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ダメ押しの整形外科医 回答書

膝については、伊藤氏は元谷整形外科で事件の4日前(3/31)の受傷を申告しているほか不審な点がいっぱい。原審でも匿名整形外科医が意見書を提出していますし、後から「事件の際に揉み合った時に痛めたらしい」と話を作ったと見て間違いないでしょう。もう話はついている!

               (原審の意見書(翻訳)はこちら)↓

それでも念には念を。Y弁護団は周到です。原審の意見書に続き、安房地域医療センター・整形外科 福内医師より、山口弁護団の質問に対し8/16付でホットな回答書が届きました。しごく明快です!私たちの常識的な見方を医師が見事に裏付けています!以下にご紹介。

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【乙第156号証の1】

          回答書 

1 元谷整形外科の診療録(乙6)の記載において、伊藤氏は、いつ、どのようにして右膝を負傷したと訴えていますか。根拠となる記載内容と共にご教示ください。
[回答] 「変な姿勢で坐っていて」「本日再びpain⊕」との記載があり、普通に読むと、初回の痛みではない。変な姿勢で座った(漢字ママ)ことにより、痛みが再発したと読める。
「ヨーガ」「バスケット」とあるが、バスケットは前十字靭帯損傷などの膝の怪我をしやすいスポーツである。
 もし診察時に伊藤氏が右膝に強い衝撃があったと訴えたのであれば、外傷の原因としては重要な主訴なのでカルテに記載したはずである。

2 診療録に「右膝内傷」「右膝挫傷」との記載がありますが、どのような症状ですか。
[回答] 「右膝内容」の診断名が付いているが、「膝内傷」は痛みの原因が分からない場合に取り敢えず付ける診断名である。半月板や靭帯の損傷が推定されるがそうと決めきれない場合に、取り敢えず「膝内傷」と傷病名を付けることがある。痛いと訴えた場合には、何でも「膝内傷」と付いてしまうので、必ずしも外傷によるかどうか分からない。
 「外傷」と「傷害」の区別で言えば、「右膝挫傷」は外傷であろう。

3 診療録に「B.O.P⊖」「関節内水腫⊖」との記載がありますが、どのような症状ですか。どのような場合に「⊕」となるかと併せてご教示ください。 
[回答] 「B.O.P」(Ballottement of patella:膝蓋跳動)は、膝関節の膝蓋運動により炎症を起こし、関節周囲に水が溜まった状態を指す。
 外傷で傷ついて炎症を起こすことが多く、たくさん歩いて水が溜まることもある。反復性脱臼のように膝蓋骨(膝のお皿)が外れる怪我を繰り返す患者は、疲労で膝蓋骨が外れ、水が溜まらないこともあり得る。そういう症例では何かの拍子(例えば階段の昇降)で簡単に外れることもある。

4 診療録に「Instability⊕」「膝の不安定性⊕」との記載がありますが、どのような症状であると読み取れますか。
[回答] 膝にぐらつきがある状態であるが、診療録の記載が不十分なため、どこに「Instability」があると判断したのかまでは分からない。「Instability」は、膝蓋骨の嚙み合わせが悪い場合に限定する用語ではない。
「Instability」は触診により判断する。痛みがある場合には、筋肉が固まるので、「Instability」とはならない。患者に力を抜いて下さいと指示しても、なかなか力を抜くことができない。本件で「Instability⊕」と判断できたのは、患者が強く痛みを訴えなかったため、十分な触診ができたからと考えられる。
 膝関節のMRI写真を撮影すれば、「Instability」の原因を特定できる可能性がある。

5 診療録に「本日 再び pain⊕」との記載がありますが、どのような意味に解釈できいますか。
[回答] 前記4の回答と関連するが、特に外傷による痛みが初回であるほど、「Instability」と判断することは難しい。「Instability」は触診により判断するが、外傷を受けてから2日後程度では、患者は痛がり十分に触診できないことが多い。
 本件では、「再び」との記載があり、初回ではなかったため、力が抜けていて、触診や問診などによって「Instability」と推定的に判断できたのかも知れない。

6 診療録に、膝関節の模式図が記載されています。どのような意味に解釈できますか。
[回答] 反復性膝蓋骨脱臼について説明したものと思われるが、レントゲンを撮っているわけでもなく、医師の想像の範疇を超えないものと思われる。

