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最低の判決 (その1)

- 一審判決の問題点 -

(草稿)で止まっている「トンデモ判決の原因を考察する」に加筆していたら、3部作と長くなりました。第一回目。まずは判決を一般人のふつうの読み方と理解で評します。

総論

元来、第三者に判定不可能な物証なき密室の出来事を「証言の一貫性」で以って裁くことに無理がある。言葉だけに頼るなら、後から何とでも被害を捏造できることになるし、台本を諳んじた者勝ちになってしまう。またそれは、特定人物を計画的に陥れようとする策謀に対して、犯罪性がない為に曖昧にしか記憶していない者が負けることを意味する。

「同意の有無」は欧州の一部で刑法に組み込まれており、村田智子弁護士らが日本で次期刑法改正の主要な論点とするものだ。また「同意なき性交」と聞いて「レイプ(刑事上の犯罪)」と捉える者は本邦にも存在する。かように「同意の有無」は”実質的に”刑事事件と近接するものである上に、原告側弁護団に至っては明瞭に「犯罪」との認識に立つ事項である。かくも重大な案件を以下に述べる裁判官の非常識なものさしで判定したことに一審判決の重大な問題性がある。この非常識さは、民事にも裁判員制度を導入すべきではないかと思われるほどだ。

また、「名誉棄損」を「公共性」で免責するのであれば、本件には功と罪の両面がある。性被害者が名乗り出る行為や性犯罪の捜査の問題点を訴え、デートレイプドラッグやアフターピルを世に知らしめた行為については一定の公益性が認められる一方で、証明できなかった「強姦致傷」の内容を書籍で出版し、刑事不起訴の段階で被告の実名とともに、全世界に公表する公表行為や、「後出しじゃんけん」が一般社会に広げた波紋、「公」に向けて自身の正当性を書籍で訴えた反面、それに呼応して生じた世間の疑念には一切公開で答えない行動様式は「公益性」に明瞭に反するものであり、原告の公表行為には「公共性」だけで肯定することのできない両義性がある。

原告の著書『Black Box』には、ゆうに100箇所を超える疑惑が指摘されていたのであり、「名誉棄損」を全面的に却下した鈴木判決が元で爾後、社会に生じた、訴訟の連鎖両陣営支援者間の対立という混乱を「公共性」の名の下に容認することは到底できず、判決は不当であった。

鈴木判決は、ベッドA/Bという重箱の隅に固執して全体像を見失った「結論ありき」の判決であり、ベッドは些事を無理やりほじくった因縁の誹りを免れまい。判決を導いた思考とは、はじめに結論があり被告側の些細な瑕疵を意図的に探し出して針小棒大に糾弾するとともに、原告側の言い分は一方的になぞって肯定し、最後に「名誉棄損」の請求に対して屁理屈で却下したものと思われる。

以下では、判決文を引用しながら個別にトンデモぶりを指摘してゆく。筆者のコメントは🔶にて。

各論

原告の供述について 

原告は、本件串焼き店では小グラスのビールを2杯、グラスワインを1杯ないし2杯の飲み、本件寿司屋では日本酒を少なくとも2合飲んだこと、本件寿司屋においてトイレに行った際、蓋をした便器に腰かけ、給水タンクに頭をもたせかけた状態で意識を失ったこと、トイレから戻った後は同じ内容を繰り返し話す状態であったこと、本件寿司屋を出た際に千鳥足であり、時折、並木に手をついて休む様子であったこと、タクシーの車内において嘔吐したこと、タクシーが本件ホテルの車止めに到着し、停車してから2分以上経過した後、被告に引きずられるようにしてドア側に移動して降車したこと、ホテルの部屋に向かう間、足元がふらついており、隣を歩く被告に体を預け、被告に支えられる状態にあったことが認められる。これらの事実からすると、原告は本件寿司店を出た時点で相当量のアルコールを摂取し、強度の酩酊状態にあったものと認められ、このことは、本件寿司店においてトイレに入った後、本件居室で目を覚ますまでの記憶がないという原告の供述内容と整合的である。

🔶ゲロや千鳥足の酔っぱらい(a)が、朝5時頃に目を覚ますまで記憶がない(b)。aとbの2つの事象は必ずしも整合的に繋がらない。
🔶「記憶がない」と「意識がない」は別のことである。
🔶寿司店のトイレには給水タンクはなかった。

