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カンボジアを生きる わたしたち ~カンボジアで出逢ったステキな女たち、男たち、そしてわたし~ 69.蛍の光

 2年も終わりに近づくと、クラスの中の何人かがアルバイトを始めていた。私のグループのサビーとシノダーもNGOなどのインターンや地方リサーチのバイトを見つけ、積極的に外に出るようになった。私はもっぱらレスマイと一緒にいることが多くなり、彼女といろいろなことを話した。彼女は文学賞のコンテストに、詩や小説を出品する文学少女だった。ある日、「後悔」という題名の小説を出したのだと話してくれた。その年は受からなかったが、彼女が何か思いを秘めた子なのだということがわかった。もうすぐ2年も終わり。テストの季節がやってきた。

 私のテスト勉強は、それはそれは壮絶なものだった。何がって、とにかく丸暗記。テスト問題が事前に出されているものの場合は、その答えを用意して、全てを暗記した。その中から数問が出るという形式だ。丸暗記をするために、私はひたすらその答えを紙に書いて覚えた。

 ある日、私の住んでいる長屋が停電になった。いや、停電はしょっちゅうあったのだけど、明日がテストというその夜だった。徹夜で試験勉強をやろうと思っていたのに。それは困る。どうにかして、助けて...。

 半べそを書きながら蝋燭をつけて、途方に暮れていた私に光が射した。
 窓の外を見ると、なぜか外はとても明るい。うちのアパート以外の家には電気が来てるのかな?と思ってベランダに出ると、やはり近所には電気が来ているようだ。でもそれだけではこんなに明るくならない。不思議に思って空を見上げると、そこには輝く満月が。

 それから私は夜遅くまでベランダに座り込み、近所の電気と月明かりで明日のテストの丸暗記を決行した。その私のBGMは「蛍の光」だった。

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