見出し画像

杉田議員イイネ裁判レポート(その1)

イイネで訴訟?ほんとうに下らない。国会議員をこんなことに駆り出すとは!何と情けないことよ。もちろん筆者から見て杉田議員に落ち度はなく、訴えるほうがバカみたい。しかも原告の伊藤詩織氏はメインの裁判でボロボロと虚偽が明らかになっている最中というのに。この訴訟は恫喝というより、あからさまなイヤガラセだ。伊藤氏代理人の佃克彦弁護士と西廣陽子弁護士もイイネの意味を巡って真面目くさって議論するとは、こんな弁護をするために難関の司法試験を突破したのではなかろうに。

■ 文書

訴額は220万円。第1回口頭弁論が令和2年9月14日に開かれたあと、弁論準備手続きが次のとおり開かれており、これまでに原告と被告は以下の書面を交換している。(原告:伊藤詩織 被告:杉田水脈)

第1回弁論準備手続き:令和2年12月25日
第2回弁論準備手続き:令和3年2月17日
第3回弁論準備手続き:令和3年3月26日
第4回弁論準備手続き:令和3年5月13日

原告第1準備書面(全9頁) 2020年9月14日
原告第2準備書面(全6頁) 2020年12月25日
求釈明申立書(全4頁) 2021年2月17日
原告第3準備書面(全26頁) 2021年3月26日

被告答弁書(全1頁) 令和2年10月14日
被告準備書面(1)(全8頁) 令和2年12月25日
被告準備書面(2)(全4頁) 令和3年1月29日
被告準備書面(3)(全15頁) 令和3年5月13日

*荻上チキ氏も「イイネとは何か」を解説する趣旨の陳述書を原告側から提出している。

■ 議論の概要

この裁判は周知のとおり、杉田議員がTwitter上で押したイイネが違法かどうかを争う裁判だ。イイネ機能とはどんなものか、イイネが意味するものとは・・・等々、実にX*△!X*$な議論が続いている。はすみ裁判でのRT者と同様に杉田氏も「イイネは賛同の意味だけではない」と反論しており、原告側は「ではどういうつもりで押したのか述べよ」とか「国会議員たる者が」などと問い返しながら延々議論が続いている。ほんとうにX*△!X*$だ。

杉田側の反論の趣旨は3点。

1.  イイネは賛同の意味だけではない
2. イイネは伊藤詩織氏に向けられたものではない
3. 仮に賛同だったとして、またイイネしたツイートに違法性があるとして、ツイ主とイイネした人の責任は同じではない

詳細は以下のとおり。

(1) ・・・(略)しかしながら、ツイートに「いいね」をする行為は、いわゆるブックマーク機能として行うことも多く、必ずしも当該ツイートの言論に好感を表明するために行うとは限らない。すなわち、日々、膨大な数のツイートがなされるなかで、当該ツイートを後から読みたいと考えた場合には、「いいね」を押して自身の「いいね」一覧ページに表示されるようにしておくことにより、検索の便宜を図ることができる。
 また、投稿者に対してツイートを閲覧したことを伝える趣旨で「いいね」をすることもある。
 したがって、「いいね」は、他人のツイートに対する好意的な気持ちを示す為に用いられるものであるとは限らないし、各ツイートに「いいね」を押すことは当該ツイートの言論に好感を宣明したものであるとも言えない。
(2) 原告に向けられた行為ではないこと
 原告は名誉感情侵害を問題としているのであるから、社会的評価の低下を問題とする名誉毀損とは異なり、不法行為は原告に向けられたものと評価されるものでなければならない
 「いいね」は当該ツイートに対する行為であって、直接的にも間接的にも原告に向けられた行為と評価することはできず、原告の名誉感情を侵害する行為と評価されるものではない。
(3) 小括
 以上より、「いいね」をする行為は、「好感を宣明する行為ではないし、原告に向けられた行為ではないので、原告の名誉感情を侵害する行為ではない。
 百歩譲って、「いいね」をする行為によって原告の名誉感情が侵害され得るとしても、「社会通念上許される限度」ないし「社会生活上の受忍限度」を超えるものではないことは明白である。なぜならば、「いいね」は前述のとおり多義的である上、原告に向けられたものではないから、社会通念上原告の名誉感情を侵害する行為であるとは到底考えられないし、誰が「いいね」をしたかについて社会生活上目に入るわけではなく詮索して始めて知り得るものであって「社会生活上の受忍限度」を超えるとも到底言えないからである。
3 被告が当該ツイートの投稿者と同じ責任を負うことはないことについて(二重の仮定に基づく予備的主張)

