9月21日 伊藤さんの陳述(全文)
伊藤さんご自身が配布されたスクリプトを入手しましたので、以下、筆者の「👆ツッコミ」入りで共有します。法廷で伊藤さんが読まれたものと同じ内容(原稿)が、閉廷後の囲み取材時に配布されました。
****
東京高等裁判所 第24民事部御中
2021年9月21日
(被控訴人サイン)
控訴審を終えるにあたり、以下のように陳述させていただきます。
事件が起きてから、6年が過ぎました。この裁判を始めてからは約4年が経ちます。
2015年、事件当時の私は、必死でバイトで貯めたお金で海外の学校に通い、ずっと夢を見ていたジャーナリストの仕事がスタートし、毎日ワクワクしながら仕事に出かけていた25歳でした。当時はその後の20代を裁判に費やすとは想像もしていませんでした。
👆示談を拒み、法廷闘争の道を自主的に選んだのは貴女。山口氏は
否応なく付き合わざるを得なかった。
事件と向き合う中で、自分の身に起こったことを、司法や社会がどう判断するのかを目の当たりにしてきました。精神的に痛めつけられ、攻撃されることの繰り返しでした。しかし「真実と向き合った」という事実は私の人生でとても大切なことだったのだと思います。
👆貴女が「真実と向き合わなかった」から、批判が殺到したのです。
この4年間、裁判で訴えたかったことは、そう多くはありません。まず、私の身に起きた出来事に対して、司法の適切な判断が下されることでした。そしてもうひとつ、判決を通じて、私が経験したような、性被害、および被害者バッシングという2次被害が、決して許されないものなのだというメッセージが広がることで、新たに被害者が泣き寝入りしなくてよい社会になることです。
👆二次被害、三次被害は山口氏です。あなたがメディアでもてはやされて
いる一方で、山口氏の父君は血を吐いて亡くなり、家族は怯えて暮し、
山口氏の人生は破壊し尽くされました。
👆冤罪の被害者が泣き寝入りしなくてよい社会、被疑者が証拠を以って
正当に裁かれる社会、被害者が名乗り出やすい社会を我々は望んで
います。
私は警察に届け出た段階で、刑事司法で裁いてもらうことを望んでいましたが、逮捕は直前で取り消しとなり、それはかないませんでした。刑事司法の不透明な対応に左右され、確かに存在していた性被害が、なかったことにされてしまうことに危機感を抱き、自分の顔を出し、そして名前を出して発信することを決意しました。
👆中村格氏によって高輪署の暴走が是正されました。刑事司法は貴女が
最後の最後になって提出した「録音」で検事が何度も何度も説明した
とおりです。
「売名」「被害者ビジネス」「ハニートラップ」・・・。名乗り出てから、本当にさまざまな言葉が投げかけられました。刑事司法が適切に対応してくれていれば、私が被害者であることを、公に名乗り出る必要はありませんでした。また、名乗り出ることで傷つくことや失うことがあることも想像できたので、本当に悩みました。それでもこうして名乗り出たのは、被害を否定してはいけないと思ったためです。
👆批判の主因は名乗り出たからでも、司法システムのせいでもなく、
貴女の態度が不審で、不誠実だったからです。
👆『Black Box』の「強姦致傷」の叙述は結局、何だったのですか?
私は山口氏(以下、控訴人)に性暴力を受けてから、PTSD によるフラッシュバック、うつ状態を経験し、何度も死を考えました。街を歩くことにさえも恐怖を抱くようになり、一時期は日本を離れました。さまざまな誹謗中傷に触れたことで、現在でも自分でネットを閲覧することが難しい状態が続いており、仕事で必要なネットでの対応は、第三者にすべてお願いしています。
👆根拠なく世界中で「薬物レイプ犯」にされ、世界中から罵倒のメール
が届く人の身になって下さい。
裁判の過程は、とても苦しいものでした。被害と向き合い続けたことや、ネットなどでの二次加害だけが理由ではありません。裁判の内外で、控訴人側が正当な反論を超えた中傷、そして二次加害の扇動を行い続けたためです。
👆であれば、準備書面で言いなさい。BBの「強姦致傷」は結局、検察で
も相手にされず、証明できなかったではないですか!
