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プロローグ3

大谷の顧客は世界中にいる。ゆえにあるときはロシアに、あるときはイタリアに、あるときはネパールに。しかしどこに行っても彼の仕事は変わらない。現地の食材や水、顧客の嗜好などを理解し、包丁以外はほぼ現地の道具・材料を使って料理をするだけだ。

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そう、和食料理人大谷のもう一つの顔は出張料理人である。
彼はこの仕事を通じて世界の食材や調理法を知り、その知識を自身の料理に取り入れている。もちろん王道の日本料理を作ることもできる。まかない料理も恐ろしく美味い。(深夜、ふらっと遊びに行った時に出してくれた鱧カツがびっくりするほど美味しかった)

しかし私が思う彼の本質は世界を回って得た知識を掛け合わせたオリジナル料理にあると考えている。例えばよく食べ慣れた日本料理を、出雲に来た外国人に出す時、調理方法や調味料に現地の手法を少しだけ取り入れる。必要ならばその人の社会的地位によって油の使い方も変える。そうすることによって、美味しさを保ちながら初めて食べる日本料理への安心感を持ってもらえる。言葉にするのは簡単だが、事も無げにそれを実行し、なおかつ食べた人が心から美味しいと言う料理を提供できる。それが大谷である。

※タイトル画像はニューヨークのとあるセレブリティ宅で出張料理人をした時のもの。

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