ゲームデザインシミュレータでブロックチェーンゲームのエコシステムを理解する
こんにちは。垂水ケイです。
ゲーム業界とは無縁なので実際どれくらい使われているのかは知らないんですが、世の中にはゲームデザインシミュレータというものがあります。ゲームの基本的な難度調整やレベルアップ、ガチャの排出率からクラフト関係まで色々とシミュレーションしてゲームデザインの構築に役立てることができます。
最終目標は、ゲームデザインシミュレータであるmachinationsを使ってブロックチェーンゲームのエコシステムを構築し、NFTやトークンの動きを理解してみようというものです。続編を出すかは反響次第ですが、今回は簡単なシングルトークンエコシステムっぽいシミュレータをつくってみます。
実際にシミュしてみると、「あーこれは新規マネーないと死ぬわ」とか「あーこれはNFT飽和すると死ぬわ」とか見えてくると思います。所詮シミュだと言ってしまえばそれまでなんですが、「おれのかんがえたさいきょうぶろっくちぇーんげーむえこしすてむ」を一緒に考えてみようぜ。
machinationsとは
ゲームデザインのシミュレーションを行うブラウザベースのツール
エクセルレベルの関数が使えれば使えるローコードツール
コンポーネントを接続していくだけでゲームフローを構築できる
STEPごとに処理を進め、経時変化をグラフで視覚化できる
今回使うシミュレータはmachinationsというやつです。化学工学の世界とかで使われているプロセスシミュレータだと、aspenとかpro2とかあるんですが、これはゲーム向けにもっとシンプルにしてくれたものです。
machinationsでは、ゲームのイベントやアイテムなどの構成要素を矢印で繋ぎゲームフローを構築して実行することができます。例えば、「敵を倒す」→「経験値100もらう」→「1000に到達したらレベルアップ!」みたいなフローを作り、100日後にはレベルいくつになる?とか、経験値200だったらどうなる?とかシミュレーションする感じです。(実際はもっと複雑なこともできます!)
machinationsはコミュニティとドキュメントが非常に充実しているのも特徴的で、めちゃ丁寧なチュートリアルがあったり、既存ゲームのシミュレータが公開されていたりするので、シミュレータ初学者でもとっつきやすいです。サイトのトップページで動いているのが、マリオブラザーズのスコア計算シミュだしね。
エクセルで頑張って計算したことのあるブロックチェーンゲーマーならピンとくるかと思いますが、machinationsを使うと収益を上げるための最適ムーブ的なのもシミュレーションすることができますし、マクロに拡張していけばエコシステムをシミュレーションすることもできるわけです。
実際に、machinationsのメインメニューの中には「web3」の文字も入っていて、エコシステムの評価を請け負っているみたいです。
machinationsの利用が公開されているゲームはこんな感じ。Cooltopiaがあるからって不安がらないでくださいね。
machiinationsの基礎知識
詳しい使い方はドキュメントを見ていただくとして、ここでは今回のシミュレーションで使うフローの見方やアイコンの役割を説明します。
SourceとPool
三角形のアイコンがSourceです。ゲームで扱うソースを発生させてくれます。ソースが具体的に何かは設計者が決めることで、経験値でもトークンでもなんでもOKです。上図では「ゲームをプレイすると100枚のトークンを発生させてくれるやつ」になります。
三角形で発生した数字は、矢印の先にある丸いPoolに蓄積されます。1日100枚トークンを稼いでいるので、トークンPoolには毎日100枚ずつトークンが貯まっていきますね。
Converter
Converterは、ソースを別のソースに変換してくれます。右向きの三角形に棒が刺さっているアイコンです。経験値がレベルになったり、トークンがNFTになったり、トークンが利確されてUSDになったりするイメージです。上図は外貨100枚で1個のNFTを買ってるフローです。
Gate
菱形のアイコンはGateです。Gateに入ってきたソースを分配することができます。ランダムで分配する設定もできますし、上図のように比率を設定することもできます。ランダムだとガチャの実装とかに使えるイメージですね。
1日100枚稼いだトークンの80%は再投資、20%は利確ってのを表現したフローです。BCGっぽい!