 仮定として「いいね」が好意や賛同を表すものと受け取られるとしても(第1の仮定)、被告はあくまでも感想を述べたに過ぎない。更なる仮定として当該ツイッターの投稿者が不法行為責任を負うとしても(第2の仮定)、感想を述べたにすぎない被告が同じ責任を負うわけではない。
 なぜならば、不法行為責任を負う投稿に「いいね」をする行為について不法行為責任が生じるとすれば、多数の不法行為者が発生することになるが、社会はそれを想定しておらず、「社会通念上許される限度」を超えるとは到底言えないからである。また、誰が「いいね」をしたかについて社会生活上の「受忍限度」を超えるとも到底言えないからである。

被告側は、こんなんで違法にされたら世の中違法だらけやないかい!と言っている。ミクシィの判例は参考になる。

 この点、ミクシィの「イイネ」機能に関する判断であるが、東京地裁は「ミクシィ上のイイネ機能は、ミクシィ上のつぶやきなどの発言に対して、賛同の意を示すものにとどまり、上記発言と同視することはできないから、仮に上記つぶやきなどが名誉を毀損するなどの内容であったとしても、このつぶやきに対して「イイネ!」のタグをクリックしたということをもって、いまだそのつぶやきなどの内容について不法行為責任を負うことはない」旨判示している(平成26年3月20日東京地裁判決、乙1)。

ムカつく内容に対して、これまたムカつく人間がイイネしていたら気分は悪いという所までは理解できるし、筆者も同じ気分になる(笑)だが常識的に考えて不法行為まで問えるとは思わない。それに、わざわざ相手サイトにまで行って、どれどれ~とあら探ししない限り分からぬことだ。そうして見つけて「わたしは傷ついた」ですか?あからさまに相手を嵌めてやろうという意図が垣間見えるのみだ。

■ 所感

イイネで訴訟とは、当たり屋でないなら、まるで「肩が触れた」とか「ガンつけた」という難癖のよう。

大澤昇平氏とともに杉田議員提訴を報告した会見の当初より、この訴訟はプロパガンダのアドバルーンという印象を受けてきた。つまり勝敗は実は眼中になく、目的は話題作りの「示威行為」だということ。意図的に露出の機会を創り、世間に向けて「同じ目に遭いたくなかったら黙ってろ」と脅しをかけ、当の被告に対しては露骨なイヤガラセ。訴状をみても「生産性」とか「女性は嘘をつく」など切り取りの偏見だらけだ。土台、原告の ”レイプ被害” が根底から崩れかけている今に至って、どう訴訟を維持するというのか。たかだかイイネで名誉感情ガーと文句を言っている当の原告が、比較にならない巨大な規模の「名誉毀損」「名誉感情侵害」、加えて「プライバシー侵害」まで問われているというのに。

この裁判の陳述で原告はこのように述べている。「事件当時、私は酩酊状態で意識、記憶がないまま性行為をされたため、私自身が被害の証明をすることはできません。」。こう言い放った原告は、自らが全世界に吹聴してきた "薬物暴力レイプ” が名誉毀損だと認めたも同然だ。そのような人物が、「イイネ押しだだろ!グラァ!」と国会議員に文句を言っているのだ。

特定勢力にとって、いくら杉田議員が目障りだからといって、こんなことで煩わせないでほしい。リソースの無駄使いをしないで下さい。国会議員をフリーハンドで国のために働かせなさい。濫訴で民主主義を壊すな。法廷をイヤガラセに使うな。議員の主張に異議あるなら正々堂々と反論しなさい。

さて。では、杉田議員はどんなツイートに具体的にイイネしたというのか。訴訟そのものは殆ど因縁つけとはいいながら、個々のツイートは我々にとって非常に重要な事柄を示唆している。詳細は次回。


*杉田水脈議員は写真のヘアスタイルがいちばん似合うとおもう