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ひとり年末反省会と、違うということ 往復書簡#32

画家・小河泰帆さんとの往復書簡32回目です。
前回は自分の機嫌の取り方のお話で、なるほど~と思いながら読みました。

お料理、いいですね。煮豚とても美味しそうです。私も長時間ほったらかしの煮込み料理をよく作るのですが、アトリエと台所が一体化しているので、鍋をごく弱火にかけた横で制作してますよ。料理は美味しくできると嬉しいから、気分が上がっていいですよね。
炒めものとか、タイミングが重要な料理はたまに微妙な出来になります。これは部屋の配置に問題があって、料理しながら制作途中の絵が視界にはいるんですよ。料理作業中は手元をみていることが多いですけど、ふと顔を上げた時に絵が見えて、あの色は修正が必要だなとか、次はあそこに加筆しようとか、意識がふっと絵画制作の方に飛ぶんですよね。そうなると火加減調節のタイミングを逸することになりがちで、残念な結果をうみますよ。

運動はやらなくちゃと思いつつ、何やってもあんまり続いてないのです。1年カーブスに通ってるなんてすごいです。今は、肩首のコリが辛くなるとストレッチポールの上でグルグルする程度なので、もうちょっと何か運動の習慣づけをしたいと思いつつ、行動に移さないまま今に至っております。でも運動することで、自分の機嫌が取れるようになれたらすごく良いですよね。どうしたもんかな。

さて、次の質問ですが、10月になり後2ヶ月で今年も終わります。もう気持ちは年末になってきました。私は年内の締め切りをクリアしてゆくことと、来年に向けて制作の交通整理をすることをしようと思っているのですが、タシロさんは今年中にやろうと思ってることなどありますか?
制作のことでも生活のことでも何かありましたら教えてください。

往復書簡#31より

制作と平行して、やれそうならば、アトリエの大掃除と確定申告関連の準備ですね。
あとは年末に、脳内でひとり反省会みたいなものを実はこっそりやってますよ。こういうのって、鼻が利くというか勘の冴えてる作家さんや、とてつもなく体力のある作家さんは必要ないのかもしれませんけど、自分は自身の判断力をたいして信用していないので毎年やってしまいます。〆として、来年の抱負もちゃんと心の中にたててますよ。昨年末もやりましたが、今年の実現率は多分50%くらいですかね、まあだいだい毎年そんな感じの結果で、ゆるーくですがやってます。

今年は出品した展覧会が少なかったのですが、そのぶん例年よりも1枚1枚の作品とじっくり向き合えた感覚があり、とても良かったと思っています。こういう、発表の頻度と制作ペースのベストバランスを見つけるのは難しい作業ですね。自分をとりまく、時間・場所・体力・経済、あるいは単に実力不足などに基づく様々な制約のなか、できるだけ健やかな精神で制作を継続していきたいので、自分の性格を鑑みつつ、ちょいちょい検証しながら軌道修正を繰り返していて、そのための反省会です。

自分の性格と書いて思い出しましたが、先週まで私は4人展をやってまして、会期が長かったため出品者同士でお話しする機会が多くありました。理想の作家像やそこに至るまでの方法論って、作家によってかなり違いますよね。会話を通じて差異を確認して、とてもよい時間を持てました。
つくづく思ったのは、自分って頑固な性格だなということ。以前、作品講評で初対面の先生からも「あなた頑固ね、頑固な人ってこういう絵を描くのよ」と言われたことがあり(その後に「作家として重要な資質よ」と続いたので褒め言葉だったと思います)、作品と作家の性格が本当にリンクしているものなのかの真偽はさておき、私が頑固なのは間違いなさそうで、これはちゃんと自覚しつつうまく付き合っていかねばと思いましたよ。

他者との対話は、違いを掘り下げることで自分を深く理解できますね。自分の譲れないポイントが整理できます。この往復書簡連載記事にも、そういった面があると感じていて、お陰様で色々な気づきがあります。特に自分の、言語化についてのナーバスさには我ながらちょっと笑っちゃいました。非常におおらかな小河さんとの対比がすごくて。
連載は30回を超えました。まだまだ続けたいですが、いままで書いた記事を通じて何か思うこと、自覚したことなどあったら教えてください。