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伊藤詩織事件の闇

-週刊新潮は初報からインチキだった-

周知のとおりこの事件は週刊新潮の報道からはじまった。BlackBox(以下BBとする)にもあるとおり、ジャーナリストの清水潔氏が新潮社に繋いだものだ。騒動は新潮の2017.5/10(5月18日号)の記事を皮切りに、5/29司法記者クラブ会見、10/20のBB上梓、10/24のFCCJ会見・・・と続いてゆく。刑事事件としては終了していた、ありがちな密室の性被害の自己申告を一躍、政治がらみの巨大な疑獄に仕立て上げたのは週刊新潮だと言っても過言ではない。

民事判決から8ヶ月を経た今日、裁判資料が公開されて在野のマニアたちが目を皿のようにして検証を重ねてきた結果、今では事の細部が明るみに出ている。現地点から、あらためて週刊新潮の初報を検証してみようというのが今回の趣向だ。なんとなんと記事の驚くべきいいかげんさが明るみに出たではないか!初期報道のインチキに突っ込んで行こう。

(週刊新潮・原文はこちら)
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/05180800/?all=1&page=1

全文(前半)だけでも、これを読んで山口氏が怪しいと思わない方が不思議なくらいのインパクトだ。今読めば新潮が全力で山口氏犯人説を吹聴したことが分かる。まずはタクシー運転手だ。後に重要になるタクシー運転手の証言を新潮はどのように報じていたか。

>「その女性のことなら、よく憶えています。後部座席の奥側に彼女が座らされていたのですが、男性は彼女に“もっといい仕事を紹介する”と話していました。女性は何度か“駅の近くで降ろしてください”と訴えたのですが、男性が“何もしないから。ホテルに行って”と。それで、結局2人をホテルに連れて行ったのですが、到着しても彼女はなかなか降りようとしませんでした。けれど最終的には彼女は体ごと抱えられて、座席から降ろされたのです」

ひどい!ひどすぎる!!まったく違うではないか!これでは誰が読んでも山口氏が無理やり連れ込んだと読むだろう。タクシー運転手の陳述書には「二人とも寿司が美味しかったというような話」をしていたとあるし、「もっといい仕事・・・」などは無い。今日では防犯カメラでは彼女は自分から足をついて降りたことも判明している。何よりゲロがない!ゲロはどうした!ストーリーの要はゲロだ。彼女が目黒駅の手前でゲロを吐いたので降ろせなくなり、急遽ホテル居室で待機させることとなった。ゲロがこの事件の鍵ではないか。新潮は伊藤さんの一方的な言い分だけを聞きとり記事にしたのだ。ふっ、サイテーだな。 

その他、細かい点を以下に列挙してゆく。

>「・・・“TBSのNY支局長にぜひ会わせたい”と。実際、数日後にその3人でランチをし、支局内を案内するなどしてもらいました」

ぜひ会わせたい?ちがうね。前夜のピアノバーでジャーナリズムを希望する伊藤氏が、いつものオシ全開でぜひ会わせてほしいとせがんだのだろ?それで山口氏が便宜を図ってあげたのだろ?同郷のよしみで無償の親切心で。何か見返りを求めたか?求めてないよな。数日後もちがうし、BBではさらに「再会の時は意外と早くやってきた。まだ秋が終わらないうちに」(P19)と表現力を増しているが、記者は知っているか?裁判で明らかとなった再会の日は、なんとピアノバーの翌日だ。(2013年12月11日。場所は55thの5と6の間「かつ浜」です。)

>「ワシントンに来てくれたらインターンでも何でも採りたいな」

なんだそりゃ?裁判所に提出された証拠の中に、そんなメールは存在しない。インターンを希望したのは最初から最後まで伊藤氏である。山口氏はかつて、(ここでも無償で)日テレのインターンを紹介し、伊藤さんに便宜を図っている。以下が日テレ紹介後の伊藤さんからの礼状である。

    おそるべし山口さんパワー。本当に感謝です。
    お忙しいとは思いますが、
    次回お会いできる機会を楽しみにしております!
                 2014-9-6 9:45

彼女が4/3恵比寿の夜の直前に送付した履歴書には、「雇用形態を問わない」と書いてあるという。つまり無給のインターンでも何でも良いという必死さだ。何としても採用してほしかったのは伊藤さんである。

>彼女は最終的に就職の話を詰めるため、彼と東京・恵比寿で会う約束をした。

最終的に就職の話を詰めるためかどうかは、メールを読めばすぐに分かることだ。

伊藤氏の思惑はそうだったのかもしれない。そうだったのだろう。だが、このような報道によって就職面接という話が全世界に広がってしまった。国内では就活セクハラと騒がれもした。初めから面説ですらなかったのに。

↓新潮社の人事部はこういう面接をするのか?

