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建築と私 番外編「聖橋」

ロンロさんにご協力・お力添えをいただく形で始まった「建築と私」。不定期にエッセイを書いている。これまで第1回・第2回と投稿した。

なかなかまとまった時間が取れず、第3回が書けずにいるのだが、そんな中突然の番外編。
御茶ノ水駅の目の前に掛かっている「聖橋」のことを書きたい。「建築」からはやや離れてしまうのだが、「構造物」という意味でお許しいただきたい。

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毎朝通勤で、JR中央線を使っている。通勤電車で乗る車両というのはだいたい決まっていることが多いと思うが、私もその口。
いつもの車両に乗って東京方面に進んでいくと、御茶ノ水駅に停車したタイミングで、ちょうど左手にある巨大なコンクリートの橋が目に飛び込んでくる。それが、聖橋。

「聖橋」遠景

遠くから見ると「なんだ、こんなもんか」とお思いかもしれないが、これが電車の窓から見ると思わず笑ってしまうほど圧倒的な存在感。ただ、電車はいつもすぐに発車してしまうし、通勤途中にホームに降りてまじまじと鑑賞する時間的・精神的余裕はなく、いつかきちんと見てみたいと思いながら日々は過ぎ去っていった。

今日、たまたま空が明るいうちに御茶ノ水に行く用事があり、ついでに写真を撮りがてら橋を眺めてきた。

実を言うと、この橋が「聖橋」という名前だということを知ったのは、恥ずかしながら今日のこと。いや、「聖橋」という名前そのものは御茶ノ水駅の「聖橋口」という改札名で知っていたのだが、なぜかこの橋と結びついていなかったのだ。今日、いつものように車窓から橋を見て、「よしよし、あの橋の方向にある改札口から出ればいいのだな」と思いながらホームの階段を昇り、「聖橋口」という名前を目にした途端、「そうか!あの橋が聖橋か!!」と天啓を受けたのだ。

そして、橋を意識しながら改札口を出て、歩き始めた瞬間、再びの衝撃。これまで、「聖橋を渡っている」という認識を一切なしに、何度も渡っていたことに気づいたのだ。道を走る道路が、シームレスに橋の上を走り、また道を走っているため、橋を渡っている意識がなくなってしまっていたのである。

以前湯島聖堂を訪れた時に降りたことのある階段を降り、橋の横を走る道へ。遠くにある横断歩道を渡り、橋の近くに回り込む。

間近で見た聖橋


もっと近づいてみる

いかがだろうか。「ものすごいコンクリート感」を感じていただけただろうか。

さて、ここで、困ったときのWikipedia。「聖橋」の項目を見てみよう。

関東大震災後の震災復興橋梁の1つで、昭和2年(1927年)に完成した。設計・デザインは山田守、成瀬勝武。2018年には土木学会選奨土木遺産に認定された。
2017年2月、2016年春より行われた「聖橋長寿命化工事」が完成した。橋の躯体表面を覆っている保護コンクリートを剥がし、躯体に入った亀裂を補修し、新たな保護コンクリートで覆った。

昭和2年に完成した大変古い橋。サムネイルになっている写真をご覧いただくとお分かりかと思うが、以前は経年劣化で薄汚れていた。これを工事で綺麗にしたため、「コンクリートでできた一つの塊」感が増して、私の注意をひくことになったのだろう。

改めて見ると、要塞のようにも、霊廟のようにも思えてくる。4つ開いた縦型のアーチのうち、一番内側の2つが、切れっ端のようでなんだか可愛らしくもある。

皆さんもぜひ、御茶ノ水に足をお運びの際は、聖橋を下から眺めてみてください。この周辺は、かなり古いものがそのまましれっと使い続けられていたりして、意識して歩くと歴史が感じられて面白いですよ。

~おまけ~

初めの写真の向かって右側、聖橋に接合された、道路を跨ぐ橋は、聖橋との連続性が意識されているように思った。

接合部


アーチから向こう側を覗く

また、御茶ノ水駅の駅舎も、建築当時とはやや姿が変わってしまっているようだが、そもそもは昭和7(1932)年に建てられた、いわゆる「モダニズム建築」。そう思ってみると、味がある。

御茶ノ水橋口改札側


聖橋口側。「御茶ノ水駅」の文字の欠け具合とレトロ感、位置から考えると、国鉄がJRになったタイミングで付けられた文字?

さらに、聖橋の先にある鉄橋(「松住町架道橋」)も、駅舎と同じ昭和7年のものらしい。

「松住町架道橋」遠景。たしかに竣工当時のままだ

本当は御茶ノ水橋も見てきたかったのだが、時間の都合で断念した。それはまたの機会に。

ちなみに、「間近で見た聖橋」の写真をよく見ると、橋の上から何やら写真を撮っている人たちがいる。これは何を撮っているのかというと、昨日朧がかっていたのが、朧が取れて鮮やかに光っていた満月。私も思わず撮影したのだが、スマートフォンなのでまったく撮れず。せめて雰囲気だけでも。


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