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外資系企業の日本法人社長というキャリア:就任後3ヵ月間で学んだこと

こんにちは!!

2021年9月13日に株式会社Zenyum Japanの代表取締役社長に就任し、早いものでもう3ヵ月以上が経過しました。本当に濃い毎日を過ごしています。

Zenyum Vietnam社長はマッキンゼー出身で、同じコンサルティングバックグラウンドということもあり、ちょいちょいチャットでおしゃべりします。「コンサルティングはプロジェクトが終わったら休めるし気分転換もできるけど、経営者という立場だと常にビジネス上のプレッシャーがあるよね…」みたいな話をしました。

その他の各国の社長やグローバル経営陣とも非常に仲良くさせてもらっています。英語力もおかげさまで伸びたような気がします。

日本でも10名以上のメンバーと一緒に日々ビジネス立ち上げやプロセス構築、マーケティング施策の立案と実行に邁進しています。まだそこまで人数が多くないのもあり、スムーズにコミュニケーションをとりながらスピーディに動けている実感はあります。

ただ、それでも次から次へとやることがあり、みんなには負担をかけてしまっているなと思います。とはいえ、「やればやっただけ前に進める感」があります。これはコンサルタント時代や前職でも味わえない独特の手触り感で、月並みですが非常にやりがいを感じます。

まだ就任3ヵ月ではありますが、このポジションで学べることは本当に多いです。ぼくがこのオファーを頂いた際に、「外資系企業の日本法人社長ってどんな仕事をするんだろう?」「どんなことが大変で、どんな成長機会があるんだろう?」とめちゃくちゃ気になっていろいろとググったのですが、あまりリアルな情報はなかったと記憶しています。

もしかしたら同じように情報を探している方もいらっしゃるかもしれないので、3ヵ月強という短い期間であることは承知で、今まで学んだことを書き残しておきます。少しでも参考にしていただけるとうれしいです!!

1.グローバルのベストプラクティスから入る

これは特にグローバル企業の日本法人社長になる方には徹底いただきたいポイントです。ぼく自身、今までのキャリアは全て外資系企業の日本法人でしたので、この重要性はわかっているつもりでした。

ただ、それはあくまでも「わかっているつもり」に過ぎなかったことが明らかになりました。どうしても「日本は日本の事情があるからな」「英語文化と日本語文化は全然違うんだよね」という考えが、日本人ならば少しはあるはずです。そして、この「少し」が大きなズレにつながってしまいます。

グローバルチームは、すでにビジネスを他国で展開してきていて、そこで様々な失敗/成功を重ねています。その経験を日本でも活かさない手はありません。その中には、もしかしたら「それは日本には合わないのでは・・・」と感じるやり方もあるでしょう。ただ、そんな中でも一回はそれを完コピしてみる必要性はあります。

やらないうちから「それは日本ではできない」といっても、本国の理解は得られませんし、それは単なる先入観である可能性も大いにあります。まずはグローバルのベストプラクティスを徹底的に模倣し、そこから得られたデータをもとにローカライズを進めていく、というのが正しいステップだな、と今では思っています。

また、社長自身が「グローバルのベストプラクティスを推進していこう」と考えていても、メンバーがそうは考えていないケースもあります。その場合、勝手に物事が進んでしまい、本国との大きなコミュニケーションギャップが生まれるケースもあります。特に立ち上げ当初の時期は、グローバルとのコミュニケーションはすべて社長自ら目を光らせ、おかしなことにならないようにすることが重要です。

今は確かにDeepLなどの非常に素晴らしい機械翻訳のツールがありますが、それに頼りきりだとコミュニケーションロスが大きく発生します。ある程度英語でのマネジメントコミュニケーションに長けている社長や幹部レベルが本国とのコミュニケーションを取るべきだとぼくは思います。

また、日本はハイコンテクスト(暗黙の了解や前提があり、はっきり言わなくてもなんとなく物事が進んでいく)な文化ですが、これは非常に日本独特だと感じます。グローバルチームとのコミュニケーションでは、「前提は何で、ファクトはどうで、仮説はなにで、だからこうしたい」というのを明確な言葉やデータに落とすことが必要です。

これをスムーズに英語でできる人材は非常に限られていますが、これができないと本国とうまく連携してビジネスを進めることはできません。そのような幹部人材がいれば、一緒に進めていけばいいと思いますが、いない場合は社長自らここのコミュニケーションをリードする必要があります。