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>ちなみに文春への寄稿とは、彼が支局長の任を解かれ、退社する原因となったものである。

まぁ、遠因になったと言えなくもないがTBSは否定しているし、飽くまで配置転換→希望退職である。その記事は”就職面接”の”課題”であり、伊藤氏が読んで行かなかったものだ。代わりに”面接官”に「シャワーを浴びてきた」と言ったそうですよ。

>店を後にする際に彼が、「僕は明日帰るんだけど、恵比寿には顔を出さなきゃいけない店がものすごくあるから付き合って」

店を後にする際ではない。店に入る前だ。BB P46では迎えに行った山口氏と二人で恵比寿駅から串焼き屋さんに向かう途中だ。最初から二軒目があることを山口氏は伝えていた。飽くまで女性の胃袋を慮ってのことである。エロ心でずるずる誘ったような書き方をするな!ちなみにBBCのJapan's Secret Shameでは、"He was already eating & drinking at this small Kushiyaki place, but he told me this is not the place, we were planning to eat..." ・・・と、まるで遅れて店に到着し、氏が待ちながら飲んでいた串焼き屋さんでハシゴを伝えたととれる言い方をしている。時系列の混乱はBBの特徴だ。

>覚えている限りでは、お刺身と日本酒2合をシェアして飲んだこと。

お刺身はどこにも出てこない。飲んだ量もちがう。BBでは「少しのおつまみ」になっているが、鮨店店主は巻き物を供したと言っている。あたかも空きっ腹に酔いが回ったと言わんばかりだが、実は1軒目で巨大串焼き5本叩きキュウリもつ煮を胃袋に入れ、酒も大量に飲んでいた。記事を読んだ読者がどうして想像できようか。友人の陳述書によれば伊藤氏は「すごい勢いで食べる」らしい。ラジオ番組、田村淳のNewsCLUB(2020.8.1)にご出演の折には「私けっこう大食いなんですけど」と仰った。伊藤さんはデザートに握りが食べたかったんですね。

>「・・・ベッドの上に彼のノートパソコンが開かれたままだったのも覚えているし・・・」

あれ?カメラ機能の無かったモバイルPCは棚の上ですよ。初期の設定はベッドの上だった(笑)山口氏がゲロを洗い落し、バスルームのカーテンレールに掛けたブラウス(実はチュニック)も、いつの間にか入口のドアノブというありえない位置に変わっていた。ネットでは一時テレポーション、瞬間移動と話題になった。

>一緒に仕事をしようという話だったのに、どういうつもりで、どういう神経でこんなことをするのか。しかもコンドームも付けないで、妊娠だって病気だってあるだろうし、何を考えているのか。

英語で言った文言もちがう。BBでは「それなら、これから一緒に仕事をしようという人間に、なぜこんなことをするのか。避妊もしないでもし妊娠したらどうするのか。病気になったらどうするのか」(P52)
一方の、山口氏の証言では以下。
「I fucked without contraceptives.」(避妊しないでやっちゃったわ)急に英語で大声を出し、しかもfuckedというあまり上品でない単語を使ったので、私は違和感を覚えましたが、あなたがすぐに日本語に戻ったので、特に気にしませんでした。」(月刊hanada2018.12.18)

>ごめん。君のことが本当に好きになってしまって。早くワシントンに連れていきたい。7時にチェックアウトをして空港に向かうので、シャワーを浴びたら一緒に薬局でピルを買いましょう。

この発言は山口氏が全否定しているもの。日本の薬局でピルを買えると勘違い?むしろこれは海外暮らしの長い奔放な女性の発想だ。著書にある「一緒にシャワーを浴びて行こう」がない。このエロさは聞いていたら記者が書き落とす筈はないから、書籍で書き加えらえたのだろう。土台アラームかけた5AMに暴力的なレイプをして一緒にシャワー浴びて、パンツを隠して・・・ちんたらやってる余裕はなかろう。

>下着だけでもお土産で持って帰ってもいいかな。いつもは強気なのに困った時は子供みたいで可愛いね。

これも山口氏は全否定している。ここでは「デキる女」がない。これも著書の段階でちゃっかり加筆したらしい。山口氏は「デキる女と思ったことはない」と証言していたが(笑) 

>『準強姦』の逮捕状が発付されました。

膝のケガこそまだないが、新潮には乳首の出血や後に殺されるかと思ったと著した「そのまますごい勢いでベッドに顔と身体を押さえつけられ」の記述はすでにある。なのに「準強姦」はおかしいと記者は思わなかったのか。目覚めてからの「強姦致傷」は、後からつけ加えた小道具だと考えるのが自然だ。

