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明日から社会人になる人たちにオススメする4冊(2024年版)

あっという間に3月も終わり、4月から新年度がはじまりますね。
当社でも3月に大学を卒業したインターン達を送り出しました。彼ら彼女らのこれからの活躍が楽しみです。

僕は公認会計士試験の勉強をしていていわゆる就職活動を一切しなかったので、試験に合格して(翌月から急に)社会人になったときは、あまりにも社会人としての準備ができていなくて、わりと苦労しました。
正確には、僕自身はあまり苦労しているつもりはなかったけれど、まわりの先輩方にだいぶ迷惑をかけ、助けられていたことにあとになって気づきました(なので、当時の上司・先輩方には一生モノの恩義を感じてます)。

その後20代後半に留学を経て、帰国して20代の最後に外資系の戦略コンサルティングファームに入社しましたが、このときもまだプロフェッショナルとしての基本的所作が身についていなかったので、最初はだいぶ苦労しました。大学院時代は本当にふわふわ過ごしていたので、社会人としての力がむしろ落ちていた自覚があります。

その後30代は概ね充実した職業人生を歩めたし、いろんな遠回りが結実して、多様なキャリア形成や人生設計への理解を深めることができたように思えます。とはいえ、もっと早く知っていれば避けられた失敗や、1年の決断の遅れで逃したチャンスなども無数にあります。

そんなわけで、僕が多くの回り道から学んだ教訓を踏まえて、20代の間に読んでおきたかった書籍をご紹介します。
これから新入社員を受け入れて育成する役割を任されている方々は、これらの本をまとめて買って、気前よくプレゼンとしてあげましょう。


1. 素直さ

『入社1年目の教科書』(岩瀬大輔、ダイヤモンド社)

新社会人にとって最初の不安のひとつは、自分は他の同期たちに負けないくらい仕事で活躍できるか、ということです。最近はインターン経験などで入社時点で豊富な仕事経験を持っている方も多いので、入社時点での実力にバラツキがあるのも事実で、不安になるのは当然です。

現時点での個々人の実力がどうであれば、全員共通して言えることがひとつあります。それは、素直な人の方が成長が早いし、素直な人には多くのチャンスが回ってきやすい、ということです。

この本では、「頼まれなくても議事録を書け」のような実践的なことから「つまらない仕事はない」のように本質的な考え方まで、わりと広いトピックを扱っています。いずれも、最初は説教くさく感じても、数年経つと「うんうん」と首がもげるほど頷きたくなる内容ばかりです。なにより、自分が数年後マネージャーになったとき、後輩や部下に渡して読んでもらいたくなる本です。

この本に書いてあることを素直にコツコツと実践していくと本当にいいことしかありません。なぜそうなのかをうまく説明できないので、どうか騙されたと思って読んで実践してください。

2. 高い視座と大きな志

『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(バックミンスター・フラー、ちくま学芸文庫)

これから社会人になる方々が最初に目指しているのは、別の環境(要するに別の会社)でも求められ、食べていけるような実力を身につけることではないかと思います。

そのために、仕事以外の時間も含めて資格・プログラミング・デザイン・英語といったスキルの習得に励み、専門性を身に着けようとするでしょう。
専門性が身につくと、専門分野での市場価値が上がり、年収も上がります。そして、そのあとは更に専門分野を尖らせ、狭めることで希少性が上がり、さらに市場価値が上がる警句があるのは事実です。

しかし、専門性の磨き上げはその人の視野を狭め、可能性を小さく限定してしまう危険もあります。特に若いうちにあまり専門性を狭くしてしまうのは、とてももったいないことです。

この本は「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と言われたバックミンスター・フラーの約60年前の講演の記録ですが、まるで現代の予言書かと思うくらい今読んでも説得力があります。温暖化や生成AIなど、現代の僕らが抱える大きな変化に対して僕らが直面している課題と、驚くほど相似する未来像を予測して語っています。

バックミンスター・フラー先生は、物事を多面的に理解しようとする資質、すなわち”ものごとを包括的にとらえる資質”の重要性を強調しています。こうした資質は、多様で”統合された経験”を持つことではじめて培えるものであって、最短ルートで専門性を磨いていくようなキャリア形成とは対局にあります。

この本を紹介することで僕が伝えたいのは、「将来の不安を解消するためには焦って自分を小さくまとめるのはやめよう。様々な人生経験を積んで、高い視座と大きな志を持とう」ということですが、バックミンスター・フラー先生は僕より説得力を持って、情熱的にそれを語ってくれます。

参考までに、フラー先生の60年前の熱くて厳しいお言葉をいくつか引用しておきましょう。(タイトルからしてとっつきにくそうな本ですが、講義録なので意外と読みやすいですよ。

専門分化とは事実上、奴隷状態の少々おしゃれな変形にすぎない。そこでは、「エキスパート」は社会的、文化的にみて好ましい、したがってかなり安全な、生涯続く地位にあるのだと幻想をもたされて、奴隷状態を受け入れることになる。

『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(バックミンスター・フラー、ちくま学芸文庫)

太陽から貯めるのに何十億年もかかった化石燃料を燃やして、そのエネルギー貯金だけに頼って生きるのか、あるいは地球の原子を燃やして私たちの資本を食いつぶして生きるのか、どちらにしても、それでは後の世代の人間たち、そして彼らの前に広がる日々に対して、まったく無知、そして完全に無責任というものだ

