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事務仕事のスイッチ 往復書簡#16

画家・小河泰帆さんとの往復書簡16回目です。
前回は絵を描くことの快感についてでした。

特に快感なのは描き出しとのこと、よくわかります。むちゃくちゃ気持ちいいですね。

あの気持ちよさの一番古い記憶はどれだろうと記憶をたどると、小学校にあがる前くらいの頃カレンダーの裏にしたお絵かきで、月の終わりに母親が壁掛けカレンダーを一枚破いて渡してくれて、お絵かき帳よりも大きなサイズの紙なので嬉しかったのを思い出しました。

真っ白くて大きな紙と向かい合っていよいよ描き出すときの高揚感、この手の記憶を忘れなかった人が、大人になっても絵を描き続けちゃうのかもしれないですね。

今回のお題はこちらです。

事務仕事、多くの人が苦手だと思うんですよね。でも発表してゆくなら避けることはできない。タシロさんはどうですか?作品やタシロさん自身からの印象ですとちゃんとしてそうな気がするのですが。。。
往復書簡#15より

そんな印象だったとは。私も苦手で、仕方ないからやるけど、やらないで済むならやりたくないですね。やっておかないと後で面倒だなと思えば、最低限だけ頑張ります。

絵を描く以外の仕事はいろいろありますね。
作品の管理、お問い合わせの返信、お金の管理、制作スケジュールの把握などに並行して、展覧会が近づけば、搬入出の手配、作品の梱包、展覧会の宣伝、案内状送付先名簿の更新、目が回ります。
特定のギャラリーと専属契約の方はまた違ってくるのでしょうけど、フリーの作家は全て自分でやることになりますね。

作品の管理については、遅いのですが、2年ほど前に全作品目録をやっと作ったんですよ。それまでは実はかなり適当で、恥ずかしながらお問い合わせの度に記憶を頼りにあたふたしてました。
これ作って良かったと心から思いました。気分的に宿題を終えてスッキリしたのもあるのですが、一気にやったせいか図らずして今までの総括ができたんですよね。作家としての自分を客観視できた感じがありました。その後も何とか更新できてます。おかげで、もう急な打診も怖くないですよ。

ちなみに目録は、作品写真にタイトル、サイズ、支持体と描画材、制作年、出品した展覧会名と価格、権利先の割合と期限、保管場所またはご購入いただいたお客様情報、備考を紐付け、独自の管理番号をふりました。この項目が妥当だったのかはよくわからなくて、他の作家さんはどうしてるんだろうと思います。

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作品は保管箱にいれてラベルを貼り、制作年順に並べてあります

その他諸々の事務仕事をするにあたり、自分が最も苦労しているのは脳みその切り替えな気がしますよ。制作している時と事務作業をしている時で、脳みその使っている場所が明らかに違う感覚があります。

制作時って、目に入るもの全てを絵面として捉えるスイッチが入っているようで、例えばデジタル時計が読めなくなるんですよ。08:08とか13:31を見て、形が可愛いよねくらいしか思えないんです。アナログ時計なら視覚で量が測れるので、長針の角度があと4分の1(90度)だけ進んだら寝ようとか、出かける時間まではあと半周分(180度)だなとか思えるのですけど。

この切り替えがちゃんとできれば、大方の事務仕事はそこそこやれるのですが、スムーズに切り替えられなかった場合のポンコツぶりがひどいですね。同一人物とは思えないほどのムラがあり、自分でも笑っちゃいます。


さて、次のお題。

展覧会の告知などの宣伝に関して、近年はSNSの力が欠かせないものになりました。お仕事の依頼も、SNSを通じていただく機会が増えていますね。その一方で、作品の写真をアップすることの弊害や、身バレの危険性の問題もあります。

小河さんは、かなりマメにSNS発信されているので、思うところも多いのではないですか。作家としてSNSとどのように付き合うのか、気をつけていることなどあれば教えて下さい。