2.フラットにしすぎない、1階層作る

最初の2か月、階層を作らず、かなりの仕事のレビューを自身で行っていました。その背景には以下のような理由があります。

  • そもそも立ち上げ時期で、職位にとらわれずどんどん手を動かして物事を前に進める人が求められていた

  • 人数が10名そこそこであるならば、変に階層を作らないほうがコミュニケーションはスムーズ

  • 「コンサルタント」「戦略企画室長」のようなキャリアは得てして「アドバイザー」「口だけ」「手は動かせない」と思われやすいので、最初こそ手を動かしまくって社内外/国内外から信頼を得る必要がある

上記は間違っていないと思いますし、3ヵ月前に戻ったとしても同じようにすると思います。ただ、メンバーが10名を超え、パートナークリニックさんも増え、お客様も増え・・・となってくると、いくら生産性を高めても物理的に無理な業務量になってきてしまいました。2週間ほど無理してみたのですが、さすがにサステナブルではないな…と実感しました。

その結果、事業開発とマーケティングに長けているメンバーに、チームヘッドとして各メンバーのタスク管理やレビューをお任せすることにしました。これは本当に大正解で、自分のワークロードが軽減されたのはもちろん、より具体的な指示出しをしていただけるようになり、会社全体のスピードやクオリティが一気に向上しました。

体感ですが、10名未満までは全員直レポで階層なしのフラット組織でもなんとか回せると思いますが、それ以上になると時間的にも厳しく、かつレビューの観点も粗くなるなと思います。信頼できるメンバーに管理職として権限委譲すると、ここがだいぶ改善されるはずです。

ただ、この規模の会社の管理職は、指示を出してレビューするだけではなく、自らもエースプレイヤーとして動いていく必要があります。管理職的な仕事を任せる際は、その馬力がある人を選ぶべきかなと思います。単にレビューと指示出しだけの人が管理職になると、会社全体に「それでいいんだ」という空気が蔓延してしまい、自ら動き、問題を解決していく雰囲気が壊れてしまうリスクもあるかなと思います。

3.お客様と直接お話をして、見える化する

Zenyumはグローバルで人気を博しているサービスですし、マウスピース矯正も日本で徐々に知名度を増している領域です。なので、完全にゼロスタートではないので、通常のスタートアップと比べたらお客様の課題や期待値は見えやすいとは思います。

とはいえ、だからといってサクサクお客様が集まり、ガンガン売れるかというとそんなことはありません。名前を知ってもらい、サービスの概要を知ってもらい、興味を持ってもらい、ぜひ使いたい!!!と思っていただく、そのプロセスをどんどん回していかない限り、ビジネスは前には進んでいきません。

そのプロセスを回していく際にもっとも重要なのは、お客様の生の声を聴き、そのお客様がなぜ興味を持ってくださったのか、逆になぜ興味を持ったが利用にまで至らなかったのか、などなど深く理解する必要があります。短期的な売上よりも、このお客様の理解が何よりも重要です。

そのため、日本でサービスを開始した後、興味を持ってお問い合わせくださったお客様にお時間を取っていただいてヒアリングをしたり、パートナークリニックに訪問いただく際には私やカスタマーサクセスのメンバーが同行し、不安事項を取り除くとともに深いところまでお客様の要望を理解する、という行動を繰り返しています。

また、Zenyum Japanでは完全に治療が完了するまでにはもう少々時間がかかるため、すでに他国でZenyumを体験していただいた方々にお声を頂くような活動を実施しました。多くの方々が快く協力してくださり、Zenyumが愛されていることがよくわかりました。

Zenyumに対するお客様の声を集めてみた

このような活動を通じて、私やメンバーのビジネスに対する解像度が上がるとともに、「このサービスは多くの人たちのためになるものだ」という自信を得ることができました。この自信を持てるかどうかは非常に重要で、すべてのアウトプットに影響します。

「自分がかかわっているこの商品は、世のため人のためになるものだ」と思いながら仕事をする場合と、「この商品、本当は売らないほうがいいんだよな…」と仕事をする場合、どちらのほうが生産性が高いかは火を見るより明らかですよね。

「グローバルで人気があるから」と胡坐をかくのではなく、日本でもどんどんお客様とお話し、解像度を上げていくことはとても重要です。そして、これはカントリーヘッド自らが進めていく必要がある仕事だと考えています。

4.細部を徹底して詰める

立ち上げ時は次から次へとやることがあり、どうしても「走りながら整理していく」という形にならざるを得ません。「ゆっくりプランニングしてから実行しよう」と考えていると、あっという間に数か月経過してしまい、せっかくのチャンスを逃してしまうのです。

ここで気を付けないといけないのが「今は立ち上げ時だから」「スタートアップだから」「忙しいから」などの安易な言い訳に走ってしまうことです。最初期に「適当でもいい」「ミスがあってもいい」を許容してしまうと、その先もその「ダメなユルさ」が継続してしまいます。

基本的にスピードとクオリティはトレードオフではあります。あちらを立てればこちらが立たぬ、というやつですね。ただ、その「基本」を打ち破る覚悟が必要だなとぼくは思っています。

もちろんスピーディに仕事をこなしていく必要はある。しかし、スピーディにこなしていく一方で、最高水準のクオリティを担保する。この矛盾を飲み込み、前進し続ける組織を作っていく必要があります。

  • 本当にそのトークスクリプトでお客様の不安を解消できているのか?