控訴人の第一審担当の北口弁護士は、ブログや記者会見で繰り返し、「妄想」「虚構」「虚偽」など私を嘘つき扱いし、病人扱いしてきました。北口弁護士は懲戒処分になりましたが、私は裁判自体に向き合う恐怖を深めました。
👆「戒告」でしたね。申し訳けないが、多くの人が心で思ってきたこと
でした。会見を開き貴女がすべきだったのは、実証的な説明だった
はず。代わりに貴女がしたのは連続する名誉毀損訴訟でした。
今回の控訴審で控訴人側は、いかに私が信用のおけない人物であるかを示すことにエネルギーを費やしました。例えば私が事件当時住んでいた住居は、当時の私の収入では払えないはず、そしてそのマンションのオーナーは実は愛人をたくさん囲っていた、とあたかも私がオーナーに部屋を貸してもらう等の親しい間柄にあったような印象を与えるための無根拠な主張を重ねました。実際は、マンションの部屋をシェアハウスに改造したものであり、全
く高額な家賃でなく、自分で働いたお金で支払っていたのにも関わらず。
👆貴女が「引越しメール」などではなく、原審で確たる居住証明をした
ら良かっただけの話です。一審では「破棄した」と言ったものを最終
盤で出してくるのは何故ですか?
👆シェアハウスを新潮の取材では語ったのに、BBで書かなかったのは
何故でしょう?
👆無給のインターンに、なぜ家賃が払えたのですか。未だに解けない謎
は多々あります。
他にも私の身の回りを詮索され、邪推され、事実ではないことを発信され続けました。
👆ネット民は #カルテと映像を公開して下さいと叫び続けましたが、
貴女は一顧だにしませんでした。
また、この控訴審で、「真の性被害者」という言葉が、控訴人側の主張として繰り返し使われました。これは、被害者のステレオタイプを一方的に作り出し、そのイメージとズレているから、あの人は偽の告発者・性被告者なのだ、とする主張です。
👆貴女の場合は、あまりにも疑わしい事柄が多すぎる。何でもかんでも
ステレオタイプとPTSDで批判できるものではありません。
第一審の判決直後、控訴人側が開いた記者会見で控訴人は「『被害者は、あのような笑い方はしない」と性被害を受けた女性からきいた」という主張を行いました。控訴人は「引用である」と釈明しましたが、これも典型的なステレオタイプだと思います。この件にとどまらず、今回の裁判の中で、性被害者や女性全般に対するステレオタイプ的な見方が繰り返し持ち出され続けました。
👆もちろん性被害者も笑います。しかし自身が受けた被害を語る時に、
このように笑うかは疑問です。
例えば、私が早くその場を去りたかったために、シャワーを浴びずに朝5時にホテルを出たことについて、控訴人はこう主張しました。「偶発的な経過から初めて性交に至ったにすぎない相手の男性が宿泊するホテルの居室で、当該相手の男性も使用しているであろうバスルームのシャワーを共有することなど、女性の心理として性交の合意があろうがなかろうが抵抗感、不潔感、羞恥心といった、ないし消極的な感情を覚えるほうが当然といえる」な
どという主張をしました。もちろん、そのような「女性の心理」が、この社会に存在している根拠は示されてません。
👆批判の理由を理解しておられない。一審判決が「シャワーを浴びな
い=不同意の証左」と認定している故の反論です。
また、ホテルから出る際に、私の髪型が前夜と違って結ばれていたことについても、「心理的な余裕が明確にあったからできた」はずだとも主張しました。性被害にあった人であっても被害に遭ったことを周囲にわからないように行動をとる、ということもあるかと思います。何ごともなかったかのように。
👆殺されそうになったのですよね?貴女は自著にそう記していますが。
冷静に振舞おうとする被害者が多くいることを説明してもなお、「本当の被害者なら他の行動をとるだろう」という勝手な論理にすがり続け、私を非難し続けました。こうした文面がふんだんに記された準備書面や書証などの攻撃的な資料が届くたび、また新たな加害が行われているように感じ、苦痛の日々を過ごしてきました。
👆「疑っただけ」にすがり続けた人権意識の欠如はどちらでしょう?
事件直後、被害届を出そうとした私に対し、捜査員が「君の人生が水の泡になってしまうからやめなさい」と言いました。どんな事件でも、「被害者側に沈黙させる方が、被害者のために良いのだ」とされてしまう社会の仕組みの元では、これからも誰かを長期間苦しめてしまうでしょう。被害者が司法できちんと守られること、そしてこれ以上「真の被害者」という勝手なステレオタイプによって、誰かを貶めるような出来事がおきないことを願ってます。
👆証拠がないのに訴えた場合に受ける社会的批判を慮り、貴女のために
言ってくれた言葉でしょう。
👆「願ってます」ではなく「願って(い)ます」です。検事と面談する
場合の返答は、「うん」ではなく「はい」です。
この控訴審は新型コロナウイルスの影響により期日が延期されました。そのような大変な時期にもかかわらず、ここまで丁寧に審理していただき、本当にありがとうございました。
👆証明できない”性被害”の告発で、どれほどの人間が傷つき、どれだけ
の公的リソースが浪費されたか、お考えになったことありますか?
👆👆性被害が「言ったもの勝ち」にならず、推定無罪が正しく機能する社会を望む国民にとって、模範となるべき「判決」を切に望んでいます。