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ナポリの男たちがラジオ番組をやる“必然性” 昔のゲーム実況と深夜ラジオのあの感じ

ナポリの男たちが地上波ラジオやるらしいと聞いて「すげー」ってなってました。で、なんで「すげー」って思うのかについて色々考えたという話。

すげーって思ってから、「でもそもそも昔のゲーム実況ってなんかめっちゃ深夜ラジオのノリあったよなー」と思いました。昔っていうのは2008年とかそれくらい。

まだニコニコ動画やインターネットに「一部の暇人やオタクがやるもの」というアングラな匂いがちょっと残っていたころ。あのころのゲーム実況は実況者側も視聴者側も「ひとりごとを言いながらゲームをやる変なやつ(を見る変なやつ)」という意識がどこかにあった。そこには「俺たちだけが知ってる面白さ」という密かな共犯意識というか村文化ならではの共鳴があったと思う。それって深夜ラジオの楽しみに近いと思うんですよね。

っていうのは僕が勝手にのたまっているわけではなく、ゲーム実況好きの最古参としても知られる作家の乙一さんも、当時のコラムでゲーム実況動画とラジオの親和性について書いています。

僕はゲーム実況動画を見ているというよりも、ゲーム実況主の人生を覗くために動画を再生していたような気がするんです。最終的には人を見ているんです。(中略)ラジオを聴くような楽しみ方なんですよ。僕はそもそもラジオという文化が好きなんですけど、ゲーム実況は僕にとってラジオなんですよ。

『つもる話もあるけれど、とりあえずみんなゲーム実況みようぜ!』141Pより

ラジオならではのゆるさとか密室感に惹かれていた人が、インターネットによって「素人」のそうした素の部分を覗き見れるようになった。っていうのが当時のゲーム実況がまとっていたひとつの空気なんじゃないかと。もちろん当時からテレビ的というかコンテンツっぽく立ち回ってる実況者もいっぱいいたんですが、「ラジオっぽさがいい」というのはしばしば指摘されていたように思います。

でも今のインターネットを見ると、インターネットより地上波ラジオのほうが全然自由なんじゃないかなーという気もする。実態がどうかは知らんけど。

なんでかというと今はコメントとかSNSとかの声の影響がすごいでかいんですよね。インターネットが面白い最大の理由もそういう多くの個人の声がコンテンツと共鳴してブーストされてドライブしていく部分にあるんだけど、逆に言うとお気持ちやら炎上やらのややこしい問題もめちゃくちゃ孕んでいるという諸刃の剣でもある。昔のインターネットは選ばれし陰キャが多く、「似た者同士」だから成立していた部分もだいぶある。今はあらゆる人がインターネットをやる時代で、その全員がコンテンツに「関与できてしまう」ことで互いの価値観、正義感などがマイナスに働いていることもある。というのは近年の人類のSNS疲れの事例を示すまでもなく、なんかわかる人も多いんじゃないでしょうか。要するにネット文化の魅力だったラジオっぽい自由さ、ゆるさって失われつつあるよねと。

そんな当時のインターネットから生まれて、有名になった現在もまだ結構「インターネット的」であることに丁寧な印象のあるナポリが、今あらためて深夜ラジオを始めるっていうのはなんかおもしろいなーと思った。というのが冒頭のツイートとかです。わりとイメージや雰囲気でしゃべっているので全然見当違いなことを言っていたらすいません。

「ナポリが地上波で喋る」というだけで十分意味はあると思うのだけど、どんなことやるんだろうというのは気になります。プレスリリースに番組概要は書いてあるんですけど、実際の雰囲気がもっと「番組っぽい~」ってなるのかというか、よそ行きな感じなのかというか。端的に言うと現在のナポリファン以外にどれくらい届くんだろうということに興味があります。

多分インターネットのコンテンツも深夜ラジオのコンテンツも、どちらかというと「わかる人がわかればいい」というか、閉じていくからこそいい、っていう性質があると思うんです。だからゴールデンタイムのテレビとは違う層、ライムスターが言ったところの「毎週末の金土のテレビドラマの中に後ろ姿見つけられなかった仲間たち」が居場所を見つけているような、一部の人を狭く深く救うような性質があるのかなと。

だから「ナポリ」が「深夜ラジオ」をやる、っていうのがすごい納得感あったというか必然性みたいなものも感じたんですよね。これまでもゲーム実況者の人が地上波ラジオ番組やった例とかあるみたいですが、夜9時とかでなく深夜なのがいいなと。ナポリはそういうところが丁寧丁寧丁寧だなと。まあ全然局の都合とかたまたまかもしれませんが。

で、今や深夜2時のTOKYO FMとインターネットのスターであるナポリのどっちに影響力があるかというと、どっちなんだろうっていうのも思う。おっさん的には「ナポリがTOKYO FMすげー!」ってなるんですが、現代の感覚としてはもうTOKYO FMのほうが「ナポリさんがうちで番組やってくれるなんてすげー!」って感覚だったりするのか?とか。そもそも今みんなradikoとかPodcastとかで聴くから放送時間ってあんま関係ないのかな、とか。

そういうことも含めて、インターネットから生まれたナポリがゲーム実況文化のさらに前身みたいな深夜ラジオに行ったらどうなるのか。「ラジオからナポリを知りました」みたいな人がどんな感想を抱くのか。みたいなことを色々思って「すげー」ってなってました。

ニコニコ動画で蘭たんが初めて「実況風プレイ」という言葉を使ってからもう17年くらい経ち、ゲーム実況の文化もだいぶ煮詰まってきました。そういう意味ではラジオに「進出」するんじゃなくて「帰結」してるのかもな、という気もした。どんなことになるのか楽しみにしています。

以下、マシュマロ返信です。先日やった雑談配信などの影響もあってか悩み相談的なのをたくさんいただきました。


配信者が友人を悪く言うのは見てられるけど、その際のリスナーのコメントは怖い

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