>「ありえない。(山口氏の立場に)関係なく、事件の中身として、(逮捕は必要ないと)私が決裁した。(捜査の中止については)指揮として当然だと思います。自分として判断した覚えがあります。事件が最後にどう評価を受けているかを見てもらえば……」

かっこ内は新潮による補完だ。中村格氏が決裁したのは本当に(逮捕は必要ない)なのか?(捜査の中止については)なのか? 現に捜査は中止されず継続したというのに。これについては権藤しまさんがnoteで一連の精緻な検証をなさっている。

>鹿児島県警本部長や首相秘書官を歴任した小野次郎前参院議員は、「準強姦事件の逮捕は管轄の署長の判断で行なわれるものだから、刑事部長がそこに口を挟むというのは異例だと言わざるをえませんね」と首を傾げるばかり

専門家に言わせれば信憑性は増すだろう。読者もこの一件は怪しいと思い込むだろう。けれども中村格氏の判断は、「自称被害者と癒着しまくり、担当外れた後も個人的に会いたいなどと連絡をとり、そのくせICレコーダーで録音までされていたマヌケな警部補の捜査を高輪署から取り上げて正常化したもの」ととらえる発想はないのか。疑うのも結構だが、少なくとも官邸介入を騒ぐ人たちが、この選択肢を排除できるのが不思議でならない。清水潔氏や新潮は国家権力たる高輪署の腐敗をガンスルーするのだ。

>被害者をサポートする法案の整備も必要だと考えています

重箱の隅で申し訳けないが法案の整備ではなく法整備です。新潮はジャーナリスト様の原稿を校正したらんかい。

まとめ

週刊新潮おそるべし!なんとなんと初報からクダクダではないか!なのに刷り込み力はハンパなし。北口弁護士は一審で、BBは”その内容を精査すると、随所で「虚構・欺罔」による「虚偽」と断定できる事実に基づく「悪質な脚色」が施されている”と指摘した。BBの虚偽に先鞭をつけたのが新潮の虚報なのだ。

New York Timesは2017.12.29付で山口敬之氏を顔写真とともに一面で大々的に報じた。

コメント 2020-08-03 174214

記事の中で登場しているのが週刊新潮の田中敦記者である。

Not long after Ms. Ito went public with her allegations, a Japanese journalist, Atsushi Tanaka, confronted a top Tokyo police official about the case.

The official, Itaru Nakamura, a former aide to Mr. Abe’s chief cabinet secretary, confirmed that investigators were prepared to arrest Mr. Yamaguchi — and that he had stopped them, Mr. Tanaka reported in Shukan Shincho, a weekly newsmagazine.

田中敦記者は、(間違いなく)モトコ・リッチ氏経由で曖昧な事実を世界にばら撒いてくれた。よほど嬉しかったのだろう、2018年1月18日迎春増大号では「ついに「NYタイムズ」が1面で報道!」と特集を組んだ。盛大な逆輸入である。

初報の後も週刊新潮は5月25日号、6月8日号、6月15日号・・・と山口氏に丁寧な取材をすることなく立て続けに本件を報じ、今日までに確認できただけでも23回も一方的な記事を吐き出し続けた!デイリー新潮(デジタル版)では更に頻繁に。私が本記事を読んだのは幸いにも随分後の今年に入ってからだ。もしもこの記事をリアルタイムで読み、直後に佳人の泣き顔を見せられていたら・・・騙されなかった自信は正直ない。それほど強力で畳みかけるような刷り込みである。

記者はなぜこのような偏った記事を書いたのか。そういえば週刊新潮のデスクは獄中死刑囚・木嶋香苗とアクリル板越しに結婚したのだった!これこそどっひゃ~である。田中敦記者も魔性にまんまと篭絡されたか。密かに情を通じて、このようないいかげんな記事を書いたのだろうか。新潮社はそういう社員に事欠かないのかもしれない。

記事の中で正しいのは次の部分だけだ。山口氏は、”安倍政権の枢要どころかど真ん中と極めて近く、彼らが話す内容を綴ることができる人物"だった。氏の著書『総理』を読めば、現役要人たちの息使いまで聞こえてくる。この位置からの報道はジャーナリズムの中でも彼だけであった。このような特殊な情報は総理支持者ばかりでなく反対派にとっても貴重な情報源となったであろうに。

かけがえのないジャーナリストを週刊新潮はちゃらんぽらんな思い込みの記事によって社会的に葬ったのである。そして延々と人権を侵害し続け、全世界への拡散を助けた。その社会的責任はすこぶる重い。週刊新潮は万死に値しよう。


#週刊新潮の捏造記事を糾弾します