前記1(3)イないしエ、(4)アのとおり、原告は居室においてシャワーを浴びることなく、4月4日午前5時50分に本件ホテルを出てタクシーで帰宅したことが認められるところ、これらの原告の行動は、原告が被告との間で合意の下に本件行為に及んだ後の行動としては、不自然に性急であり、本件ホテルから一刻も早く立ち去ろうとするための行動であったとみるのが自然である。

🔶世間一般で、宿泊客でない女性が不倫の翌朝、後ろめたさでそそくさと現場を後にするのに不自然な点はない。その事は「合意の有無」とは無関係である。完全同意と完全不同意の間には無限のグラデーションが存在するのであり、それが判定の難しさである。

原告は、同日にイーク表参道を受診してアフターピルの処方を受けているが、このことは、避妊することなく行われた本件行為が、原告の予期しないものであったことを裏付ける事情といえる。

🔶避妊具なしで性行為をしてアフターピルを服用する全てのケースが、予期しない性行為であるとまでは断定できいないし、たとえ予期しなかったとしてもレイプ被害者とは言えない。避妊具がなかったことは(原告が薬物という”計画性”を疑ったのとは裏腹に)被告の計画性の無さを証明する判断材料とみなすことも出来る。

原告は、同月7日及び8日に友人2名に本件行為に係る事実を告げて相談したほか、同月9日には原宿警察署において本件行為に係る事実を申告して相談したことが認められる。原告が、本件行為に近接した時期に、本件行為につき合意に基づかずに行われた性交渉であると周囲に訴え、捜査機関に申告していた点は、本件行為が原告の意思に反して行われたものであることを裏付けるものといえる。

🔶友人に相談してから「妊娠」の脅しが始まっている。すぐに警察に届け出なかった不自然。日を置いて捜査機関に申告したのは友人の手前か、または”保険”という想定も可能だ。(保険とは、警察に届け出ただけでは公にならないし、動向を見て取り下げも可能)

この捜査機関への申告については、被告がTBSワシントン支局長を解任されたのは同月23日であり、原告が本件行為に係る事実を警察に申告した同月9日の時点では、被告は同支局長として原告の就職のあっせんを期待し得る立場にあったものであるから、原告があえて虚偽の申告をする動機は見当たらない。

🔶警察に届けても公開されるとは限らない。被害届は「脅し」の材料になり得る。脅せば欲しいものが手に入る段階ということだ。

以上の点からすると、本件寿司店において二度目にトイレに入った後、本件居室で意識が戻るまでの記憶がなく意識が戻った際、被告による本件行為が行われていたとする原告の供述は、本件行為前の原告の酩酊状態や本件行為後の原告の行動等と整合するものである。

🔶論理の飛躍。

被告の供述について

本件寿司店と恵比寿駅は徒歩わずか5分程度の距離であることを踏まえると、本件寿司店を出た時点で、被告が自らとともに原告をタクシーに乗車させた点について合理的な理由は認めがたい。

🔶原告は先に奥の席に乗り込んでいる。車内では「寿司が美味しかった」などと会話する余裕もあった。そこそこ酔った千鳥足の友人を途中まで同乗させ、途中の駅で降ろす・・・これは飲み会のあと、一般社会で日常的に行われている。問題は駅が近づいた時に降ろせる状態だったかどうかだけだ。

「その前に駅で降ろしてください。」と述べた原告に対し、「まだ仕事の話があるから、何もしないから。」などと述べて、原告をホテルに同行させた事実が認められる。

🔶これはタクシー運転手の陳述だが、ゲロの後と思われる。「(自分には)まだ仕事がある」の間違いでも不思議はない。運転手は会話を聞いた時点でゲロに気付いていない。運転手がゲロに気付いたのは2人を降ろして車を出してからしばらくしてからの事だと証言している。

被告は原告が当時、神奈川に居住していたと思っていた旨供述するが(被告16頁)、原告はあらかじめ被告に対し原宿に居住している事実を告げていたと供述していること(甲37、原告85頁)に照らし、信用することができず、この点を措いても、本件寿司店での飲食を終え、帰宅のため原告をタクシーに同乗させた被告が、原告の帰宅先を尋ねていないこと自体不自然というほかない。

