【2日目】理想郷

 チャットモンチーが好きだ。
 『世界が終わる夜に』の擦り切れるような憂鬱も、『バスロマンス』のかわいさも、『恋の煙』の歌詞のハマりぐあいも最高(Base Ball Bear小出さんとの『同期Ver.』もやばい)。そんな楽曲群の中でも、自分にとって特別大好きな一曲が『シャングリラ』だ。

 まずイントロ。シンプルで暴力的なかっこよさ。「こんなんかっこいいにきまってるじゃん」と思うけど、誰でもできるわけじゃない。

 サビの特徴的なメロディーも中毒性がある。実は、はじめて聴いたときは、なんか変なリズムですわりが悪くて一回きりで聴くのをやめてしまった。その後何年か経ってから、改めて友人にすすめられて聴き始めると、今度はとてもハマった。
 他の事でもそうなんだけど、自分は、自分にとって重要なものとか大切なことほど、最初に出会ったときは拒絶反応が出るタイプだ。理解できないまま引っかかり続けて、何年も経ってからやっと飲み込める。その時間の使い方がなんだか贅沢で、けっこう好きだ。きっとこの間理解できなかった小説のワンフレーズも、おじさんのくせに青臭いと思っているバンドの曲も、いつか良さが分かるかもしれない。そのときを楽しみにのんびり生きていこうと思う。脱線終了。

 『シャングリラ』の中でもいちばん好きなのが、大サビ前の歌詞だ。

”胸を張って歩けよ
前を見て歩けよ
希望の光なんてなくたって
いいじゃないか”

 正しい根拠がないと喋っちゃいけない時代で、この言葉を聴くと泣きそうになる。
 分かりやすい答えが提示されるエンタメが、溢れて止まらない世界だけど、だからこそこういう強さを教えてくれるチャットモンチーを聴いて、今日も家を出る。


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