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『ペンギンに気をつけろ!』:1993、イギリス

 独身青年のウォレスは、飼い犬のグルミットに誕生日プレゼントとしてテクノズボンを買ってあげた。金欠になってしまったたウォレスは、2階の部屋を貸し出すことにした。入居希望者として、ペンギンのマッグロウが家にやって来た。

 ところが、マッグロウは貸し出し予定の部屋ではなく、グルミットの部屋に居座ってしまった。マッグロウは巧みにウォレスの心をつかみ、疎外される形となって家を出たグルミットは、マッグロウの不審な行動を目撃する。実はマッグロウはお尋ね者だったのだ。

 マッグロウはウォレスを利用して、博物館からダイヤモンドを盗み出そうとしていた。彼はウォレスにテクノズボンを履かせ、コントローラーを使って町中を走り回らせた。そして疲労して意識朦朧となったウォレスを操作し、博物館に侵入させる…。

 監督はニック・パーク、キャラクター創作はニック・パーク、脚本はニック・パーク&ボブ・ベイカー、製作はクリストファー・モル、製作総指揮はピーター・ロード&デヴィッド・スプロックストン&コリン・ローズ&ピーター・サイモン、撮影はトリスタン・オリヴァー&デイヴ・アレックス・リデット、編集はヘレン・ガーラード、グラフィック・デザインはリチャード・ヒッグス、アート・ディレクターはイヴォンヌ・フォックス、アニメーションはニック・パーク&スティーヴ・ボックス、音楽はジュリアン・ノット。
 声の出演はピーター・サリス。

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 発明家の青年ウォレスと、頭のキレる愛犬グルミットが登場するクレイ(粘土)・アニメーション映画のシリーズ第2弾。
 アカデミー賞アニメーション部門で最優秀賞を受賞した他、数々の映画祭で賞を獲得している約30分の短編映画。

 作品のポイントになる道具として、テクノズボンなるモノが登場。
 これは下半身だけのロボットのようなモノで、コントローラーで操作する。スボンのように人が装着することが可能で、壁や天井も自由に歩き回ることができるというスグレモノ。

 ウォレスとグルミットの前に立ちはだかる悪役は、つぶらな瞳で見るからにイイ奴っぽいペンギンのマッグロウ。
 そんな可愛いキャラクターを根っからの悪党として登場させる辺りは、イギリス流のシニカルなセンスなのかもしれない。

 クレイ・アニメーションは通常のアニメに比べて遥かに時間も手間も掛かるわけだが、メインのストーリーを追うだけに終わっていない。
 グルミットが前後逆にスボンを履かされ、ジャムを顔にベッタリと塗られるといったギャグを入れることも忘れない。

 アニメの部分でも、細かい部分にまで配慮がされている。
 例えば、うるさくて眠れなかったグルミットは、翌朝には目の下にクマがキッチリと作られている。ダンボールに穴を開けるシーンも、少しずつ穴が開くように描かれている。泥棒をするマッグロウには、緊張の汗をかかせている。
 そういう細かい部分にも手間を惜しまない。

 内容としては、サスペンス・アクション映画だ。
 終盤には、模型の列車を使ったスピーディーなアクションが待っている。グルミットがハイスピードで線路を敷きながら、逃げるマッグロウを追い掛けるというチェイスシーンには、勢いと迫力がある。

(観賞日:2002年6月30日)

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