🔶被告は「原宿とは聞いていない」と言い、原告は「原宿と告げた」と言う。履歴書の住所は神奈川である。両者の言い分のうち、なぜ原告の言い分のみを信用し、(履歴書という証拠まである)被告の言い分を信用することができないのか。甚だ理解不能である。いずれにしても「言った/言わない」である。また、途中で降ろすつもりであれば、それ以上、帰宅先を尋ねる必要もなかろう。原宿でも神奈川でも、最寄り駅(目黒)で降ろせる状態だったなら同じことだ。問題は原告が、”降ろせない”状態に変化したこと。

さらに、被告は、午前0時までに米国の政治の動向を確認する必要があったため、やむを得ず原告をホテルに連れて行くこととしたなどと供述するが、前記1(4)サのとおり、当時、被告はTBSから出社に及ばずとの通知を受けていたのであるから、米国の政治の動向を確認することが職務上必須であったとも認め難く、この点においても、被告の供述はにわかに信用することができない。

🔶筆者が最も衝撃を受けたのはこのくだり。単なる自宅待機であって解雇ではないし、仮に解雇でもプロフェッショナルな業界人が世界の動向をリアルタイムに知ろうとするのは当然すぎるほど当然だ!お役所感覚に愕然とする。こんな非常識な感覚で「合意の有無」など判定されてはたまらない。

被告は、原告が午前2時頃に起きた際、原告は「私は、何でここにいるんでしょうか」と述べ、就職活動について自分が不合格であるかを何度も尋ねており、酔っている様子は見られなかったと供述する(乙3、被告83・84頁)。しかし、原告のこの発言自体、原告が本件居室に入室することにつき同意をしていないことの証左というべきであるし、

🔶「何でここにいるんでしょうか」を意識が戻った証左ととらえずに、入室不同意の証左ととらえる裁判官。

一人では脱衣もままならない状態であったという原告が、約2時間という短時間で、酔った様子が見られないまでに回復したとする点についても疑念を抱かざるを得ない。

🔶ネットには実証例もある。これは控訴審で提出された数々の書証により覆るだろう。

そして、被告の供述する事実経過は、本件行為後、原告が本件居室でシャワーを浴びることもなく、早朝に、被告を残して一人で本件ホテルを出たこととも整合しない。

🔶またシャワー。

さらに、本件行為に至る経緯についても、前記1(4)コに認定したとおり、被告は4月18日、原告に対して送信したメールにおいて、「あなたは唐突にトイレに立って、戻ってきて私の寝ていたベッドに入ってきました。」、「あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった。」などと記載して、原告の方から被告の寝ていたベッド、すなわち窓側のベッドに入ってきたと説明していたことが認められるが、同メールの内容は、原告に呼ばれたために被告が窓側のベッドから原告の寝ている入り口側のベッドに移動したとする被告の供述内容と矛盾するものであり、このような供述の変遷について合理的理由は認め難い。

🔶ベッドA/Bである。メールを確認したなら、問題の一通は被告が「妊娠」で脅されている最中に出されたものと分かる筈だ。ありえない設定に気が動転して咄嗟に出したメールの文面に「客観性」や「完全性」を求めるのは理不尽だ。何とか被告の落度を探そうと重箱の隅をつつくようなもの。ベッドについては別稿を参照して頂きたい。

しかし、被告の供述を前提にすると、原告は、それまで寝ていた入り口側のベッドから唐突に立ってトイレへ行き、戻ってきた後、もともと寝ていた入り口側のベッドに戻ったに過ぎないことになり、本件行為のきっかけについて説明するという上記メールの趣旨からして明らかに不自然というべきであるし、「私の寝ていたベッドに入ってきた」とする上記メールの文理とも整合せず、被告の供述は不合理というほかない。

🔶木を見て森を見ない判決である。裁判長はこのメールが発信された情況は確認したのか。メールの意図は「襲われた」という相手の言い分に抗して「そうではなく、貴女から誘ってきたのだ」と、前状を根底から打ち消す目的で出されたものである。どちらのベッドかというのは些事に過ぎない。また、その点を突くのであれば、4/19に不妊が確認されていながら「妊娠」で脅している行為を看過する理由が見当たらない。

以上のとおり、被告の供述は、本件行為の直接の原因となった直近の原告の言動という核心部分について不合理に変遷しており、その信用性は重大な疑念があるといわざるを得ない。

