない 見たくないもの 脅威 見ない 見ないと脅威はなくなるのか なくならない なくならない 忘れて過ごす この世の全部すべてなんて見られないし聞こえない そうだ ドブネズミのうつくしさなんて見えないし 見たいのかどうかもわからない 写真には写らないうつくしさはある 写真に写ったうつくしさはある 写真にしか写らないうつくしさもあるかもしれない 置き去りは見殺しだろう 見えてないのに ほんとは見えてるし聞こえてる 世界を隈無く見て知るなんてできないよ はい できません でも 置き去りがあり見殺しがある そうやってしか生きられない 人間だもの 遠くの海辺のごみ拾いイベントに参加する 近所のごみは拾わない 見たくないもの全部見ようとする必要なんかない 聞きたくないもの全部耳にいれる必要なんかない そんなことしようとしたら死ぬる でも 目をつむって耳を塞いでは 違う 覆い隠して口を塞いではならない 
「死にたい」
聴いたよ 力なく言っていた ほかにもいろいろ言っていたけど忘れた 謝っていた 覆い隠して口を塞いでいたことを責めるのではなく 謝っていた 知っていた 子どものころから知っていた 見なかったことにして 聞こえないふりして 気をそらして 「悪」と判定して まともに聴かなかった うるさいから責めた 邪険にした 覆い隠して口を塞ぐことにしか関心がなかった 覆い隠して口を塞がなきゃ死ぬから 死ぬと心配のあまり 覆い隠して隠しおおせると思うなよ 生きたくてしたことで反対に向かっている滑稽と切実 偏光さんはクロコちゃんをからだで受けとめてきた 

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