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控訴理由書 <要約書面>


令和2年10月30日

 控訴人は、頭書事件につき提出した令和2年2月25日付け控訴理由書及び同年8月31日付け準備書面(3)(控訴人準備書面(3))について、別紙のとおり要約書面を提出する。
 併せて、本件訴訟における略語の使用(一部は用語の使用及びその説明)について別紙略語表のとおり整理する。

       【控訴理由書の要約】


第1 はじめに(1~2頁)

第2 控訴理由について(2~3頁。事案の概要、控訴理由の要旨)


第3 原判決の認定判断の要旨(4~7頁)


第4 本件行為に関する合意の有無についての認定判断の誤り

 本件行為に至る経緯(控訴人と被控訴人の本件居室への入室まで)について
(1)会食前の待ち合わせ時間に関する認定の誤り(7~9頁)
*午後7時30分頃までに落ち合ったとの控訴人の供述が信用できること。
(2)会食中の被控訴人の飲酒状況に関する認定の誤り(9~11頁)
*被控訴人の飲酒量について実際よりも過少に認定した事実誤認があること。
(3)被控訴人の酩酊状態の程度ないし意識状態に関する認定の誤り(12~15頁)
*「強度の酩酊状態」と矛盾する本件寿司店から本件ホテル入構後までの被控訴人の挙動や被控訴人自身の体質(アルコール代謝能力が高い)との矛盾点を無視した事実誤認があること。
(4)控訴人が被控訴人を本件ホテルに連れて行くこととした経緯に関する認定の誤り 
 タクシーに被控訴人を乗車させた経緯について(15~19頁)
*被控訴人をタクシーに同乗させた具体的状況の検討を怠り、「性的意図」について粗雑な予断をもって控訴人の供述を排斥した誤りがあること。 
 タクシー車内での控訴人らの言動に関する認定の誤り(19~21頁)
*「何もしないから」との発言に関する運転手の供述が信用できないこと。  被控訴人の自宅住所の所在に関する控訴人の認識について(21~23頁)
*被控訴人の供述が曖昧であり、また履歴書の記載等から被控訴人の自宅住所を誤解しても不合理でないこと。 
 控訴人が午前0時頃までに米国の政治動向等に関連するメールチェックを行う必要があったことについて(23~26頁)
*原判決の認定が一般的なビジネス習慣、イラン核協議の枠組み合意に関する国際報道、更にはパソコンに電源が入っていた状況に反すること。
(5)本件ホテル到着時から本件居室入室までの被控訴人の歩行等の挙動に関する認定の誤り(26~29頁)
*防犯カメラ映像に照らすと、被控訴人のタクシー内での挙動や本件ホテル構内での歩行状態につき、飲酒酩酊の影響を過大評価した事実誤認があること。

2 本件行為の状況(本件居室への入室後、被控訴人が本件ホテルから退出するまで)について
(1)本件居室への入室後の被控訴人の嘔吐等とその後の意識の回復の状況を的確に認定せず、飲酒による酩酊の影響を過大評価した事実誤認(29~30頁)
*2時間余り後の意識の回復状況に関する原判決の認定には、自力歩行可能な状態、嘔吐の影響を考慮せず飲酒の影響を過大評価した誤りがあること。
(2)被控訴人が午前2時頃に起きた際の発言に関する認定の誤り(29~30頁)
*「私は、何でここにいるんでしょうか。」発言は自己の失態による心理的混乱や当惑を推認させるにとどまり、入室の不同意とは直結しないこと。
(3)被控訴人が本件居室に入室した後、意識を回復するまでに要した時間に関する認定の誤り(31~36頁)
*原判決の認定が、被控訴人の体質(中等度の酒乱行動の遺伝的リスク)、会食時の飲酒状況、嘔吐量による影響、酩酊度の個人差等の具体的検討を怠り、経過時間(約2時間)のみを根拠とした単なる一般論にすぎないこと。
*飲酒酩酊の影響を考慮しても、本件行為時には被控訴人の意識が回復していたとする控訴人の供述の信用性が医学的知見に照らして裏付けられることについては、控訴人準備書面(1)(手塚意見書・乙85の1)で詳述した。
(4)意識を回復した後の被控訴人の言動に関する認定の誤り(26~38頁)
*控訴人の供述と客観的証拠(ミネラルウォーター利用履歴、本件行為前後のメール)との高度の整合性を無視していること。
(5)本件居室内のベッドの位置関係、ベッド間の控訴人と被控訴人の移動経過等と控訴人の供述との整合性に関する認定の誤り(38~41頁)
*「私の寝ていたベッド」の特定に関する細部の相違を供述の重要な部分の変遷と認定したことが『木を見て森を見ない』過誤であること。
(6)イーク表参道のカルテ記載と被控訴人の供述との整合性に関する認定の誤り(42~45頁)
*合意による性交を裏付けるイーク表参道カルテの「coitus〔性交〕4/4 AM2-3時頃」との記載とこれに符号する控訴人の『真実の発露』(上記カルテの入手前の供述)を不当に歪曲した重大な経験則違反があること。
(7)性交の時間帯に関する認定の誤り(45~46頁)
*イーク表参道のカルテ記載を無視した論理的帰結として、午前5時頃に同意なき性行為が行われた旨の被控訴人の供述の合理性評価を誤ったこと。
(8)避妊具を使用しなかった経緯に関する認定の誤り(46~47頁)
*無防備な性交イコール合意のない性交とはならないこと。
(9)バスルームの電話機を使用しなかった経緯に関する認定の誤り(48頁)
*冷静に判断できない状態というだけでは合理的説明がつかないこと。
(10)控訴人から渡されたTシャツを着用した経緯に関する認定の誤り(48頁)
*一刻も早くその場を離れたい心理状態だけでは合理的説明がつかないこと。

