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#私が管理本部長だ!

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こんな人たちいっぱいいる!会社の管理側から見た社内の色んな景色を描いた小説『私が管理本部長だ!』をまとめました。成長期の会社にありがちな問題点をバッサバサ切り刻みながらも憎めない…
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2020年5月の記事一覧

私が管理本部長だ! vol.11

小さな嘘の見抜き方みんな嘘をつく。それは普通のことだ。 だが、一言で『嘘』と言っても色々な嘘がある。 自分の身を守るための嘘。 誰かを庇うための嘘。 自分自身に対する嘘。 ただその中でも、『自分の身を守るための嘘』はとても見抜きやすいものなのだ。 ***** 私の業務は午前中が忙しい。 店舗に何らかの問題があったりすると、当日は誰かしらが取り急ぎの対処をして、私にはその翌日の朝に報告やら根本解決の依頼やらが流れてくるからだ。 そしてその日は、店舗のゴミをルート回収

私が管理本部長だ! vol.10

さらば労働基準法 後編橋間とのやりとりから3日ほど経った頃、阿部取締役から電話があった。 「高良川くん、橋間と結構やりあったんだって?」 ん? 「・・あの、いったい何のことでしょうか?」 本当に心当たりがないが、まさか。。 「そんな隠すほどのことでもないだろう?そりゃあ君は管理本部長と言う立場だから、一度決めたことを変えられるのは面白くないということくらい私にも理解出来るよ」 「・・もしかしたら、伊勢谷くんの件ですか?」 電話の向こう口から、やっぱりなと言わんば

私が管理本部長だ! vol.9

さらば労働基準法 前編私は思ってしまう。 『労働基準法』とは、中小企業や零細企業の利益を一切考えず、従業員一人に対して年間で最大40日間ものサボりを認め、たかだか日が暮れてから仕事をするだけで1.25倍、さらには1.5倍もの賃金を発生させる恐ろしい法律である。 国は、企業には良心が無く、個人には良心があるものと勘違いしている。 昨今、義務を果たさないままに権利の主張ばかりをする人間が増えてきた。そしてその主張は、常に決まって独善的で、自己中心的なものなのだ。 ****

私が管理本部長だ! vol.8

旅の恥はおすそ分け旅に恥はつきものだ。 キレイな景色に美味しい食べ物、なかなか出来ない貴重な体験などなど。そんな中でテンションが上がってしまい、いつも以上に大きな声を出してしまったりちょっと変な行動をしてしまったりするのは仕方のないことだ。 ただ、それが自分の望んでいない形で起こることは不幸以外の何ものでもない。 ***** 「5月の幹部研修は、那須に行きます」 3ヶ月に一度行われている早朝幹部会で、専務がそう発表した。 「かねてから社長から提案のあった幹部研修です

私が管理本部長だ! vol.7

社内恋愛はほどほどに エピローグ神野が会社を辞めてから2年が経った。 その日の私は、ちょっとした用事があって学芸大学店に向かっていた。 日曜日だったこともあり、学芸大学店の改札を出てすぐの商店街は、人通りが多く活気に溢れていた。 「高良川さん!」 ななめ後ろから、女性の元気な声で呼び止められた。 「高良川さん、お久しぶりです!私のこと覚えてますか?」 そこに立っていたのは神野だった。 「ああ、神野さん、久しぶりですね。あれ?家ってここの近くでしたっけ?」 私の記

私が管理本部長だ! vol.6

社内恋愛はほどほどに「社内恋愛に関してどう思いますか?」 とよく聞かれる。 一説には『社内恋愛が多い会社は伸びる』なんてことも言われている。 女性がパートナーを選ぶ際には安定や将来性を求める場合が多いことから、社内恋愛が多い会社は女性からは『安定していて将来性がある会社』と見られていて、事実そういった会社では社内恋愛が多いとのことだ。 私は思う。 社内だろうが社外だろうが、恋愛は恋愛だ。そこには良いも悪いもない。変に『会社』というものを意識に絡ませるからややこしくな

私が管理本部長だ! vol.5

武士の情けと隠し事 後編「社長、今日はごちそうさまでした」 支払いを終わらせた社長を外で出迎えた私は、頭を下げてお礼を言った。その私の言葉に続き、竹原と堀も「ごちそうさまでした!」と声を上げた。 「おお」と軽く右手を上げた社長は駅の方向へと向かい始め、私たちもその後に続いた。 ***** 「あ、社長、駅はこっちですよ」 すぐ右手にある地下鉄の入口を通り過ぎようとする社長に、竹原が声をかけた。 「あー、、いいんだ。このまま進むぞ」 「・・え、あ、はい。わかりました

私が管理本部長だ! vol.4

武士の情けと隠し事 前編私は暑いのが大の苦手だ。 暑いとそれだけで頭が回らなくなり、そんな自分にイライラしてしまう。 だから夏になると、極力誰とも会わないように心がけている。 ***** それは猛暑と呼ばれるある日のことだった。 「高良川さん、社長がお呼びですよ」 私がお昼に出ている間に、総務の春川のところに連絡があったらしい。 「ああ、ありがとう。今日の社長のスケジュールは・・・」 「今日は終日在室予定となっています。高良川さんはお昼で出ちゃってますと伝えたら

私が管理本部長だ! vol.3

おしゃれの境界線「椿原くん、パンツが出ていますよ」 「ああ、これは腰パンなんで大丈夫ですよ」 ここ数年、こんな会話が増えてきている。 特に20代の従業員との会話に多いのだが、私にはその『大丈夫』の意味がよくわからない。 答えは未だに探し中なのだ。 ***** 私は、月に一度は全店舗に顔を出すことにしている。 電話やメールだけの関係だと、知りたいことがよくわからなかったり、伝えたいことが思ったように伝わらなかったりすることがあるからだ。 だが、直接やりとりしたからこ

私が管理本部長だ! vol.2

経費削減依頼「高良川くん、不必要な経費を削減してくれたまえ。君も知っての通り、我が社は営業に特化した会社だ。現場の人間では前向きな意識が強すぎて、散財に気が付かないこともあるだろう。任せたよ」 専務のありがたい言葉である。 週に一度のキャバクラとゴルフを止めればそれだけで年間200万以上の経費削減になるのだが、それは今言うべきタイミングではないのだろう。 「わかりました。最善を尽くします」 私はそう言って、一礼の後に専務室を後にした。 ***** 私はまず、もっと

私が管理本部長だ! vol.1

私は管理本部長中小企業は色々と難しい。 飾りのような社訓に感銘を受ける従業員などいるわけもなく、都度変わるルールに翻弄される毎日だ。 それでも、創業者の社長が営業力強化に特化して育て上げた現幹部たちの手腕もあり、今では首都圏内に14店舗を展開するに至る。 まだまだこれからだがイケイケの会社。 私、高良川義彦は、そんな会社で管理本部長の職務に就いている。 ***** ちなみに私は、大きなものに関してはウォシュレット付きの便器でしか用を足さないと決めている。 私のケツ