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その『生』を刻み込め、ドールズ

三石琴乃ボイスで聴きたいタイトルNo.1(拙者比)

アイドル戦国時代の申し子

『プロジェクト東京ドールズ』(以下、東京ドールズ)は、2017年6月22日にスクウェア・エニックスからリリースされたスマートフォン向けアプリだ。
当時は『デレステ』によってスマートフォンアプリの表現力の向上が広く認知され、二匹目のドジョウを狙ったアプリが大量にリリースされている時期だった。

同年にリリースされたアプリをいくつか挙げてみると

・ミリシタ
・ガルパ
・歌マクロス
・ナナシス ※一度目の大型アップデート

などがある。
既にサービス終了したものを含めれば、同年にリリースされたアイドルモチーフのタイトルは数多く、いわば2017年は「アイドル戦国時代」とも呼べる年だった。

多くのアイドル作品が「リズムゲーム」という形をとる中で、「これがワイの答え(アイドル)や!」とスクウェア・エニックスが打ち出した東京ドールズは、「タップアクションRPG」という独自のスタイルを持って生まれてきた。
その戦闘システムは、タップタイミングの習熟や、ステージギミックへの対策、トライアンドエラーを必要とするなど、決して単純と呼べるものではなかった。
また、ストーリーにはダークファンタジーとも呼べる暗さがあり、他の多くのアイドル作品が「芸能活動」を主軸に据える中で、血なまぐさい戦場を描く本作は異彩を放っていた。

「アイドルという皮を被りつつ実態は本格派RPG」というミスマッチは、多くのユーザーを門前払いした一方で、一部のプレイヤーの心をがっちりと掴んだ。
結果として、比較的サービス終了が早いという印象を抱きがちなスクウェア・エニックスのゲームにありながら、東京ドールズは三周年を迎えようとしている

本稿は『東京ドールズ』の三年間の歩みを振り返りつつ、「アイドル」という看板を見て踵を返したり、リリース当初の難易度や、快適とは程遠いUIに匙を投げたプレイヤー、そもそも『東京ドールズ』を知らなかった方にも、今一度触れてほしい、知ってほしいという願いを込めてお送りしたい。

100万回死んだヒロイン

東京ドールズの物語は、ヒロインの一人『サクラ』(CV:本渡楓)が一度死んで、「ドール」として甦るところから始まる。
※注1:サクラはゾンビではないし、舞台は佐賀ではなく東京です
※注2:源さくら(CV:本渡楓)とは関係ありません
※注3:ゾンビランドサガのほうが後発作品です

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イベントCGとして用意されたサクラの死亡シーンは、多くのプレイヤーに驚きを与えた。腹部から血を流し絶命するヒロインは、アイドル作品においては異端児と言える。
この衝撃的な場面は、リリース前のプロモーションムービーにも使われている。

さらにこのシーンは、そのインパクトのためか、とにかく使用される機会が多い。
生放送の番組内ムービーとして、グッズショップの店頭ムービーとして、コラボカフェの店内ムービーとして、他作品とのコラボPVの中で……
日本全国のスマートフォン、さらに海外版アプリも含めれば、サクラが死んだ回数が軽く100万回を超えていることは想像に難くない。

物語の冒頭、生前のサクラは、アイドルグループ『DOLLS』のただのファンだった。
だが、一度死んでドールとして甦ることで、『DOLLS』(その実態はアイドルグループ兼、国家所属の特殊部隊)の9人目のメンバーとなったのである。

思い出せ、人として生きた証を

ドールとなった少女は、一度すべての感情と記憶を失っている。

サクラが加入する時点で、DOLLSの他の8名は長い時間をかけて、おおむね感情を取り戻している(※生前と同じ性格かどうかは定かではない)。
だが、サクラだけは例外的に、ドールになった直後にある程度の感情と記憶を得ている。これは、本作の主人公である『マスター』(=プレイヤー)がその場に居合わせた影響が大きいと思われる。
こうしてサクラと共に仲間に加わったマスターの助力を得て、DOLLSの9人は感情と記憶を取り戻していくことになる。

DOLLSの最大の目的は人類の脅威=ピグマリオンの殲滅だが、日々の訓練やアイドル活動、戦闘などを経て、失ったものを取り戻していくこともまた、東京ドールズの目的の一つである。

記憶を取り戻すための手段として、東京ドールズには『少女迷宮』という各々に内在する敵を倒していくためのコンテンツがある。
これをクリアして開放されていくエピソードを読むことで、彼女たちの記憶を紐解いていくことになる。

主人公の目の前で死んだサクラを除き、他のメンバーの死因の詳細は、サービス開始からこれまでずっと非公開だった。だが、三周年を迎える今、いよいよ核心となるエピソードが開示され始めている。
徐々に明らかになる推しメンの死に様に、プレイヤー達はやきもきしている今日この頃だ。

命日だぞ祝えよ

少し余談になるが、DOLLSの9人のプロフィールには、他作品にはあまり見られない項目がある。

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それは『ドール登録日』
ドールになった日、つまり人間としての生を終え死亡した、命日である。

本作において(メタ的な視点にもなるが)ドール登録日は、いわゆる誕生日のような扱いとなっており、ゲーム内でミニエピソードを見ることができたり、ドール限定ガチャが開催されたりする。
これを素直に祝って良いものなのか微妙な気もするが、東京ドールズ運営やプレイヤー達は割と普通に祝っている。

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「おめでとう」じゃあないんだよ。

三年間の足跡

東京ドールズのメインストーリーは、現在CASE01(第一部)の第一章~第三章を終え、CASE02の第二章まで進んでいる。
ドール同士の関係性や、防衛庁など他の組織との関係の変化などもありつつ、戦いは激化し、時には辛酸を嘗め、あるいは勝利し、CASE02の終盤に向けて盛り上がりが加速しているところである。
CASE01の第三章は非常に熱い展開だったため、今後展開されるであろうCASE02の第三章にも大きな期待が寄せられる。