3 本件行為後の経緯について
(1) 被控訴人が本件ホテルから早朝に退出した行動に関する認定の誤り(48~53頁)   
*シャワーを浴びずに帰宅した行動は、むしろ偶発的な情事の経過、防犯カメラ映像(歩行時の様子、ヘアスタイル)や忘れ物に関するやり取り等からみても、合意による性交後の行動として不自然に性急とは認められないこと。
(2) 本件ホテルから退出する際の被控訴人の歩行等の挙動に関する認定の誤り(54~55頁)
*右膝の障害の影響が全く認められず、整形外科のカルテとも矛盾すること。
(3) 被控訴人がアフターピルの処方を受けた経緯に関する認定の誤り(55~56頁)
*偶発的な無防備性交イコール同意のない性交ではないこと。
(4) 4月6日に被控訴人が控訴人に送信したメールに関する認定の誤り(56~60頁)
*第三者(友人ら・警察等)による影響がない時点での決定的証拠である4月6日のメール(「お疲れ様でした。無事ワシントンへ戻られましたでしょうか?」「VISAのことについてどの様な対応を検討していただいているのか案を教えていただけると幸いです。」)の評価、解釈を不当に歪曲したこと。
(5)被控訴人が友人らや捜査機関に本件行為について相談した経緯に関する認定の誤り(60~64頁)
*就職活動の手段、口実として『性被害』を訴える動機づけの可能性があり、4月14日以降のメール内容(「君は合格だよ」の発言の趣旨の確認等)もそのような動機を示唆するにもかかわらずこれを看過し、周囲に性被害を訴えた点を意思に反する性交の裏付けと即断した重大な事実誤認があること。

4 供述の信用性評価に関する認定判断の誤り
(1)被控訴人の供述について
 被控訴人の供述と客観的事実・証拠との著しい不整合が存在すること(65~66頁)
*各医療機関のカルテ記載、防犯カメラ映像(本件ホテル退去時の歩行の様子)、着衣から血痕が検出されていないこと等
 供述内容自体が不自然不合理であること(66~67頁)
*人目につきやすい場所での会食や同行、妊娠の可能性がないと判明した後の虚偽内容のメール、「元検事の叔父」の虚偽等
 供述の核心部分が合理的理由なく変遷していること(67~72頁)
*性交の時間帯、性交時の意識状態に関する供述の変遷(4月4日イーク表参道受診時から同月7日、8日頃の友人らへの被害打ち明けに至るまで)
*本件行為を原因とする右膝痛を意識した時期、痛みの程度等に関する供述の変遷(元谷整形外科カルテ「3/31 変な姿勢で座っていて」との矛盾)
*ビザの話が会食時に出たか否かの供述の変遷
 重要な部分について虚偽供述の動機が認められること(72~75頁)
*自己の軽率な行動への後悔、自己嫌悪、性的羞恥心等
*自己の就職に具体的進展がないことについての控訴人への不満、憤慨等
*被控訴人の就職あっせんを期待し得る立場に控訴人があったこと~原判決の認定(23頁)とは逆に、むしろ不祥事による控訴人の立場への悪影響を口実として自己に有利な就職の便宜を要求し得たこと。
*性被害の公表による社会的・経済的利益の獲得
(2)控訴人の供述について
 基本的な事実関係に関する記憶の正確性が保たれ、客観的事実・証拠とも極めてよく符号する「真実の発露」が存在すること(76~77頁)
*イーク表参道カルテ未入手段階での「午前2時又は3時ころ」との供述
 供述内容自体が自然かつ合理的であること(77~78頁)
*泥酔した就職希望の女性と偶発的な情事に至った経緯として自然である。
*本件ホテルに同行させた経過は軽率だが、イラン核協議の報道状況や本件居室内のパソコン起動状況等とも合致し、不合理とはいえない。
 供述の核心部分が首尾一貫しており、細部にわたる相違についても合理的な説明が可能であること(78~80頁)
*泥酔して嘔吐した被控訴人を本件居室で介抱し、意識を取り戻した被控訴人と本件行為(性交)に至った基本的な事実経過について供述内容が一貫していること。
*「私の寝ていたベッド」の特定に関する供述の細部の表現の相違は、重要部分の不合理な変遷とは認められないこと。
 虚偽供述の動機の過大視が失当であること(80~82頁)
*控訴人の供述によっても社会的批判や職業倫理的非難の対象となること。
*虚偽供述により不法行為責任を免れても、被控訴人の本件公表行為を契機とする激しいバッシングで、もはや完全な被害回復が困難であること。
(3)小括(相対的に控訴人の供述の信用性が高いこと。82頁)