🔶ベッドよりも重要な核心部分は「妊娠」である。

原告の供述の信用性に関する被告の主張について

イーク表参道のカルテには、避妊具が破れたなどと客観的事実に反する記載がある点で、記載内容の正確性に疑義がある。もとより、アフターピルの処方のみを目的とする診療で、患者から詳細な聴取がされていないとしても不自然とはいえないこと、原告がイーク表参道を受診したのは本件行為から間もない時点であり、アフターピルの処方の対象となる性交渉の詳細を述べることに抵抗を感じていたと考えられることからすると、原告の曖昧な申告に基づき、カルテに不正確な記載がなされたとの疑念も払拭することができない。そうすると、イーク表参道のカルテの記載内容に依拠して、原告が4月4日午前2時ないし3時頃に意識があったと認めているということはできない。

🔶アフターピルの服用には時刻が重要となる。原因をぼやかす事があっても時刻まで偽る必要はない!時間は、最も偽ってはならないファクターである。

ウ  被告は、原告と被告が本件ホテルの部屋に到着したのは午後11時頃であるにもかかわらず、本件行為があったのは翌日午前5時頃であることになる点で、原告の供述は不合理であると主張する。
しかし、原告は、被告が宿泊する部屋に入った時点で、嘔吐して吐瀉物が髪や衣服に付着した状態となっていたと推測されることからすると、被告が直ちに原告との性交渉に及ぶ状況にはなかったとしても不自然であるとまではいえない。また、原告の供述によれば遅くとも午前5時には性交渉が行われていたとのことであり、それ以前については記憶がなく、それ以前に性交渉がいつ行われていたのかについては不明であることを前提とするものと解されることからすると、原告の供述が不合理であるということはできない

🔶刑事訴追に始まる本件は薬物と盗撮疑惑がスタートだ。薬物疑惑は甲第19号証として法廷に提出された書籍『Black Box』の要諦でもある。つまり原告は高い蓋然性で薬物の使用を疑っているが、薬物が相手に気づかれないように犯行を行うためのものであることを考慮するならば、犯行時刻が朝5時という(相手が意識を取り戻す)時間帯であることが不合理である。カルテには2-3時と記載されており、5時は後付けと考えるほうが自然だ。なぜ2-3時では不都合なのか。それは”強姦魔”の元をすぐに立ち去らず一定時間同室に居たことになり、レイプそのものの設定が崩れるからである。それは薬物がなければ勝手に酔っ払ったこととなり世間の同情が得られないのと同じ理屈だ。朝5時の犯行は原告が朝ホテルを立ち去る動画とも全く整合しない。

エ  被告は、被告が宿泊する部屋のバスルームには電話機が設置されており、原告が電話機を使用して外部への連絡をしなかったことは、原告が供述する当時の状況と矛盾すると主張する。
しかし、原告の供述によれば、原告がバスルームに入ったのは、目が覚めて被告から性交渉をされていることに気づいた直後であり、動揺して自らが置かれている状況が把握できず、冷静な判断ができない状態であったことは容易に推察されるから、電話機を使用して、外部への連絡をしなかったことが不自然であるとはいえない

🔶友人Fにはスマホを探したが見つからなかったと伝えており、Fはそのよに陳述している。冷静な判断ができない人が避妊具をつけていない陰茎を確認する余裕があったとは、一般人の普通の読み方と理解ではとうてい考えられない。

オ  被告は、原告が被告から渡されたTシャツを着用したことは、被告が原告に対し、同意なく性交渉を行ったという原告の供述内容と整合しないと主張する。
しかし、原告の供述によれば、原告の衣服を探したのは、本件行為の直後であり、原告が動揺し、一刻も早くその場を離れたいとの心理状態であったことが合理的に推察されるところ、同時点において、原告の着用していたブラウスが濡れたままであり、着用できない状態であったことからすると、原告が被告から差し出されたTシャツをとっさに受け取り、着用したことが不自然であるということはできない

🔶あり得ない。まず生理的に無理だ。ポリ製のブラウスが原告の陳述どおり「びしょびしょ」であるわけはないし、ブラウスの場所も入口のドアノブではない。半乾きで着ようと思えば着れる状態にあり、かつ、原告はキャミソール、カーディガン、ベルト付きのコートまである。この件の「求釈明」に対する原告弁護団の「コートにはボタンがない」とか「コートは素肌に着るものではない(???)」とか、木で鼻をくくったような回答。裁判長も読んだのだね?