『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(バックミンスター・フラー、ちくま学芸文庫)

所有はしだいに負担になり、不経済になり、それゆえ時代遅れになりつつある

『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(バックミンスター・フラー、ちくま学芸文庫)

3. 人生設計

『新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』(ティナ・シーリグ、CCCメディアハウス)

就職活動をしていると面接で「将来(5年後、10年後)どうなっていたいですか?」と聞かれることがあるかと思います。
この質問に対して、20代前半で説得力のある回答ができる人は多くありません。ここで言う”説得力”とは、”自分にとっても”、”第三者から見ても”という意味です。
「本人は5年前からこう言っていたし、周囲も当時からそう信じていたし、実際そうなった」といった事例は極めて少ないです。

なぜかというと、自分がどうなっていたいかを解像度高く理解するには、経験からの学びが必要だからです。
40代のおっさんになって改めて感じるのは、自分が本当にどうありたいのか、どうあれば幸せなのかを深く理解するのはめちゃくちゃ難しいということです。いつまでたっても難しいです。
就職活動の自己分析などで考えたり、それによって業界や職種を選んだりしているかもしれませんが、そんなレベルより遥かに深いレベルで自分を理解できていないと、人生の重要な局面で自分にとって最適な決断を下すことがむずかしいし、いつまで経っても隣の青い芝をちらちらと羨み続けることになります。

この本は、多くの人達が20代を全力で生きいく中で学び、「あのとき知っておきたかった」と思ったことがたくさん書いてあります。先伸ばしせずに早めに考えて、早めに行動しておいた方がよいことを教えてくれる良書です。僕も20代の頃に読みたかったです。

この本を読んだところで、自分がどうありたいかを理解するのは全然簡単ではありません。それでも、考える材料を少しでも仕入れて、壁にぶつかりながら学んでいくしかないのです。

4. マーケット感覚

『マーケット感覚を身につけよう-「これから何が売れるのか-」わかる人になる5つの方法』(ちきりん、ダイヤモンド社)

もはや少し古い本ですが、今でも大事なので引き続きオススメ本に入れておきます。
この本は、これから大企業に就職する人や、就職活動以外で自分でものを売った経験がない人(就職活動=自分を得る営業活動です)に是非読んでもらいたいやつです。

サラリーマンになることの最大のリスクは、自分の成果物と自分が受け取る対価の距離が遠すぎてマーケット感覚が身につきにくいことです。しかし、価値を提供して対価を頂くというのはビジネスの基本なので、この感覚を忘れずに磨き続けないと本当にやばいです。

これから就職する会社1社で自分のキャリアを終える人は、今の20代の方々だともしかすると5%くらいしかいないかもしれません。
そうすると、自分がどんな価値を提供できるのか、何を売れるのかを考えて価値を高めたり、新しい売り先を見つける能力が極めて重要です。
給料/年収を自分の会社の給与水準や評価制度の範囲内で考えて最適化することに慣れてしまうのはとても危険です。

自分がどんな価値を生んで、なぜ対価(=給料)をもらっているのか、それが妥当な金額なのかを考えられない人が生きていくにはどんどん辛い世の中になっていくので、今からその感覚をしっかり身につけましょう。
実際、転職活動をするときには履歴書などに「現年収」と「希望年収」を書く機会があります。ここの書き方だけで、その人が自分のできる仕事について正しいマーケット感覚を持っているかがわかってしまうことが多々あります。

就職活動をしているときは、「この業界・この会社の給料はこれくらい」「この職種の給料はこれくらい」と言った知識を仕入れてキャリア選択をしたかもしれませんが、実際はわかりやすい定価のあるものなどほんと本当にごく一部で、B2BでもB2Cでも「顧客は何に価値を感じているのか」「自分が提供できるものは何で、それはどう評価されるのか」を理解する能力が不可欠です。
簡単にレイオフできる外国なら自分の市場価値について意識せざるを得ないですが、日本でサラリーマンをやっているとその感覚が本当に身につきにくいのです。「定年までこの会社でやっていって社長になるぞ!」と考えている今どき稀有な方以外は、最初からマーケット感覚を意識する習慣をつけましょう。

30代に向けて20代の間に目指すべきは、人と比べなくていい自分軸づくり

たくさんの人を見てきて、しあわせそうな人生をおくっている人とそうでない人の大きな違いは、自分を人と比べなくていい自分軸を作れているかという点だけじゃないかと日々感じています。
収入は多少関係あるけれども、名声とか社会的地位は本当にまったく関係ない気がします。

とはいえ、20代で人と自分を比べないというのは、よほど確固たる自信と実際に社会をサバイブできる実力がない限り不可能に思えます。そんな人あまり見たことがないです。
ところが30代くらいになってくると、まわりに自分の人生を確立していそうな人が現れだします。そういう人はだいたいみんないい顔をしています。

そういう30代を目指す上で大事なのは、(1)実際に生きていく実力と、(2)自分がどうあれば人生に満足できるかという自己理解の2つで、(1)を身に着けつつ(2)を探索するのが20代なんじゃないかと思います。

FIREとかもはやっているのかもしれませんが、FIREを実現したところで理不尽を強いられるストレスや将来の不安からは解放されても、人生の充実感は得られないはずです。
そして、自分にとっての本当の充実感を見つけるには、30代でFIREを実現してからでは遅すぎてもったいないです。

というわけで、みなさんがよい職業人生を歩めますように。

Have a Good Career.


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