見出し画像

Mr.Childrenの「DANCING SHOES」がとにかくカッコ良いから聴いてほしい



 この間、ジムで筋トレしながら「Mr.Children(以下、ミスチル)聴こ~♪」と思ってSpotifyを開いたところ、なんと、ミスチルの最新アルバム『SOUNDTRACKS』がサブスク解禁しているではありませんか。


 ……誰か言ってよ~~。


 なんでもサブスクでことを済ませてしまう"俄か"なので、このアルバムも例外なく、発売日の零時に何度も検索し直したりしてひたすら更新をかけました。ですが、いくらやっても最新のリリース欄に表示されず、傲慢の限りを尽くす自分にやがて嫌気が差し、サブスク乞食の分際でこれ以上なにを求めるか、身の程を弁えなさいと自らを嗜めて観念するのは日常茶飯事のこと。

 それでも僕は結果的にはこんな風にサブスクに頼って、いつまでも甘やかされた乳飲み子ではありますが、それでも、大人になってからAVにはちゃんとお金を出すようになりました(カードだと足がつくから現ナマで、それもサブスクみたいなものではあるので胸張っては言えないけれど)。それは、合法的にお金を払う手段のなかった学生時代に散々お世話になっていたからであり、その分もいずれ返さなくてはいけない使命感は今も胸に刻んでいます。

 日本国憲法でいう"健康で文化的な最低限度の生活"よりはちょっと多く音楽に触れてきた身として、音楽からいただいた感動についても、それに見合った(もちろんお金の)還元をこれからもっともっとしていかなくては到底釣り合わないのを実感していますが、これは"前借り"として、いつかは必ず返すので許してはもらえないでしょうか。

 誰に対して許しを請うているのか分かりませんが、要は、僕はどこまでいってもミスチルの"俄か"ファンでしかないので、こんな奴の話を聞く価値は毛頭ないのですが、一言いわせてもらえるのであれば、ミスチルの最新アルバムがカッコ良いから聴いてほしい、ということに尽きます。

 そんなことお前に言われなくたって解る、という方に向けては書いていないので気に食わなかったらタスクキルいただくのがなによりの得策ですが、同じく僕のようにサブスクをよく利用し――ミスチルといっても数曲しか知らない(さすがに一曲も知らないという人はこの世に存在しないと思う)という方に、まずは一曲目の「DANCING SHOES」を聴いてほしいのです。


 度肝を抜かれます。筋トレどころではありません。

 この、ダークで、壮大な幕開け。

 そして、これでもかと桜井さんが詰まっている歌詞。


 ……聴きましたか?

 というか、勢いで「Brand new planet」聴いちゃってますか?

 そこまで行っちゃったら、そのまま最後まで聴くしかないんですけど。

 まあ、ある程度落ち着いたら、僕と一緒に「DANCING SHOES」の歌詞をひとつひとつ咀嚼してみましょうか。


---------------------------------------------------------------

息を殺してその時を待っている
いつか俺にあの眩い光が当たるその時を

でも案外 チャンスは来ないもんで
暗いトンネルの中でぼんやり遠くの光を見てる だけ

 初っ端、ここの歌詞が、どことなく「hypnosis」っぽいんですよね。

 ただ、「hypnosis」のときは文字通り催眠にかかったように、苦難や苦悩を心地よくさえ思っている節があったけど、この曲はなんとなくそうではなさそう。藻掻きながらがむしゃらに進んでいるわけじゃなくて、遠くの光をただ見てる"だけ"。むしろ、あの眩い光がいつ俺に当たるかと待っている。
 だけ、を残したり繰り返したりと強調して歌っていることから、それでは駄目だよって、大人になった桜井さんが昔の自分なりを俯瞰して言ってたりするのかな、なんて考えたりしちゃったりなんかしました。


バランスとって生きるのが人の常
右肩上がれば左の肩も上げ
やっぱ両肩下げる

群れを離れ歩いてくのもシンドい
良くも悪くも注目浴びれば
その分だけ叩かれる

 やっぱ、ベクトルが若いころの桜井さんに向いている気がする……!
 ミスチルは殆ど下積みなしでスターダムに駆け上がり、その反動からきた暗く長い"深海期"も潜り抜けました。その経験を歌っているんじゃないかなあ、と勝手に想像します。


後退りしたり
地団駄踏んだり
なに!?このくだり?
We were born to be free

 桜井さんは、いろいろな曲でめちゃくちゃ韻を踏みますよね。この、続けざまにラジバンダリと言いたくなるようなリズムが心地いいです。
 私たちは自由になるために生まれてきた――って英文でも"free"で韻を踏んでいるのがポイントですな。


Hey girls, come on
Let you wear the dancing shoes.
その両手に繋がれた鎖
タンバリン代わりにして
踊れるか?
転んだってまだステップを踏め!
無様な位がちょうど良い
さぁ Do it, do it, do it, do it!!

