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日本で1番綺麗な夏空が撮れる島(旅行記)

 日陰が涼しい。
夏の暑さは本土と変わらないが、日陰の涼しさが都会とは比べ物にならないくらい涼しい。きっと、昔の日陰はこれくらい涼しかったのだろう。
聞こえるのはツクツクボウシの声と葉擦れの音、そして海から時々聞こえてくる船の汽笛くらいだ。

家島

名前は聞いたことがあったが今まで訪れる機会はなかった。
姫路駅からバスと高速船で1時間弱
オリーブや醤油で有名な小豆島と比べるとどうしても影が薄い。

けれど、この島にはこの島にしか出せない良さがある。
真浦港から家島に上陸した私はすぐにそう感じた。

観光に染まりすぎていない。

例えば、今の京都などは外国人観光客が多く、完全に観光で食べている。
それが悪いことではないが、そこに暮らす人々の姿はまるで見えてこない。
言ってみれば、東京や大阪のテーマパークと同じようなプロなのだ。

観光のプロ

店の人たちは英語も中国語も韓国語も対応できる。
観光で食べている街はどうしてもその影響が滲み出る。

この島はそんな気配がまるでなかった。
もちろん、観光案内所(家島港ふれあいプラザ)はあるし、いくつかの場所には観光地図が設置されていた。しかし、観光で食べている街が放つサービス精神とは無縁だった。

島の人たちは普通に歩いて普通に暮らしている。
かと言って、観光客に排他的な訳では決してない。
むしろ、道を聞いた私に笑顔で対応して「楽しんでいってね」と声をかけてくれた。

島で最初に私を出迎えたのは黒猫だった。家島は猫が多い島であちこちに猫がいた。
真浦港にある観光案内地図、これから英語表記になる予定もなさそう

私は気になって家島の産業について調べてみた。
海運業と漁業、採石業が主な産業で特に漁獲高は全国有数らしい。
これで納得した。
この島の人たちは、瀬戸内海と共に生きている。
島に漂うおおらかさはきっと海の恵みがあるからなのだろう。

真浦港には多くの船があり、修理作業をしている船もあった。


修理されている船
家島の玄関港の真浦港にはさまざまな船が行き交う

真浦港を見下ろす形で撮りたかったので、私は島の北側に向かった。
島の人たちの主な交通手段は原チャと軽自動車、年を取った人のためのコミュニティバス(と言っても中型のバンで一般的なバスではない)だ。
島の道は狭いところも多く、大きな車は通れないのだ。


コミュニティバスのりば、ベンチや屋根といった贅沢品などない

私は写真を撮るために歩いたがすぐに後悔した。
坂が多い。
レンタルサイクルを案内所で借りなかった事を悔やんだ。

それでも日陰に入れば涼しいのが救いだった。
コンクリートジャングルでなければ、木の陰はこうも涼しくなるのかと改めて気づいた。

真浦港に戻り、家島港ふれあいプラザでレンタルサイクルを借りた。
600円で1日使い放題だった。
他にも電動アシスト自転車もあるようだが、目先の安さに釣られて普通の自転車にした。これを後で深く後悔することになるのだが。

今回の目的地である家島神社は島の南東にある。
海風を頬に感じながら、自転車を漕いだ。

途中にあった中華料理屋、しっかりと営業している

途中の道は狭く、後ろから来る車を避けるために自転車を降りて道端に寄ることもしばしばあった。

家島小学校のある地域一帯は、家も多く1番のメインストリート?になっている。ちなみにお土産屋とかはない。

ここにも多くの船が停泊している
港から見る夏空はまぶしい

ここからさらに東に進む。
道と海の距離が近い。

釣りをする御老人、いったい何が釣れるのだろう

やがて、北の方に本州が見えるようになってくる。
この日は晴天ということもあり、はっきりと見えた。

家島神社に行く途中で撮った写真。本州がはっきり見える

個人的にはこの風景だけでも、家島に来る価値はあると思う。
これより綺麗な夏空を私は見たことがない。



少し行くとこんな石碑を見つけた。

近くの説明文を読むと、菅原道真が太宰府に左遷された際に家島に寄ったという。それがこの「詩ヲ書キ場」らしい。


家島神社に到着した。

神社はよくパワースポットだと言われるが、家島神社は鳥居をくぐると一気に空気が変わる。どこか厳粛な雰囲気がある。
長い石段を息を切らしながら登ると本殿があった。
南側には他の家島諸島の島が見える。


石段を登り上に着くと男鹿島(多分)が見えた

本殿で神様に祈る。
そして、おみくじを引く。大吉だった。
人生初めての大吉が出た。

本殿へと行く道
おみくじもセルフサービスの時代

私はすっかり舞い上がり、もらった観光マップを見て、島の南側の道も行ってみるかと自転車を漕いだ。

なぜ分からなかったのか。
マップを見れば島の大半は山である、つまり坂ばかりだということに。
家島中学校あたりまでは大丈夫だったが、そこからどんどん坂が急になりはじめる。坂、坂、坂
汗が無限に噴き出してくる。
水を飲むもヨーグルト風味で甘く飲んだ気があまりしない。
これを買ったのは家島港ふれあいプラザだが、これ以外のペットボトル飲料は売り切れていたのだ。理由がよくわかった。

何度も休憩を挟みつつ、それでも息を切らしてひたすらに歩く。

かなりの急勾配、当然自転車から降りて歩く
坂を登った先にまた坂、絶望しかない

ようやっと島の頂上部にたどり着く。
ここからは北に本州が南に他の家島諸島が同時に見える。
日陰で休む。息を戻すのに5分くらいはかかった。


北には本州が見える。手前にはソーラーパネルも置いてある。
振り返ると他の島が見える。

散々な目に合ったが、島の中心部を上から撮る事ができたのは怪我の功名だった。

こうやって上から見るのも魅力

お腹も空いてきたので、昼ごはんにしようと思ったが、予定していた食事処は閉まっていた。先の坂道で体力もあまり残っていない。
近くを軽くうろついてみたが、食べれそうなところがない。
というかスーパーすらない。
デイリーヤマザキが1軒あるだけだった。
カフェを見つけたがそこも閉まっていた。
後から知ったが、この島で食事できる場所は10ヶ所ほどあるそうだ。
(家島港ふれあいプラザに食事できる場所が書いてあったが、それに気づいた時既に私の体力は0だった)

最初の予定では坊勢島にも行くつもりだったが、体力尽き、空腹のため、姫路に戻る事にした。

素晴らしい夏空を見せてくれた家島、次に来た時は必ず島の美味しいものを食べようと心に誓った。



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