入院5日目
消灯後、布団に包まってネトフリを観ていたが、PCからの熱気で汗だくになってしまい、海外ドラマ一話分だけで限界だった。11時ごろ就寝。
深夜2時に叩き起こされる。
投薬治療を始めてから常時、心電計をつけているのだが、両胸、脇腹に貼られているテープおよび電極のツマミが外れると、電波が途切れ、ナースステーションから確認のための使いがやってくる。
「外れちゃったみたいですねー、上着あげてもらえますか」
看護師がしばらくテープやツマミの確認。寝返りのはずみか、右大胸筋のテープが剥がれていた。昨日、机の上のものを取ろうとベッドから無理に手を伸ばしたときにうっかり剥がれてしまった部分で、慌てて貼り直したのを思い出す。昨日のは一瞬だったから見過ごしてもらえたのだろう。
今日は無意識のうちに何度もテープを剥がしてしまい、そのたびに看護師にご足労をかけた。あまりに剥がれるもので、テープ自体を新しいものに変えてもらった。何日も着けているものなので、粘着力がだいぶ落ちてしまっているのだ。
心電計から三本の線が這っていて、赤黄緑の爆弾コードのようなものがそれぞれ身体に繋がっている。心電計自体も大きなもので、ポケットに入れているとかなりの存在感がある。かといって、邪魔だからとベッドに放り投げておくと、寝返りなどしたタイミングで引っ張られてすぐに剥がれてしまう。そんなのどうでもいいと思われるかもしれないが、尿の量を測定することに全てを賭けているような生活では、大いなる関心事である。
今日は土曜日だけあっていくらか静かだった。下の外来からもあまり気配のようなものを感じないし、なにより近くの小学校からいつも聞こえてくる運動会の練習の音が一切しない。なにかの演目だとは思うが、[Alexandros]の「風になって~♪」というのを入院してからここのところ毎日聞かされていた。
朝一で数独を何問か解くのが日課になっている。だが、下の売店で買った「ナンプレファン」の難易度が思ったより高く、ひたすら苦戦している。今日もスラスラ解けず、回診もこないので時間を忘れて粘っていたところ、小一時間のつもりが夕方になっていた。患者らしく、ベッドの上で終えた一日だった。
気がつけば、最終日のステロイドパルス療法も無事完了。いまのところ、ちょっとだけ微熱が続いているのは気がかりではあるが、特段体調の変化はなし。明日からは点滴ではなく、服薬での投与になるとのこと。
月曜日から抗がん剤治療も始まるため、点滴のルートは引き続き外すことができない。もう三日もシャワーを浴びれていないので、身体を拭くためのバケツをまた持ってきてもらった。いまだに正解がわからず、床をびちゃびちゃにしてしまう。だが、今日は大人しく自分で床を拭いた。
日本シリーズが始まった。僕は基本的にセ・リーグしか観ないので、とりあえずヤクルトを応援しているけど、山本由伸の好投で勢いづいてオリックスが日本一になったとしてもいいかなと思う(と、思ったらヤクルト先制)。
洗濯物は溜まる一方だがなかなか洗濯機が空かなかったり、夜勤の看護師が雑だったり、自覚症状はそこまでないのに行動制限がかかっていたり、眠れなかったり、カーテン一枚だから極力物音を出さないように周りに気を遣ったり、ずっと狭い病室の中で外の空気が思うように吸えなかったり。
入院生活も慣れてきて、少しずつフラストレーションが溜まってきているのだろう。病気を治すためと頭では理解しているつもりでも、これからもこの環境がストレスになってくることは間違いない。ちょっとぐらいは愚痴をこぼしていってもよろしいでしょうか。
とにかく、外の景色を見たい。話によると、左隣の窓際の爺さんが明日退院するらしい。ダメ元で窓際に移してもらえないか交渉してみよう。
窓から見えるのは都心とは反対方向なので決して華やかな景色ではないが、確実に家へと続く方角だ。
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