確信犯

 ホームで30円引きのメロンパンを食べていたら、電車が来てしまった。食べかけをどうにもできないので、一本乗り過ごすことにする。他のお客さんは全員乗り込み、ホームが空っぽになった。

 メロンパンを食べ終え立ち上がると、膝のうえからスマホを落としてしまった。何度落としてもキズひとつ入らない不思議なスマホなので、特に心配せず拾う。

 7分後に来た電車に乗ると、斜め前に網タイツの女性が座っていた。あいかわらず、防寒性がなさすぎる。なんで履いているのかはわからないが、そういう表現がけっこう好きだ。網タイツから足2本分空けて座る。イヤホンをポケットから取り出そうとしたとき、またスマホを落とした。これから電車に乗って、大学時代を過ごした街へと向かう。友人と、片思いだった人に教えたバンドを聴きたくなる。

”ゆがんでいることに 甘えながら” 過ごした、確信犯の日々を思い出す。

 スピッツ『さらさら』

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