5 まとめ(82~83頁)
*原判決の認定(本件居室への入室についての被控訴人の意思)及び供述評価(被控訴人の供述が相対的に信用性が高いとする。)が誤っており、酩酊状態で意識のない被控訴人の同意のないまま本件行為に及んだとの事実認定に重大な過誤があること。

第5 控訴人による不法行為の成立に関する原判決の認定判断の誤り

 本件行為時の被控訴人の意識状態、本件行為についての合意等に関する認定を誤った結果、不法行為が成立する旨判断したこと(83~84頁)

 仮に本件行為について合意の成立が認められないとしても、それによって直ちに控訴人の不法行為が成立するとは認められず、この点に関する原判決の判断には不法行為責任の要件事実に関する判断遺脱の理由不備があること
(1) 刑事事件につき不起訴処分及び不起訴相当の議決がされたこと(84~85頁)
(2) 準強姦罪の構成要件と不法行為責任の要件事実との相違(85~86頁)
*刑事無責・民事有責となる事例が、おおむね性交相手の自由かつ真意による同意があるとの誤信につき過失がある事案に限定されること。
(3) 控訴人が被控訴人の同意があると過失なく誤信した可能性についての検討を全く欠いていること(86~88頁)

第6 本件公表行為による被控訴人の不法行為責任に関する認定判断の誤り


 デートレイプドラッグに関する事実摘示による名誉毀損について
(1) 原判決別紙記述目録3記載17に関する原判決の認定判断の誤り(88~91頁)
*一般読者の普通の注意と読み方は原判決の認定と全く逆であること
*現に控訴人がデートレイプドラッグを使用したとの虚偽事実が流布まん延していること(小林よしのり「ゴーマニズム宣言」等)。
(2) 反訴請求原因事実の追加(91~92頁)
*「デートレイプドラッグ」関連の記述の追加(本件公表行為(1)⑤、同(2)⑦)

 公益性及び公益目的に関する認定判断の誤り(92~93頁)
*実際には個人的な男女間の性的トラブルを契機として、被控訴人が著名ジャーナリストとしての声望を獲得しようとする私益目的の活動にすぎないこと。

 真実性の証明に関する認定判断の誤り(93~96頁)
*本訴請求の成否(本件行為の同意の有無)とは別個独立に判断されるべき真実性及び真実相当性の抗弁の対象事実(控訴人による盗撮、被控訴人への暴行及びこれによる被控訴人の負傷、控訴人の発言内容(「下着だけでもお土産に持って帰ってもいいかな」等)、本件ホテルに「引きずりこんだ」状況、デートレイプドラッグの使用、控訴人の常習性に関する担当検事の発言等)につき、何ら説得力ある理由が示されていないこと。

 受忍限度論に関する認定判断の誤り(96~97頁)
*要配慮個人情報(「精子の活動が著しく低調」との病気・病歴の記述)の公表による高度のプライバシー侵害を受忍限度内とする重大な過誤

第7 結語(97~98頁)

*重大な事実誤認・法的判断の過誤があり、破棄を免れないこと。
*性被害者の心理に寄りそう書きぶりで、実際にはその無理解を露呈した原判決を放置することは、控訴人やその関係者への深刻な人格権侵害の継続への加担となり、結局は真の性被害者の救済も果たされない結果を招きかねないこと。