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[読書]医療って身近な話しなのに何か遠い感じがしてました💦

毎月テーマを決めて選んだ本の読書会をしております。
今月のテーマは「ユニバーサルヘルスカバレッジデー」

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態を指します。

国際連合広報センターホームページより

12月12日はその啓発や取り組みが行うための国際デーとして国連で設定されています。

それで、自分が選んだ本は↓↓↓

作者の広井さんは、厚生省勤務から、大学教授になられた方で、社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、死生観、ケア等をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行なっているそうです。

持続可能な医療(日本の場合)ってなんなんだろうか?本から考えてみます。

本のあらすじ

医療技術

アメリカ(比較の対象がどうかなと思いますけど)の医療に関する研究費は日本と1桁違う状況。医療技術としてはものすごく先に進んでいる代わりに、公的医療保険がなく、医療を市場に任せているので医療費は高い。
にもかかわらず寿命は相対的に短め。

ってことは、医療費は額が多ければいいという訳でないし、

  1. 社会全体の中でどれだけの資源やお金を医療に分配するか?

  2. 医療の内部において、そのどの領域に資源を分配するか?

という論点も混ざっている。
また、医療の在り方は生産や消費、格差や労働のあり方を含む社会全体のありようと密接に結びついていて、「持続可能な医療」は医療以外の分野を考慮して「持続可能な社会」と一体で考えないといけないと筆者はいいます。

政策としての医療

持続可能な医療を考える時に、具体的に「政策としての医療」という議論が必要ということで、以下の3つの点について述べている。

1.医療費の配分

①医療費の配療における様々な領域に関する配分

 A.研究開発・高度医療
 B.予防・健康増進
 C.介護・福祉
 D.生活サービス・アメニティ 

「医療費」ということには、各国で明確な定義がないので、どのサービスまでを医療費と呼ぶのか、公的資金をどの領域まで投入するのか?とったことについて議論をしなければ適切な領域に配分をすることができない。
 医療ということで、いわゆる医師や看護師が患者に直接対応する部分のみだけを考えていては、広義の医療ともいえるような必要不可欠な周辺サービスに医療費が回らないということがすでに起きている。

②病院-診療所(ないし医療機関の機能)に関する配分

 A.「病院、とりわけ入院部門」の評価が低い
 B.「高次医療」への評価が薄い
 C.「チーム医療」の評価という視点が弱い
 D.「医療の質」の評価という視点が弱い

全体として診療所には潤沢に医療費を配分するが、一定以上の規模や高次機能の病院への配分は極めて不十分。
1957年にできた保険点数制度設立時には医療機関の大多数が診療所だった制度思想が今も続いている状況。
制度の根本が変わらない一つの理由として、医療機関の1票=病院長の1票みたいな感じなので、診療所の数が多い状況だと政治が病院への配分に目が向かないという話のようです。

2.医療における公私の役割と公共性

「医療供給」の公・私とは、病院などの医療機関が公立中心か、民間中心かを指しており、「医療財政」の公・私は、医療をめぐるお金の流れが公的な仕組みか、市場経済に委ねられているかということ。
日本は、「医療財政」は公的で、「医療供給」は民間中心のアメリカ以上に私的独特な構造になっている。

3.医療政策の目的ないしゴールとは何か

医療政策の目的ないしゴールとは何か?
自明のようでそうでもない。
その時の議論により、「医療産業の成長」「医療の国際競争力の強化」、「医療費の抑制」などが最大の目標のように議論されるが、それらが最終的な目標ということでは当然ない。

筆者は医療政策のゴールとして、「健康(”不健康”さも含むような大きな概念。決して完全な身体的状態や衛生状態をいうのではない)」があって、その先、幸福につながるという考えを持つことが必要と述べている。

ケアとしての医療

医療は「サイエンス」の側面と「ケア」の両面をもつ領域である。
「ケア」の側面には、コミュニティ、社会、倫理、死生観など、とてつもなく広い領域が含まれている。

ということで、

  • ケアとしての医療

  • コミュニティとしての医療

  • 社会保障としての医療

  • 死生観としての医療

についての課題が述べられています。
この辺の内容もなかなか考えさせられるものですので、ぜひ本を読んでみてください。

感想

この本からとくに考えた問いは、医療のゴールってなんだろう?ってこと。

日本に住んでいる自分としては、「死なないことが正義」みたいに感じることが結構あります。
もちろん、生きていればなんとかなると思います。
ただ、一方で無理矢理に近い延命措置が、それを受ける人のQOLをどれほど維持できるか?
この辺、個別の事情によるし、目の前の家族がどうにかなりそうな時にこんなこと言ってられないハズです。

緩和ケアもよく聞くようになりましたが、まだ身近に気軽にというわけでもないようです。
(↓少し前の記事ですが…)

判断を迫られたときにはじめて考えようとすると、いままでの流れになりがちなんだと思います。

医療のこと、普段考えないかも知れないけど、医療従事者の方や行政に任せっきりにしないで、私たちが、いろんな選択肢を日頃から考えるのが、いろんな取り組みが社会に拡がる土台づくりになって、結果、持続可能な医療につながると感じました。

ユニバーサルヘルスガバレッジデーは12月12日です。
みなさんも、医療の持続可能性について思いを馳せてはいかがでしょうか。
以上

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