ゲーム実況は、配信者の側面を見るコンテンツ

ゲーム実況というものがエンタメとして、ないし仕事として成り立つようになるとは当時思わなかった。
ゲーム実況黎明期、ニコニコ動画でポケモンの実況を見る事に夢中だった。ランキングをチェックしお気に入り動画の新着があがるのを今か今かと学生時代ワクワクしていた。



元々ポケモンが好きなのもあり思い出深い初代、彼の初プレイに手に汗握って応援したものだ。ライバルとの最後の戦いはあまりに熱く、フリーザーにマスターボールを投げた決断をした時も、プレイ済みの人からしたら「ミュウツーどうするんだよ!!」という気持ちになるが、初見のドラマというか、出会いと運命、選択を見せてもらった。そこからフリーザーをパーティに入れることなく、めとった(ラッタ)など初期メンを愛し続けていたことも、自分の子供時代のプレイと重なり胸が熱かった。
配信が終わった後も定期的に見直した、大好きなシリーズだ。

今見たらこれは2008年の動画だった。2008年??今2024年だからつまり…16年前??そりゃ年をとる。私も実況者達も。

そこから私はニコニコの衰退と共に動画を観なくなっていき、動画主のケイさん(イボーンさん)を思い出した時、たまに検索して、マリオRPG実況動画をみつけたが更新頻度が遅く、忙しいのかな~…とボンヤリしてゲーム実況から離れて行った。
(実際、二人目?のお子さんが産まれた報告を動画内でしていて、マジで忙しい様子だった。今思うと動画より現実や家族を大事にしている様子は、応援している人間の姿として大変有難い。)

ゲーム実況が著作権的グレーであるという認識があり、同人女をしていた事もあり自分には謎の後ろ暗さというか、「公式から許してもらってるだけなのに大きな顔をするのはかっこわるい」という意識があり、ゲーム実況にも同じものを感じていた。
なので、近年の大ブームというかコンテンツとして成立していく有様におののき、距離をおいていたが、友人達から人気ゲーム実況グループ「ナポリの男たち」を薦められ、作業BGMとして再び流すようになった。

彼等は当時のニコニコ出身であり、テンションが高すぎず、「おじさんたちが仲いい様子」を見せてくれて非常に好ましかった。
ニコニコからYouTubeに移り変わり著作権の概念も変わっていっている事もあり(メーカーによっての規定はあるのでそこは一概にまとめることは出来ない様子ではあるが)
グループ実況、というものに触れた事がなかった私は彼らの魅力に夢中になり、熱心なリスナーになった。

ゲーム実況は、気になるゲームや自分が既にプレイしたゲームをどういう感想をもってくれるのか、という楽しみが主だと思うのだけれど、沢山見ていると、その本質は「人間の有様」を見せてもらっている事にある気がする。

同じゲームでも違う感想を持ち、自分の考えを語り、人柄が見えてくる。
ゲームの上手い下手も愛嬌、ナポリの男たち内3人が「ぼくの夏休み」をそれぞれにプレイしていたが着眼点や重視するポイント、語る自身の幼少期エピソードが三者三様すぎて、これはゲーム実況というか…なんだろう。ロードムービーではないし、ドキュメンタリーでもない。親しい友人でもなければ芸能人でもない。
近いようで顔も知らない他人の、彼等の半生や思考の側面を見せてもらえるのはなんとも、安い言葉ではあるがエモかった。

そんなナポリを追いかけていた際、ニコニコ老人会なるものがあることを知った。


10年以上活動しているニコニコ出身者達が大勢集まって3日間撃ち合ったり交流したりするらしい。
へ~ナポリからは二人出るのね。ロウさんだ~キャンプとグノーシア見たことある~
楽しみだな~と思っていたら、いるじゃないですか。イボーンさんが…
ナポリのすぎるさんが交流上手の光のコミュ強おじさん、活動時期が近いのもあり亀戸組さんたちとも交流して、このニコニコ老人会自体がとても楽しかった。
色んな人の視点が見たいなと思い、すぎるさん視点以外の視点も複数見るようになる。
漫画の作画作業は永遠の時間がかかるので、長時間動画はなんぼあってもいいのです。配信者さんたちには感謝が尽きません。

