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カンボジアを生きる わたしたち ~カンボジアで出逢ったステキな女たち、男たち、そしてわたし~ 12.大家さんちのおばあちゃん


 そんなこんなで、観光省の日本語クラスがスタートし、昼に1クラス、夕方1クラスを終えて帰宅する毎日となった。

 夕方家に戻ると、たいてい大家さんちの子供たちが外で遊んでいるので、一緒に話をしたり、遊んだりするようになった。お母さんはあまり見かけなかったけど、たぶん親戚の人が子守りとか家事をやっていたんではないかな。私より年下の女の子が、子供たちの面倒をよく見ていた。自転車を預かってもらっているので、必ず大家さんちの誰かと会うことになる。その中におばあちゃんがいた。

 歯がすっかり抜けてしまっていて、何をしゃべっているのかわからないんだけど、おばあちゃんはよく私に話しかけてくれた。カンボジアではキンマの葉っぱと石灰の「噛みたばこ」があり、老人になるとそれをたしなむ人が多いよう。おばあちゃんもしょっちゅうもぐもぐもぐもぐ噛みながら、口の中を朱色に染めて(噛むとこういう色が出るそう)いた。日本の「お歯黒」みたいなイメージ。

大家さん家族2

 で、ある日おばあちゃんが私に何やら話をしてくれた。通訳は親戚のお姉さん。なんでも、第2次世界大戦中に日本軍が侵攻した時期があったのだという。へぇ。東南アジアの中でもシンガポールやタイなどでの侵攻については何となく聞いたことがあったけど、カンボジアにも来ていたんだね。

 でも、日本軍はカンボジアではあまり「侵略」的なことはせず、とっても友好的だったのだという。そしてその証に・・・。

 おばあちゃんは日本の兵隊さんと恋に落ちたのだと!

 まぁ、恋バナ??素敵。
 おばあちゃん(親戚のお姉さんの通訳とおして)曰く、「日本の兵隊さんはとっても礼儀正しく、規律があって、素敵だった。村の人たちにやさしくしてくれて、若かった私もあるヒトと恋に落ちたのよ」。

 へぇ。どんな時代だったんだろう。想像が膨らんでいく。でも、日本軍が撤退することになり、その兵隊さんもいなくなってしまったとか。ああ、戦時中の淡い恋物語。

 そんな話を聞いていて、「でも、もしおばあちゃんがその兵隊さんと結ばれていたら、大家さんも孫たちもみんな生まれていなくて、私もこのおうちを借りたり、こうやっておばあちゃんとお話することもなかったのかもね」なんて言ってみた(伝わったかどうかわからないけど)。

 きっと若いころは綺麗な娘さんだったんだろうおばあちゃん。それから毎日会釈をしたり、お話をするのが楽しくなりました。

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