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没30年 90歳の誕生日 還暦のセーター

こんにちは
編み物する人TAS KNIT(タスニット) やまもとです。

今日10月30日は亡き父の誕生日。
生きていたら90歳になる。
もう全く想像もつかない。

30年前の今日、父は還暦を迎えた。
闘病中の病院で迎えた誕生日。
私はえんじ色の手編みのカーディガンをプレゼントした。

姉たちは冬が近づくと彼氏にプレゼントするセーターを編んでいた。
そのうち私も仲間に加わり、毎年編んだものだ。
リビングで編み物をする娘、
仕事から帰って来た父は
「それ、わしのセーターか?」
「違うわー!」
これが毎回のお決まり。
父もわかっていて、冗談まじりに毎回聞く。
娘が3人いても、誰も父の為に編んでいなかった。

もうこれは最後のチャンス。
おそらく本人も、家族も、父はもう長くはないとわかっている状況で
母は泊まり込みで父に付きっきり。
姉たちは結婚し、家を出ている。
私は会社勤めの行き帰りに病室に立ち寄り、
少しでも父との時間を共有しつつ
誰も居ない家に帰ってはさまざまな思いを胸に編み物をした。

誕生日の日、出来上がったカーディガンに袖を通してくれた父。
起き上がるのもしんどかっただろうに、
嬉しいのかどうかもわからないくらいの顔つきで。
その後も2度くらいは着てくれただろうか・・・。

60歳還暦を迎えることができた父は12月に亡くなった。
まだ在職中、今思うと本当に若い。
だんだんと自分がその歳に近づきつつあり
もっといろいろなことをしたかっただろうなと思う。

今でも大事に取ってあるえんじ色のカーディガン。
あの時家でひとり寂しく、辛く、悲しく、感じながら編んだ。
でもあの時に私は編み物を自分の職業にしたいと決意した。
父に決意表明をしたような気もするが・・・。
そして、その後資格を取るための編み物教室で勉強を始めた。

今日はやっぱり特別な日。

※写真は個展の時に飾った
父へのえんじ色のカーディガン
母への生成りのカーディガン





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