すぎるさん視点


激モテ関西おじさんが天から舞い降りた天使ひげおやじさんに心奪われ献身的に通うも、ひげおやじさんの心には常に雷ジジイ蛇足さんがいた、とんでもないロマンス映画だった。名作すぎ。


しんすけさん視点


ゲーム内独自の立ち回りをしていたので気になり鑑賞。
まったく知らない他人の家に入り物品を荒し獣に食われまくる、唯一無二のロード―ムービーで痺れた。最終的に感動した。ロウさんの人柄も、ナポリ視点だけでは見えない部分も見せてくれた。
自分の個人情報はネットにあげないもの、という固定概念で生きているので子供の声がガンガンに入っている事にも驚いたけど、絶妙な匙加減で不思議とそれも好意的に受け止められた。

このあたりを見ていてニコニコ当時に聞いていた名前がちらほら出てきて、「亀戸組」というものを改めて認識する。
メンバーが多かったり固定ではなかったりして覚えられず、あまり見る事は無く「ケイさんが所属している酒のみおじさん達集団」という認識だったが、この亀戸組さんがニコニコ老人会でひときわ光っていた。
武力を捨て楽器をとり映画館を建て文化の勝利を掲げ、海に出て船で平和を歌い争いに疲れた者達が続々と集い、最終的に銃声が轟く中ブルーベリー楽園に全員で走るというとんでもないエンディングのドラマが生まれた。
こんなハッピーエンドを見たのは映画ビッグフィッシュ以来だ。
この人たち…おもしろすぎ…⁉ 会話内容も大変好ましい。
気になるな、特にこの…たろちんさん。名前はずっと知っていたが「イボーンさんの友達」という認識でしかおらず(すいません)どういう人が知らなかった。
アモアスでいつもイボーンさんにキルされていた印象はあります。
動画内で「酒が好きすぎて大きな病気をした」と語っていた。どういった経緯があるのだろうと少し調べると、職業がライターさんで、細かく経緯を残してくれていた。

この一連の記事がすさまじく、夢中で読んでしまい、始発待ちラジオも入院前後のもの中心に聞いた。


新婚直後に九死に一生スペシャルをしていて、ご本人もさることながら奥様の心情を勝手ながら推し量ってしまい、にわかとは思えないクソデカ感情を抱く。イボーンさん筆頭亀戸組の仲間を想う優しさにもグッとくる。
とにかくすごい。見て欲しい聞いて欲しい。

ここでたろちんさんのお人柄や表現力にかなりグッときて動画も見る様になる。

ここで急にイボーンさんが写真家という事を知る。16年目の衝撃。
すぎるさんの動画内では狂人ファンボーイにしか見えなかったなな湖さんが、たろちんさん視点だと良識ある穏やかで優しい人に見えた。
群像劇ってホントにおもしろいなとしみじみする。

ゲーム実況の側面はもちろんだが、たろちんさんの考えや雑談を聞くのが最高に心地いい。

ゲーム実況と出会ってから16年で、イボーンさん、たろちんさんの所にたどり着いたというのがあまりにも「人生」すぎて趣深い。
当時ポケモンを逃しトレーナーに負け怒りに震え酒を飲み煙草吸っていた「20代男性」という情報しかなかった人間の
職業、現在地、3児の父という家族構成まで知ることが出来た。
一般人男性の事をそこまで知る必要性はないのかもしれないが、本人からでなく友人達から語られ知るというのもなんともグっとくる。
「人間」の側面を見せてもらえている感覚を味わう。

こちらも三者三様でとても良かった…

たろちんさんがnoteで「ゲーム実況はもともとラジオに近い」という記事を書いており、自分のゲーム実況の楽しみ方がこれなのだな、と気付く事が出来た。

巨大コンテンツと化しすぎ煮詰まり、権利問題や過激発言で物議が起こる昨今ではあるが、はじまりは教室の隅で本を読んでいたような人たちが、家族が寝静まった後にコソコソ聞く、深夜の最高エンタメだったのだ。

ゲーム実況っておもしろい。2024年にしみじみと感じる様になるとは思わなかったけど、これもまた人生ってカンジ。
これからも細々と、応援させてほしい。

私は漫画を描いていて、作画中はとにかくひとりで長時間机に座っているので孤独だなと感じる事が多い。
その時に寄り添ってくれるというか、勝手に人生の側面に救われる。
そういう深夜が、16年経ち。大人になった今でもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?