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足ある?

1997年4月17日(木)
男の子が歩いてきた。
白っぽい流木のようなのを杖にしていた。目が見えないのだった。
非常に痩せていた。あせた青灰色の上下を着て、履き物を履いていなかった。

男の子は地面に座って、それはそれはうれしそうに笑いながら自分の足の指に触った。
「ね、ぼくの足ある?」
笑顔でわたしに問いかけた。
「ん、あるよ」
よかったね!

男の子はあるところ─忘れてしまった─を耕しに行く旅の途中だ。
わたしは話を聞いて胸がいっぱいになり、それからわくわくした。

男の子は両腕を枕にして満ち足りた顔で眠っていた。
男の子の頭と壁の間だけ、少し空いていた。狭いその空間を渡って、わたしは男の子の左側に移った。
頭のそばを通るのは、悪いのだが、隙間はそこしかなくて、わたしは男の子からだのどこであろうとも分断する訳にはいかなかった。
男の子のうれしさあふれる寝顔をうち眺めた。
なんて素晴らしいんだろう!
目指して歩む人。
こんな細いからだで。
そっと、ほっぺにさわった。

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