カ 被告は、原告が4月6日に被告が無事にワシントンに戻ったかを確認するとともに、ビザに係る対応の検討結果を尋ねるメールを送ったことは、本件行為があったことを受け入れたうえで就職活動に係る協力を求める行為であり、本件行為が原告の同意に基づくものであったことを裏付けるから、原告の供述には信用性がないと主張する。
しかし、同意のない性交渉をされた者が、その事実をにわかに受け入れられず、それ以前の日常生活と変わらない振る舞いをすることは十分にあり得るところであり、原告の上記メールも、被告と性交渉を行ったという事実を受け入れられず、従前の就職活動に係るやり取りの延長として送られたものとみて不自然ではない。そうすると、原告が上記メールを送ったことにより、本件行為が原告の同意に基づくものであったことが確認されるということはできず、原告の供述の信用性に影響を及ぼすものとは認められない

🔶裁判長は反証材料を吟味することなく、「正常化行動」としてまるまる原告の言い分を認めてしまっている。瀬木著『ニッポンの裁判』によれば、予め勝たせる側が決まっている場合、弁護士作成の準備書面を丸写しで楽をする裁判官が増えているそうだ。

キ (略)しかし、そもそも原告は法律の専門家ではなく準強姦と強姦との区別が曖昧であった可能性が十分に考えられる上、原告が意識を失った状態で被告から性交渉をされた点をとらえて、「準強姦」、原告が意識を取り戻した状態で被告から体を押さえつけられた点を捉えて「強姦」とそれぞれ表現したこととしても何ら不自然ではない。

🔶原告はトイレまでを「準強姦」、覚醒してからを「強姦」とそれぞれ表現したのではなく、内容は「強姦致傷」でありながら、訴えは当初より「準強姦」であった事が問題なのだ。出血や暴行は後付けである可能性を強く示唆する。

ク 以上によれば、原告の供述の信用性に関する被告の主張はいずれも採用することができない。そのほか、被告は、原告には性交渉の動機がある一方で被告にはその動機がないなどといった事情を主張するが、いずれも原告の供述の信用性に影響を及ぼすものではなく、採用することができない。

🔶理解不能。

本件行為についての合意の有無

ア 前記1(2)オ、カに認定したタクシー内における原告と被告のやり取り、タクシー降車時及びタクシーを降車してから本件居室に入室するまでの原告の状況からすれば、原告は、当時の記憶は喪失しているものの、原告が本件居室に被告と共に入室したことが、原告の意思に基づくものであったとは認められない。 

🔶酩酊状態でも原告に意識はあった。そのような原告が入室に不同意だったと認定するには根拠として弱い。ましてや入室の同意は性行為の同意とは直結しない。もしも不同意であれば、床にへたり込んでも入室を拒否するものではないか。被告は、原告が途中「大丈夫です」と言ったと証言しており、ロビーの長い距離を引きずられても抱えられてもおらず、被告に付き添われて共に歩く。「これ(綺麗にするの~)を口実に逃げようとしているように見えた」というドアマンの陳述にもあるように、ここにあるのは、NOの意思表示がはっきりできない女性像であり、女性に対する先入観が伺われる。このような女性像は、実名での公表行為と矛盾する。

次に、両当事者の供述についてみると、前記のとおり、本件居室内における本件行為に関する被告の供述には、重要な部分において不合理な変遷が見られ、客観的な事情と整合しない点も複数存するなど、その信用性に疑念が残るものであるのに対し、本件行為時に意識を回復した後の事実に関する原告の供述は、客観的な事情や本件行為後の行動と整合するものであり、供述の重要部分に変遷が認められないことからすると、被告の供述と比較しても相対的に信用性が高いものと認められる。

🔶重要な部分とは何か。”意識を回復した”原告は、「強姦致傷」の内容を公表していながら、「準強姦」しか訴えない。この事は、これ以上ないほどの「不合理な変遷」である。

以上のとおり、本件行為に至る原因となった本件居室への入室が原告の意思に基づくものではなかったと認められることに加え、信用性が相対的に高いと認められる原告の供述によれば、被告が、酩酊状態にあって意識のない原告に対し、原告の合意のないまま本件行為に及んだ事実、及び原告が意識を回復して性行為を拒絶した後も原告の体を押さえ付けて性行為を継続しようとした事実を認めることができる