 少女が履かせてもらったダンシングシューズは、一見、「より自由に踊れるように」と親切心から与えられたもののように受け取れます。鎖をタンバリン代わりにするってのも、すごく勇気をもらえますし。
 ただ、二番のサビの歌詞を聴くと、また違った印象を受ける仕組みになっています(仕組みというか、そう感じているのは僕だけかもしれないけれど)。それはまたあとで説明しますが、やっぱり桜井さんは天才だなーと溜息が出ること間違いなしです。とりあえず先へ進みましょう。


流行り廃りがあると百も承知で
そう あえて俺のやり方でいくんだって自分をけしかける

 二番も引き続いて、桜井さん自身のことを歌っているように思います。
 どこかのニュース番組(たぶんNEWS ZERO)のインタビューで桜井さんが「もう若い才能には敵わない。若いころは自分が日本代表で間違いないと思っていたけれど、いまはなんとかスタメンにでも食い込めるようにと、ボイトレに通うようにしています」というような趣旨(記憶違いだったらスミマセン)を謙虚ながらに語られていて、こんなモンスター級バンドのボーカルでもいまだにボイトレとか通うんだっていうのがまず衝撃だったし、あえて俺のやり方でいくんだっていう葛藤は今尚抱いているんだろうなと、いち俄かファンとして想いを馳せたりしています。


四半世紀やってりゃ色々ある
あちらを立てれば
こちらは濡れずで破綻をきたしそうです

 キターーー!下ネタ。笑

 むしろ、真骨頂はここにある、とか言ったらファンの人たちから怒られそう。でもやっぱり、こういう生々しい部分もひっくるめて僕は桜井和寿が大好きです。だからこそ、ミスチルの数ある名曲も単に綺麗ごとを並べてるだけじゃないんだなって思えてスッと歌詞が沁みるのです(偉そうにスミマセン)。

 「youthful days」の歌詞の意味をググって初めて知った当時小学生の長谷川少年は、雷に撃たれたような衝撃とともに、まだ見ぬ女体の神秘に心を躍らせました。それからというものの、桜井さんが歌詞にちょくちょく挟んでくる下ネタを見つけては、実家に帰ったような安心感を覚えるようになったのでした(まだ実家暮らしだけど)。


サルバドール・ダリ
ってちょっとグロくない?
普通じゃない感じが良い
We were born to be free

 時計がぐにゃぐにゃしているやつ、僕も結構好きです。
 グロいという少し遠ざけた表現を使いつつ、普通じゃない感じが良い、普通は嫌だ!というのは、これもまた若さを表現しているのでしょうか。
 サルバドール・ダリは自称天才とも呼ばれていて、根はすごく几帳面で真面目だったとどこかで読んだことがあります。でも、天才の物真似でも一生貫けばそれが本物にならない気もしなくもないし、貫くんだったら信念持って貫けよというメッセージにも受け取れる気がします。


Hey boys, come on
Let you wear the dancing shoes.
その両足にかせられた負荷に
抗いステップを踏め!
弾む息を大空に撒き散らして
君は思うよりカッコ良い
さぁ Do it, do it, do it, do it!!

 問題の、二番のサビですね。
 その両足にかせられた負荷?
 ……もしかしてダンシングシューズのこと?

 そう、これは僕の勝手な解釈ですが、ダンシングシューズを履かせたのは、純粋な親切心からくるものではなく、甘い言葉で近寄ってくる悪い大人たちによるものなのではないでしょうか。そうすると、その負荷に抗いステップを踏め!と少年少女に叱咤激励しているのは他でもない、自らも履かされそのシューズの重さを知っている桜井さんなのではないでしょうか。

 そんな発見をしてしまって、他のひとの解釈も気になって探したところ、「これはこれから芸能界に入る息子さんに向けた応援歌だ」というのを見つけました。
 桜井さんのご子息が芸能界デビューするというのは存じ上げなかったのですが、その解釈からすると、ダンシングシューズを履かせたのは桜井さん自身であるという考え方もできます。ライオンが崖から我が子を落とすように、自由であるためにはたとえ泥臭くてもやり貫かなくてはならない、その覚悟はあるかと試しているようにも捉えられます。
 とにかく、君は思うよりカッコ良い、という言葉に痺れますね。

---------------------------------------------------------------


 以上、歌詞をひと通りさらってみました。
 もちろん、「Dance Dance Dance」からの系譜だとか、ミスチルが"靴"に込める想いだとか、ミスチルの長い歴史を振り返ってこそ見えるものがまだまだあると思います(天津木村)。僕なんかその辺りは全然掬えていないので、長年のファンの方々には上辺だけの解釈だと捉えられても仕方ありません。

 ですが、昔聴いていた曲をあらためて聴いて、同じ歌詞なのに新しい発見があるように、そのときそのときで歌詞の響きが変わってきて自分の成長を感じられるからこそ、歌というものは面白いんじゃないかなと感じます。桜井さんはなかでもズバ抜けて深みのある歌詞を書かれる方だと思いますし、どれだけ深く考察しても底に足が着いた試しがありません。
 だから、この歌詞を受けて今思うことを殴り書きのようにしたためてみました。近々サブスク乞食から抜け出したらまたあらためて書いてみようかなと思います。

 ちなみに、このアルバムのテーマはどうやら「老い」のようであると聞いています。確かに通して聴くと、ミスチルの「老い」に対する静かなメッセージを感じとることができます。僕も、今のミスチルと同じ年代になって「老い」と向き合うようになれば、そのときにやっと桜井さんの言いたかったことも少しは解るようになるかもしれません。

 そのときを楽しみに、僕は今日もミスチルを聴き倒します。


 ……スミマセン。いつか返します、絶対に。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?