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CASE01第三章において、傷ついたDOLLSの前に現れ「ここからは大人の時間だ」と自衛隊と共に戦線を支えてくれた防衛大臣の小鳥遊修一氏。
少年、少女が過酷な戦いを強いられる作品の多くで、とかく存在感の薄くなりがちな大人だが、本作ではその責任感を遺憾なく発揮してくれた。
今後の小鳥遊氏の活躍にも目が離せない。

なお、今から始めるプレイヤーのために、現在CASE01第一章のストーリーはゲーム開始直後から全て読めるようになっている。
三年分のシナリオはかなりのボリュームではあるが、ぜひともDOLLSの戦い、大人たちの生き様を見て頂きたい。

三年間の改善

ゲームシステムに目を向けてみると、リリース当初の東京ドールズは、音楽やグラフィックの完成度こそ高かったものの、少なくない問題を抱えていた

以下、2017年当時の私のツイートを引用する。

上記ツイート内の画像で挙げた不満点は、現在ではかなり解消されている。
スキル演出はスキップできるようになっているし、周回に関しても、スタミナ3倍、5倍といった消費手段を用意することである程度緩和されている。
ローディングも高速化され、特に再戦時は驚くほど早くなっている。

ガチャも改善され、ピックアップ衣装の確定入手手段が実装されたり、最高レアリティの排出率が向上したりしている。
リリース当初に比べ、プレイするうえでのストレスは大きく解消されているはずだ。

また、三年経った現在でも最高レアリティのURが必須ではないゲームバランスは保たれているし、UR無し攻略を続けているプレイヤーも多い。
長期運営のタイトルとしては良心的と言える。

その生命は世界線を超える

東京ドールズは、他作品とのコラボも積極的に行っている。
ひとつひとつ紹介していくとキリが無いので、ここでは簡単にタイトルだけ列挙したい。聞いたことのあるもの、馴染み深いものも多いのではないだろうか。

スクエニ作品コラボ
・スクールガールストライカーズ
・刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火
・LORD of VERMILION
・ヴァルキリーアナトミア
・オクトパストラベラー
・聖剣伝説3(予定)
他作品コラボ
・魔法少女まどか☆マギカ
・アズールレーン
・SSSS.GRIDMAN
・超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!
・オンゲキ
・フレームアームズ・ガール
VTuberコラボ
・キズナアイ
・アズマリム
・ミライアカリ(生放送MCとして)
リアルイベント・店舗コラボ
・ポタフェス
・コラボカフェ(STORIA)
・ポップアップストア(GAMERS)
実在人物
・吉田沙保里さん

驚くべきは、これらのコラボした作品などがほとんど今も継続中・存命であるということだ。もはや東京ドールズはアゲマンと言っても差し支えないのではなかろうか。
閉店が決まった池袋STORIA、及びアズマリムに関しては残念だったが、次に終了するのが東京ドールズでないことを祈るばかりである。

次元の壁を超えた記憶

東京ドールズは、二次元の世界に留まらず三次元の世界にも飛び出している。書籍化やCD発売などもさることながら、大きく目を引くのが「舞台化」である。

2019年2月27日~3月10日に『舞台プロジェクト東京ドールズ』は公演された。

私も千秋楽公演を観劇したが、まるでゲームの中の人物がそのまま現実に出てきたと錯覚してしまうような、素晴らしい舞台だった。

ブルーレイディスクは現在も公式通販で購入可能なので、外出自粛期間中にぜひ一度御覧頂きたい(ダイマ)。

実は、2020年4月~5月にかけて舞台プロジェクト東京ドールズは第二弾『GARDEN』を公演予定であった。
しかしながら、昨今の新型コロナウィルスの煽りを受け、公演は延期となっている。
楽しみにしていただけあって非常に残念ではあるが、キャスト、スタッフともに万全の状態で公演してくれることを期待したい。

なお、新型コロナウィルスに関連して、東京ドールズでは4月14日にゲーム内で特別なオペレーションが開始された。

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その内容はぜひ実際にゲーム内で確かめてほしいが、いわゆる現代ファンタジーを舞台とした作品だからこそできる社会貢献だと言える。
この試みに、私は惜しみなく賛辞を贈りたい

その『生』を刻み込め、ドールズ

スクウェア・エニックスは、スマホ向けに新規IPをリリースしては、早期にサービスを終了する印象が強い。
アリスオーダー、アカシックリコード、バトルオブブレイド、ディアホライゾン、サーヴァントオブスローンズなど、自分も期待を寄せていたタイトルの早期のサービス終了には残念な気持ちを抱くことも多かった。ラストイデアのサービス終了も本当に無念である。

こういった新規IPが生き残りづらい環境の中で、東京ドールズが現在も続いているのは、その独自性と、開発会社(ILCA)の姿勢によるところが大きいと思う。
悪食とも言えるコラボレーション、YouTubeチャンネルやWebラジオ、舞台などのメディアミックスの多角展開、それらに魅力を付加する情熱。
開発、運営に熱や愛を感じるタイトルは、プレイヤーとしても応援したくなるし、より多くの人に触れてもらいたいというのが素直な気持ちだ。

株主総会の資料に名前を挙げてもらえないなど、スクウェア・エニックス内での東京ドールズの扱いはあまり良くないようにも感じるが、松田洋祐社長を3Dモデル化してYouTubeに引っ張り出した勇気をもう一度振り絞って、せめてサービス終了前にNieRとコラボして2B衣装のDOLLSを見せてくださいお願いします。頼みましたよ。


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