見出し画像

カンボジアを生きる わたしたち ~カンボジアで出逢ったステキな女たち、男たち、そしてわたし~ 65.裏口入学状態

 クラスの仲間と打ち解けながら過ごす中、ある問題が私にはあった。それは、大学生活1年が過ぎたのに、いまだに教育省から正式に私の入学許可の書類が学校に届いていないということだった。

 教務課から再三、「ユキ、教育省はなんと言ってきているのだ?」と聞かれた。このままでは、正式に学生証も出せないし、宙ぶらりんの状態になってしまう。クラスのみんなも心配してくれた。

 あるクラスメイトは「少しお金を包んだほうがいいのでは」と耳打ちしてくれた。
 私は、「大学に入るということだけで裏金を要求してくる国だったら、私は正式に大学を卒業できなくてもいい。教育というフィールドで、そんなことはしないで欲しいし、そんなことはないと信じたい」と返した。みんなは口を閉ざした。

 ある日、教務課の先生が教えてくれた。

 「この間教育省に行く用事があって、大臣室に入って書類の山をみたら、ユキエの書類が一番下にあったよ。だから、一番上においてきた」。

 そして、しばらくして、教育省のおじさんが、私の家を訪ねてきた。副大臣の署名が入った正式な入学許可を持って。おじさんによると、私のレターを受けて教育省内で何度か会議が行われたのだという。そして、私費留学制度を作るべく、これから省令を作るので、その中で学費についても記載されることになる。その省令が出たら、1年生分から学費を払ってもらうことになるかもしれない。

さて、その学費がいくらになるのかな?という不安はあったものの、私は喜んでそのレターを受け取り教務課に提出した。

 数ヶ月して、教務課の先生がニコニコして、私に学生証を渡してくれた。これで正式な学生になれたのだ。クラスのみんなも、心から喜んでくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?