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連載小説『意外と知らない父のこと』

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#彼岸花

第七話 「彼岸花」

後日、両家はもめた。それもそのはず、大事な桶一つが、売りものにならなくなったのだ。城戸酒造の損害は思ったよりも大きい。沖田家は、深く謝罪した。そして、その日から、新之助は更に荒れた。沖田の子供たちも、それ以来、あまり家に近づこうとはしなくなった。たまに沖田の家から、新之助のものと思われる怒号が聞こえてきて、幸男はそれを聞くのが、たまらなく嫌だった。  ある日、幸男が学校から帰ると、母の睦美が、神妙な顔で玄関で待っていた。促されるように、居間へ入ると、そこに、あの昌平が立ってい