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カンボジアを生きる わたしたち ~カンボジアで出逢ったステキな女たち、男たち、そしてわたし~ 76.学生のデモ

 選挙が終わり、混乱が続いた。選挙が不当だったといって、野党やその他の勢力がデモを起こし、そこに学生が参加していた。大混乱の中で、また大学が始まらなかった。先生に聞いてもいつ新学期が始まるかわからない。私も外に出るのも怖くて、毎日新聞記事を翻訳して、町の様子に思いをはせた。このデモの中にはうちのクラスの子たちはいるのだろうか・・・。

 ある日、クラスの友達から電話が来た。
 「あんたはデモに参加しているの?」
 「いや、していないよ。大丈夫だよ」

 安心したが、もしかしたら彼はデモに参加していたのかもしれない。電話では、参加しているなんて大きな声で言えなかったのかもしれない。とにかく、クラスの仲間が無事であって欲しい。政治の混乱に巻き込まれないで欲しい。そう思った。

 そもそも、私がプノンペン大学に行きたいと思った理由の一つに、次世代を担うカンボジアの若者が、自分の国をどう見て、どう考えて、どう行動するのかを見たい、ということもあった。いつか学生運動とかが起きるのだろうか。そんな風に思って、クラスの子たちといろいろ話をしてきた。

 1学年上の男性で、どうやら野党の活動をしているらしい人がいた。彼は私によく声をかけてくれて、時々バイクで家に送ってくれたりした。でも、ソティア先生から「ユキエ、彼とは少し距離を取った方がいい」と言われた。仲良くしていると、私もそっち側だと思われたら大変だからと。そして、そのうちその先輩は大学からいなくなった。

 とても難しい時代だった。でも、どうにか彼らが自分たちの国の未来を、希望を持って語れる、そんな国になってほしい。ずっとそう思っていたし、今でも思っている。

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