Register
今回紹介する最後のアイコンは黒い四角のRegister。これを使うとだいたいなんでもできるようになります。Registerには、式を入力することができ、Poolの値を引っ張ってきたり、Poolやソースの移行数などに数値を出力することができます。
上図では、NFTの数とNFTあたりの収益効率という数字を「収益計算」のRegisterで(NFTの数)×(NFTあたりの収益効率)を計算させ、1日あたりの収益に出力しています。NFTを買うなどしてNFTの数が増えると、1日あたりの収益も増えるようなフローになっています。
machinationsの基礎はこのあたりにして、次はシングルトークンエコシステムについてざっくりと説明していきます。
シングルトークンエコシステム
最近主流なエコシステムは、インフレ型のユーティリティトークンとデフレ型のガバナンストークンとNFTからなるデュアルトークンシステムです。STEPNとかAxieのやつですね。ただ、いきなりシミュレーションをするには少々複雑すぎます。
ということで、今回はシングルトークンエコシステムのゲームについてシミュレーションしていきたいと思います。AXSが出る前の初期のAxieやJobtribes、GodsUnchainedあたりが例として挙げられます。
ゲームフローを構築していくために、まずは主要構成要素やNFT・トークンの動きをイメージしておきます。
トークン
NFT
外貨(エコシステム外のお金という意味)
シングルトークンエコシステムの主要構成要素はこの3つです。PlayToEarnのゲームフローは次のようになります。
外貨を使ってNFTを入手する。
NFTを使ってトークンを稼ぐ。
トークンを再投資/消費して強くなる。
さらにトークンを稼ぐ。
トークンを売却して外貨を得る。
これを図でかいてみるとイメージが固まってくると思います。
実際はNFTを買うのがトークンのパターンがあったりと、ゲームによって色々と細かい違いがありますが、大まかな理解は上図でいいでしょう。
それではmachinationsでゲームフローを作っていきます。
ゲームフローを作ってみる
今回は個人のプレイヤーがNFTを買って、レベルアップの再投資をしながら利確をしていくというフローを作ってシミュレーションをしてみようと思います。作っていく過程をダラダラ書いても仕方ないので、まずは完成品をどうぞ!
ポイントを解説します。
左上の「外貨」から1回だけ外貨100枚でNFT1個を買う(初期投資)
ゲームをプレイしてトークンを稼いでいく
稼いだトークンは「トークンの使い道Gate」で再投資Pool80%、利確Pool20%に分配される
「再投資Pool」からトークン100枚消費につきNFTのレベルが1上がる
NFTのレベルが上がると1日あたりの収益が上がる(今回のモデルは100+SQRT(NFTのレベル+1)とした)
利確Poolからトークン10枚と外貨1枚を交換
利確で得た外貨が増えていく
右上のSTEPは現在のSTEP数で、1日あたりの収益で計算しているので1STEP=1DAYと考えればOK
machinationsでは、STEP変化をグラフ化することもできます。
このシミュレーション結果だと、STEP19(19日目)で原資回収できますね。なんかそれっぽい。NFTのレベルがガンガン上がるので30日目には利確で得た外貨が300枚に到達します。すごいぞ!
いかがでしょうか。ブロックチェーンゲーマーなら、このモデルの欠陥に色々気づくと思いますが、そこはまぁ最初ということで!
一応改善の方向性だけあげておくと、
個人のゲームフローだから、そもそも全体のエコシステムシミュレーションとはちょっと違う。
トークンを同じ価格で利確し続けられるわけがない。→DEX実装
LVが上がっていくと必要なトークン数も増えるでしょ。
NFTがmintで増えていくパターンは?
などなど、やれることは山積みです。
まとめ
machinationsというゲームデザインシミュレータを使い、シングルトークンエコシステム内のプレイヤー個人のゲームフローを構築してみました。エコシステムへ拡大していくために必要な実装はまだまだ山積みですが、シミュレータの可能性が少しでも伝わったら嬉しいです。
興味ある人がいそうなら、今後twitterの方でもシミュレーションとか呟いていこうと思いますのでフォローお願いします!
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