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入院42日目
10時入眠。
3時半に起きて、朝まで眠れる気がしなかったので、いつものように本を開く。明け方には一冊読み終えた。
何度も言うようだが、リツキシマブ投与の当日。
点滴の投与自体は昼ごろになる見込み。
朝イチでレントゲンに呼ばれる。
今日はミーに車椅子を押してもらった。ミーと他愛もない世間話をして、年の瀬の外来を半袖短パンが駆け抜ける。彼女もここで働き始めたのはおよそ二か月前からという。ほぼほぼ同期だった。
戻ってからルートを取り直すのだが、今回は太めの20ゲージを使っているらしく研修医が大苦戦。二度失敗し、一つは内出血を起こしてかなり痛かった。三度目の挑戦で今度は元の22ゲージに戻してもらい、今度は難なく成功した。
この針を選んだのは引き続き昨日の男性看護師さんだった。「大事な薬だから、太い針だと急速投与できるんだよね。あと長谷川君は若くて血管太いからいけるかなって思ったんだよ」
その看護師さんが去ったあと、隣の受験生が口を開いた。「…甘いな」
「長谷川さんが若くて血管が太いのは確かなんですけど、腎臓がやられていると血管って細くなるから、太い針をとるのって他の患者と比べて難しいんですよ。それに、リツキシマブとか抗がん剤を入れる場合は流速決まってるので太さはそこまで関係ないです」
これは闘病経験の長い受験生のほうが一枚上手だなと思った。実際、今回入れられかけた20ゲージは輸血や造影剤の投与で使われるとのこと。数日前に造影剤の注射でこのルートは使えない、と言われたのはこういった事情によるものだったらしい。
10時ごろ、リツキシマブの投与に向けて錠剤をいくつか飲む。そのなかには痛み止めのアセトアミノフェンもあった。これがお馴染みの眠くなるやつなので、しばらくは事前の生理食塩水の点滴でウトウトしていた。
11時すぎからリツキシマブが投与される。
すっかり眠気はおさまり、夕方の投与終了まで、ひたすらに本を読んでいた。「錨を上げよ」の四巻を丸々読み終えそうなペースで、この頭の痛みは読書による目の疲れか、リツキシマブによる影響かがよく分からなかった。
定期的なバイタルチェックがあり、しばらくは微熱があったのだが、夜には落ち着いた。20時には生理食塩水の点滴も終了し、明日の朝の回診で問題なければルートも心電計も外れるという。
無事、大きな副作用も見られず、リツキシマブ投与の初日は終えた。
とりあえず、エンドキサンの経験を踏まえて一週間は副作用をみていく必要はあるが、リツキシマブは比較的すぐ現れる薬だと聞いていたので、初日を問題なく終えられたのにはひと安心である。
夕方の回診では先生が朝の血液検査の結果を持ってきた。
ANCAの値は相変わらず300以上でカンストしてしまっているのだが、少し期待できる兆しとして尿沈渣の値がいままでずっと100オーバーだったものが、50-99の範囲に落ち着いていた。これは回復の兆候を表すものとしてはやや根拠の薄い値ではあるらしいが、久しぶりの良いニュースに伝える先生も少し興奮気味だった。これが一時のブレでなければ、リツキシマブ投与前なので、一週間前のエンドキサンが効いているということになる。
引き続き、リツキシマブにも期待しましょう、ということで解散。
なんだか、暗闇に一筋の光が差した気がした。これが天の気まぐれでなければいいなと願う。
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