🔶再び。入室の同意は性交の同意と直結しない。原告の供述は相対的に信用性が高くない。被告側の変遷(というより記憶の曖昧さ)は・ベッドの記述や・鞄はどちらが持っていたか・原告はシャワーを浴びたか否かの程度である(シャワーを浴びてないのも原告の一方的な供述にすぎない)。一方の原告は・ドラッグは証明できず・盗撮も思い込みで・怪我も証明できず・カルテの医師は揃いも揃っていいかげんで・不妊を知りつつ脅し続けるという、より犯罪性の高いもの。その上判決後の会見では・警察の囮捜査の依頼と強弁し・法務省と外務省を混同する副検事の叔父がいるという。どちらが相対的に信用性が高いかは、もはや世間の知る所である。

イ 前記1(4)ツに認定したとおり、原告は、自らが体験した本件行為及びその後の経緯を明らかにし、広く社会で議論することが、性犯罪の被害者を取り巻く法的又は社会的状況の改善につながるとして、別紙記述目録1ないし3に係る公表をしたことが認められる。そうすると、別紙記述目録1ないし3は、公共の利害に係る事実につき、専ら公益を図る目的で表現されたものと認めるのが相当である。

🔶すでに指摘したとおり、功罪の「罪」を黙認すべきではないし、「公益」の意識がある者なら、法廷外で自身に不都合な言説に次々と訴訟を提起する代わりに、まずは議論に応じ、「説明責任」という社会的責任を果たそうとするものではないか。

ウ 前記判示のとおり、被告は、平成27年4月4日早朝、意識のない状態の原告の陰部に避妊具を着けていない陰茎を挿入させ、原告が意識を回復し拒絶した後も、体を押さえ付けて性交渉を継続しようとしたことが認められる。また、証拠(原告9・14・15頁)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告から本件行為をされた際に、乳首や腕、右腰を負傷したこと、被告は原告に下着を返す際に、下着だけでも土産として持ち帰りたい、いつもは強気なのに困った時は子供のようで可愛いなどと述べたことが認められる。これらによれば、別紙記述目録1ないし3が摘示する事実は真実であると認められる

🔶証言さえ一貫していれば、見てもないこと、聞いてもないことが認定されるこの恐怖!しかも証言は一貫すらしていないのだ。原告の言いなりに呆れ返る。司法に対する信頼が崩れ去る。

その内容は、一般人の感受性を基準として被告の立場に立った場合に、通常公開を欲しない情報ではある。しかし、前記のとおり、原告が、性犯罪被害者を取り巻く法的又は社会的状況を改善すべく、自らが体験した性的被害として本件行為を公表する行為には、公共性及び公益目的があると認められるところ、同目録記載のメールのやり取りは、前記1(4)に認定したとおり、被告が原告の同意なく、避妊もせずに性行為をしたことから、妊娠を心配する被害者である原告と加害者である被告とのやり取りを公表するものであり、本件行為をめぐって原告と被告との間で主張が対立する中、本件行為が原告の合意の下に行われたとする被告の主張に反論すべく、被告との間の交渉経過や避妊をしなかったことについての被告の言い分を明らかにするためにされたものと認められ、その態様も、相当性を逸脱したものとはいえない。そうすると、原告の上記行為は、社会生活上受忍の限度を超えて被告のプライバシーを侵害するものであるとは認められない
 したがって、原告の本件公表行為のうち、別紙記述目録4の記載に係るものが被告に対するプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成するものとは認められない。

🔶「妊娠を心配する被害者である原告」の部分は書証から虚偽と分かる事項である!「自らが体験した性的被害として本件行為を公表する行為」の部分は、性被害が有ったという結論を前提で語る循環論法である。また、被告の個人名や宿泊施設の固有名詞を公表する必要性が必ずしも有ったとは考えにくい。著書の出版が不起訴決定後、民事判決前である点に鑑みれば、不当にプライバシーを侵害したと見做すべきである。その他、暴行致傷をはじめ、被告側代理人が適示した「薬物」「盗撮」等の重大な誹謗中傷については何ら言及がなく、鈴木昭洋裁判長は黙殺したのである。