  • お客様に確認いただく同意書でおかしなところはないか?本当にわかりやすく作れているのか?

  • 全体のプロセスの説明で必要な情報を提供できているか?

  • パートナークリニック様から見て、経済条件に不透明なところ、納得しかねるところはないか?

  • グローバルのプロセスと異なるプロセスを導入せざるを得ないとき、必要なステークホルダーの了解を明確に取れているか?単に「知らせたよ」で終わっていないか?

  • グローバルチームからの要望をすべて余すことなくクリアできているか?できない場合、その理由と代替案を明確に提示できているか?

考えることはいくらでもあります。もちろん濃淡はつけないといけないですが、すべてのメンバーが常に最高水準を意識して自問自答し、スピードだけでなくクオリティを追求している組織にしたいと思っています。とはいえ、最初から全員がそれができるほど簡単なことではないので、このレビュー機能も社長自ら担うべきだと考えています。

5.気軽に助けを求めてみる

外資系企業の日本法人社長は、かなりプレッシャーがかかるポジションであることは間違いないです。本国との英語でのディスカッションをしっかりと理解して日本に落とし込む必要がありますし、日本チーム側のマネジメントも必要になります。そして、ただ一生懸命やっていればよいわけではなく、しっかりと数字を出し続ける必要もあります。

さらに言うと、数字を出せば何でもよいわけでもなく、今までみんなが各国で築き上げてきたブランドイメージや評価を崩すわけにもいきません。どうしても「外資系」という色眼鏡で見られがちななか、サービスやプロダクトのクオリティをさらに向上させ、お客様やパートナークリニック様にご満足いただく必要もあります。

「これをやればOK」というのは永遠に訪れることがないため、精神的につらいときもありました。ぼくはもともと寝付きがめちゃくちゃ良いほうで、ベッドに入ったら数分で寝入ってしまうのですが、現職に就いてからよく眠れない日がちょいちょい出てきました。一日仕事をした後で疲れているのですが、いろいろなことが頭に浮かんできて、どうにも眠れない…という感じです。

ぼくの数少ない美点の一つが、「常にオープンであること」だと思っています。なかなか眠れないんだよね、ということを日本のメンバーや海外のメンバーに気軽に話すと、みんな心配していろいろとアドバイスをくれました。

特に、他国の社長や創業者など、同じような体験を経てきている人たちからの言葉は非常に刺さりました。「どんなことがあっても、結局楽しむしかないな」といういい意味での開き直りもできましたし、より具体的なサポートも得られました。

「数字を上げなければいけない」「自分が最後の砦だ」という強い責任感はもちろん大事なのですが、自分一人ではにっちもさっちもいかなくなってしまう状況は確実に訪れます。そのときに一人で抱えていると、精神的・肉体的に追い詰められてしまう可能性もあります。

海外メンバーも日本メンバーも、「自分たちのサービスを世に出して、貢献していきたい」という想いはみな同様に持っています。つらいときは、そういう人たちに、素直にかつ気軽に助けを求めてみるとよいと思います。誰かに頼る、それだけで解決することは意外にたくさんあるものです。

来年、および次の3ヵ月が楽しみ

雑多に5つ学んだことを羅列してみました。もちろん大変なこともたくさんありましたが、今までの経験や知識を余すことなく活かしながら働くことができ、とても充実しています。また、クリニック様やお客様に喜んでいただけるのもとてもうれしいです。

せっかく仕事をするのであれば、全力で取り組み、かつ世のため人のためになることをしたい、とずっと思っていました。それが実現できているのはとてもうれしいです。

Zenyum Japanが法人化したのは9月、ビジネスをスタートしたのが10月、リリースを出したのが11月です。2021年は基礎を作りあげるために、日本メンバーもグローバルメンバーも一丸となって努力しました。その努力の結果を花開かせるのが2022年であり、次の3ヵ月だと思っています。

来年の3月あたり、また振り返りができたらなと思っています。そのときにより多くの人たちのためになっているビジネスに育てられるよう、引き続き邁進していきます!

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