7 平成27年4月6日の診察においては、どのような処置が行われたと診療録から読み取れますか。
[回答] 「リハビリ」「膝(干渉波、マイクロ)」との記載があり、おそらくその場で、理学療法士による治療(理学療法)を受けたと思われる。
 「ロキソニンテープ5P」はシップ5箱分、「ジクロフェナッククリーム25g1本」は塗り薬(軟膏)であり、共に抗炎症作用のある非ステロイド系鎮痛剤である。痛みが患者の主訴にとどまらず、生理学的作用として炎症による疼痛の症状が出現していると判断されるとき、つまり本当に痛いときは、本件のように塗り薬だけでなく、内服薬(飲み薬)も処方するのが通常の処置と思われる。薬の処方の仕方から、伊藤氏は、強く痛みを訴えていないと推測できる。

8 4月6日の処置においては、レントゲンやMRIを撮っていますか。どのような場合に、レントゲンやMRIを撮るのかと併せてご教示ください。
[回答] 前記7のとおり、診療録には理学療法士による治療と湿布・塗り薬の処方以外には検査や処置に関する記載がなく、X線(レントゲン)検査やMRI検査による画像の撮影は行われていない。
 膝関節では、膝蓋骨や半月板の骨折、脱臼などが疑われる場合にはレントゲン撮影を行い、靭帯の損傷などレントゲンでは十分表示されない外傷を描出するためにMRI検査を行う。本件でレントゲンやMRI撮影を行わなかった理由は診療録の記載だけからでは不明だが、処置の内容からみて、保存療法(理学療法)や服薬による対症療法で足りると医師が判断したのだろうと推測できる。

9 平成27年4月3日午後11時20分頃のタクシー乗り場からホテルエレベーターまでの伊藤氏の歩行時の映像(甲15、甲16の1、甲17)について、お気付きの点はございますか。
[回答] 映像から見る限り、伊藤氏が酔っている様子であることは分かるが、歩幅が出ており、しっかりと歩けている。ヒールであるのに、結構歩幅が広く、しっかりと足が前に出せていて、足に力が入っている。
 激しい酩酊状態になると、足を前方に出すことができない。

10 伊藤氏が「右膝内傷」、「右膝挫傷」の傷害を受けたと主張する直後(平成27年4月4日午前5時50分頃)の映像(甲16の2)に、不自然な点はありますか。
[回答] 映像から見る限り、伊藤氏が痛がっているようには見えない。伊藤氏の主張どおりの傷害が発生していたらこのように普通の歩調や歩幅では歩けない。
 午前5時50分40秒頃に一瞬歩調を緩めたように見えるのは、車を確認するためではないかと思われる。特に歩き方に膝の異常は見て取れない。
 膝が痛い場合、痛い方の脚に体重を乗せられず、左右で、足に体重が乗って負荷がかかる時間が変わり、跛行した(びっこを引いた)状態になる。歩幅も小さくなる。
 映像で見た伊藤氏の歩き方に、際立った特徴はない。一般に女性は、ヒールなど履いている影響もあって足の前面を使って歩き、男性は足の後面を使って蹴り出すように歩く。また、O脚は膝蓋骨が外れにくく、X脚は外れ易い傾向がある。

11 伊藤氏は、性的暴行を受けた際、無理やり膝をこじ開けようとされ「右膝内傷」、「右膝挫傷」の傷害を負った旨示唆しています。不自然な点はありますか。
[回答] 膝をこじ開けられないように曲げ続けている間に、膝蓋骨が外れるという状況は考えにくい。両膝を深く曲げていて、外側に無理やりこじ開けられたとしても、膝蓋骨が外れることは膝関節の構造からまず考えられない。

12 「右膝内障」「右膝挫傷」の傷病名について、外傷性ではなく先天性、解剖学的素因が関与していた可能性はありますか。
[回答] 元谷整形外科の4月6日の診療録の記載、特に膝関節の模式図、「Instability⊕」の記載からは、医師が先天性解剖学的要因の関与による膝蓋骨の不安定性について患者に何らかの説明をし、その内容を診療録に記載した可能性は考えられる。
 ただ、診療録の記載は不十分であり、詳細は分からない。

13 伊藤氏は、平成27年4月6日に元谷整形外科で受診していますが、その後、再診していません。不自然な点はありますか。
[回答] 「その後、膝の痛みのために、数ヶ月にわたってサポーターをつけて生活することとなった」などと訴えており、また、伊藤氏の著書「Black Box」では「この事件後、まともに働けなくなっていた三ヶ月間だった。事件で揉み合いになった際に負傷したと思われる右膝は、重い機材を1人で担ぎ、取材に行く仕事には耐えられず」とある(151ページ)。
 もし本当に、伊藤氏の傷害が上記のようなものであるのであれば、再診をしないということは考えられない。

14 ご略歴についてご教示ください。
[回答] 別紙のとおり。

15 その他、お気付きの点がございましたら、ご記入下さい。
[回答] (特に記載なし)

2021年8月16日
              回答者 福内 正義 (印)